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別居生活
心の傷
しおりを挟む「大丈夫ですか?」
ゼイルドの頬にシャルロットが薬を塗りながら、不安げな顔で聞いた。
赤く腫れた頬はルーラに叩かれたものだが、ゼイルドは特に大して痛くはなかった。けれどこうしてシャルロットが手当てをしてくれているのに突っぱねる理由がない。
「…あぁ」
「…申し訳ありません、私の姉が無礼を働いて」
「気にしていない。お前こそ大丈夫か?」
「はい、ゼス様のおかげです」
「俺の?」
それにしても、シャルロットの笑顔が眩しい。こんなにニコニコしているのは初めて見た。
いや、普段から笑っていたのだろう。俺のいないところで。
(…少しは役に、…立てたのか)
***
「…私、考えたんです」
「何を?」
「幸せになる方法」
「!」
つまり、決意したということだ。
「…それは…」
「私はイルタナー伯爵夫人で、この子供はイルタナー伯爵家の実子です。…もう、逃げるのは終わりにします」
シャルロットの瞳は揺らいではいなかった。
それは、ゼイルドが庇ってくれたからなのだ。だから決意できた。
「貴方を愛してみようと思います。ユーリお兄様のところへは行きません。私の旦那様は、ゼス様でしょう?」
その言葉が、ゼイルドには跳ね上がるほど嬉しかった。けれどそれと同時に、心の傷が痛む。
(…俺は……幸せになって、いいのか…?)
フィリアの人生を壊した俺だけが幸せになってもいいのだろうか。
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