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しおりを挟む序章
物心ついた時から父親の存在はなく、覚えているのは不機嫌な母親の顔ばかりだった。
彼女は常にイライラしていて、事あるごとに僕に平手打ちした。
「あんたなんて産まなきゃよかった」
僕を何回も叩いた後、母はお決まりのセリフを言うのだ。
笑った顔なんか一回も見たことがない。
僕が小学校の高学年になると、彼女は夜の仕事を始めた。家で顔を合わせることは減り、お金だけ置かれるようになった。家事はすべて自分で行った。
母が知らない男を連れてくるようになってからは、男が帰るまで公園で過ごすようになった。子どもながらに「家にいるのはよくない」と悟ったのだ。
しかし、そんな生活も中学を卒業するまでだった。
「あたしはこの人と一緒になる。あんたは家を出ていきな」
いくばくかの現金を手渡され、僕は家を追い出された。
合格したはずの高校には入学金が振り込まれておらず、進学は断念せざるを得なかった。
それからしばらくのことは、正直よく覚えていない。
知人の助けを得てなんとか安いアパートを借りた僕は、年齢を偽って割のいいバイトを始めた。
気がつくと季節は夏になっていた。
一度だけ、実家に帰ったことがある。ただ、そこはすでに引き払われていて母は住んでおらず、虚しさだけが胸の中に残った。
安アパートとバイト先を往復する生活が、二年目に差しかかったある日。
疲労ばかりが残った仕事の帰り道、僕は終電間際の混雑した駅のホームに立っていた。
制服姿の同級生を見るのが嫌で、遅い時間のシフトを多く入れていたのだ。
今日も一日が終わろうとしている。
食べていくために、明日も明後日もバイトをする。
なんのために生きているのかも、将来のことも分からない……先が見えない不安から逃げるためだけに、僕は必死に働いていた。
酔っ払いの喧嘩を聞き流し、ホームに進入してきた電車をぼんやりと眺めていた時だった。
ドンッ。
「えっ?」
突然背中を押されて、僕の体が線路上に落ちた。
キキーッとブレーキ音が響く。
目の前に迫ってくる電車が、なぜかスローモーションのように見えた。
「キャー!」
女性の悲鳴と、なおも続く酔っ払いの大声が聞こえた。
ああ、誰かに突き飛ばされたんだ。
それを理解した瞬間、強い衝撃が襲った。
第一章 異世界での目覚め
気づくと、なぜか僕は見たことない部屋にいた。
意識を失う前はバイト帰りの駅のホームだったはず。
迫る電車もはっきりと覚えている。
しかし、今見えるのはこちらを覗き込む青髪の男性と茶髪の女性の顔だ。
「おぎゃ、おぎゃ!」
喋ろうとするけれど、うまく言葉にならない。
「ふん、大きな声で泣きおって」
「本当に耳障りですわ」
二人が口々に言う。
彼らの表情は、僕の記憶に深く刻まれた忘れたくても忘れられないものと同じ……つまり、母のような、不機嫌でとてもイライラした人の顔だった。
僕を睨む二人は、刺繍が施された豪華な服を着ていた。現代の服装ではない。たとえるなら、中学の社会の教科書で見た、中世ヨーロッパ貴族の服装のような感じだ。
手足をばたばたと動かすが、まったく動き回ることができない。
「指示があるまで、この子を決して屋敷の外に出してはならん」
「はい、かしこまりました」
男が指示を出すと、すぐに誰かの手が伸びてきて、僕は別の部屋に連れていかれた。
部屋に入ると若い女性に引き渡され、何がなんだか分からないままベッドに寝かされる。
「はい、おしめを替えましょうね」
服を脱がされ、おしめを交換された時、僕はやっと自分が赤ちゃんになっていることに気がついた。
◆ ◇ ◆
どうやら僕は、生まれ変わったらしい。
そう理解するまでに、数日かかった。
電車に轢かれて死んだ僕は、今、生後半年くらいの赤ちゃんになっている。
僕の世話は、主に若い女性……おそらく侍女さんであろう二人の女の人が交代で行っていた。
片方の人は子どもを産んだばかりなのか、お乳を分けてくれる。
お世話をしてくれる二人は、優しかった。
目を覚まして最初に見た男女にはあれ以来、今のところ会っていない。睨まれないのは、一安心だ。
寝ているベッドと世話をする女性たちが、今の僕がいる世界のすべてだった。
もしかしたら、僕は異世界に転生してしまったのかも……なんて想像が脳裏をよぎる。
というのも、バイトに明け暮れていた前世の、唯一の趣味が読書だった。
お金がなかったので、もっぱら図書館で借りたさまざまなジャンルの本を読み漁っていたのだが、その中に異世界に転移したり、転生したりするライトノベルがあったのだ。
第二の人生を楽しく生きている主人公の姿が印象的で、暇な時によく読んでいた。
前世の記憶を思い出すって、異世界転生ものだったらテンプレだよね……
そう思っていたある日。
僕を抱き上げた女性が、顔をしかめた。
「少し臭うわね。坊、綺麗になりましょうね」
ピカー。
あたりが少し光った後、 自分の体の中に何かが流れていくような感覚を味わう。
「!」
僕の体は一瞬にしてすっきりと綺麗になっていた。
今のは、もしかして魔法?
僕、本当に異世界に生まれ変わったんだ……
今まで読書以外に楽しみなんてなかった。
どんな魔法があるのか、僕にも使うことができるのか……こんなにワクワクするのは、前世を含めて初めてだった。
◆ ◇ ◆
この世界に転生して三か月。
僕は掴まり立ちができるようになった。
部屋の中しか移動は許されていないものの、ハイハイして少しずつ行動範囲が広がってきている。
「私たちの言うことをよく聞いて、坊は偉いですね」とお世話係のお姉さんたちは褒めてくれたが、まさか目の前の赤ちゃんに前世の記憶があって、話をすべて理解しているとは思わないだろう。
そんな赤ちゃんライフを送っているうちに、とても気になることができた。
お世話をしてくれる二人は、僕を「坊」と呼ぶ。僕は自分の名前を知らないのだ。
まだ喋れないので質問するのは無理だし、もしかしたらお世話をしてくれている人たちも知らない可能性だってある。
ところが、意外な形で自分の名前が判明した。
ある日の午後、部屋の外が騒がしくなった。
一体なんだろう……僕はベッドの柵に掴まり、立ち上がる。
バンッ!
すると突然部屋のドアが勢いよく開かれ、驚いて身を硬くした。
ドアのほうを見ると、忘れもしないあのイライラ顔で口をへの字に曲げた女性が立っていた。
どかどかとこちらに近づいてきた彼女は、思い切り僕を突き飛ばす。
「おぎゃー!」
突き飛ばされた痛みと恐怖で、自分でもビックリするくらい涙が溢れて止まらない。
「奥様、おやめください!」
部屋に入ってきた使用人が、慌てて女性を制止した。
「あの女の子どもだと思うと、吐き気がするわ。アレクサンダー、生かされているだけありがたいと思いなさい!」
僕を突き飛ばした女性は、そう言い捨てて部屋を出ていった。
彼女がいなくなると、部屋の隅に立ち、微動だにしなかったお世話係の二人が駆け寄ってきて、僕を抱き上げた。
「ご無事ですか、アレクサンダー様! こんな小さな子どもにする仕打ちではありません!」
「……あの方たちに温情などありません。この子には厳しい道が待っていますわ」
「可哀想に……ご両親を亡くして、この子は一体どうなるのでしょう」
「せめてあと少し大きくなって、お屋敷を出られれば……」
お世話をしてくれる二人は、僕の出生について知っているのかな。
両親は死んでいるとなると、あの男女は一体何者なんだろう。
僕は涙を拭いながら、必死に考える。
ついに分かった自分の名前……アレクサンダー。
偉大なる大王とよく似た響きの名前を、心の中に刻み込もう。
◆ ◇ ◆
さらに一か月が経った頃、僕はこの部屋を見回して考えていた。
どうもここは書斎のような場所らしい。もともと子どもを育てるための部屋ではなさそうだ。
部屋は結構広くて、たくさんの本が置かれた机や本棚がある。
本のタイトルを読む限り、魔法関係のものが多いみたい。
書かれている文字は日本語ではないのに、なぜだかスラスラと読める……もしかして、言語翻訳能力があるのかな。
まだ小さいから自力で本を取ったり、開いたりできない。もう少し大きくなったら本を読めるはずだ。
今日も部屋の中をハイハイしていたら、女の人の金切り声が廊下から聞こえてきて、足音がこちらに近づいてきた。
書斎のドアがバンッと勢いよく開く。
現れたのはやはりあの意地悪な女性で、不機嫌そうな顔は相変わらずだ。
後ろに控えていた使用人が何かを抱いている。
「この娘の面倒も見るように。名はエリザベスですが、アレクサンダー同様、決して名前で呼んではいけません」
「「かしこまりました」」
女性の命令に、お世話係たちが頭を下げる。
使用人が僕のベッドに、抱いていたものを置いた。
「ふう、行くわよ。こんなところに長居したくないわ」
「はい、奥様」
女性は僕を見ることなく、使用人を連れて部屋を出ていった。
足音が遠ざかったのを確認すると、お世話係の二人が息をつく。
「急に何を言い出すかと思ったら、まさか『赤ちゃんを育てろ』とは」
「あの人たちにとっては、犬や猫を拾ってくるのと同じ感覚なのでしょう」
「あの事故の生き残りなら、この子って王家の……」
「しーっ! 余計なことを言ってはなりません」
あの女性が僕やこの赤ちゃんに向ける敵意は人に向けていいものじゃない。怒ったら何をするか分からないから、お世話係の二人も簡単に動けないんだろう。
「あの事故」に「王家」だって?
そういえば、しばらく前に屋敷の周りがやけにうるさかった気がする。
「それにしても、坊に負けず劣らず可愛らしい子ですわね」
「名前からして女の子でしょうから、『お嬢』と呼びましょう」
赤ちゃんは、ふわふわした金色の髪の毛だ。僕より少し幼いみたい。
なんだか気になるな。
◆ ◇ ◆
「あうあう」
僕の部屋に赤ちゃん……エリザベスが来て、数か月。
あれきりあの意地悪な女性は現れていない。普通なら順調に育っているか気になるものだが、そんな関心はまったくないのだろう。
エリザベスは目に映るいろいろなものに興味を示して動き回るアクティブな性格で、部屋中を元気よくハイハイしている。
そんな彼女の最大の関心はどうも僕らしく、常に後ろを追いかけてくるし抱っこもせがむ。
抱きついてくるのはいいけど、顔中をべろべろ舐めるのはちょっと勘弁してほしい。
とはいえ僕もこの子が気になるので、できるだけそばで見守るようにしている。
「坊がお嬢の面倒を見てくれて助かります」
「二人とも、兄妹のように仲良しですね」
お世話係の二人が褒めてくれた。
今まで褒められるという経験がほとんどなかったので、役に立っているのが少し嬉しい。
エリザベスはとっても綺麗な顔をしていて、濃いエメラルド色の瞳が印象的だ。
笑った顔は破壊力満点で、僕たちまで思わずニッコリしてしまうほど。
この子はとにかくご飯が大好きで、たまに僕の分までひょいっと食べてしまうけど、ちょっとくらい大目に見ている。
寝る時も僕がいないとグズッてしまう。手を繋いであげるとすぐ眠るんだけどね。
寂しいのかな。眠っているエリザベスを見ながら、僕はそんなことを思った。
◆ ◇ ◆
それから一年弱が経過し、僕は二歳になった。
最近では絵本を読むようになり、この国が「ブンデスランド王国」であることを知った。
日本と変わらず四季がある風土のようで、食べ物や暦もあちらに近いみたいだ。
一週間は七日なんだけど、曜日の名称は違う。
また、魔法があったり、魔物やそれを討伐する冒険者がいたりと日本と完全に違う点もある。
この家の場所や、どうして僕たちの扱いが悪いかについては分からないままだ。
「にーに、ごほん」
「お嬢、一緒に読もうね」
今では僕もある程度喋れるようになっている。
読書をしていると、本を読んでとエリザベスが寄ってきた。
お世話係が彼女を「お嬢」と呼ぶので、僕も真似している。心の中では本名で呼んでいるけどね。
エリザベスは感情豊かで常にキャッキャと笑っている。移動する時も寝る時も、僕たちは一緒だった。
僕はといえばトイレトレーニングが始まり、廊下に出ることが許されるようになった。早くおむつを卒業したいな。
さて、窓から覗く庭の景色から考えると、どうやら季節は春だ。つまり、先日誕生日だった僕は春生まれで、僕より半年くらい年下に見えるエリザベスは秋くらいに生まれたということになる。
外に出たい気持ちはあるが、あの意地悪な女性と青髪の冷たい男性の顔が思い浮かんでしまい、何がなんでも出よう! とはなれない。
エリザベスも外に出たがらない。もしかしたら、僕と同じことを考えているのかも。
幸い、最近はあの人たちは部屋を訪ねてこない。お世話係の二人の話を聞いた限りだと、どうも遠方に出ているらしく、しばらくは戻ってこないようだ。
この「しばらく」がどのくらいの期間か分からないけど、これはチャンスだ。
多分、僕とエリザベスはこの家にいても碌なことにならないと思う。
下手したら、ある日突然、二人一緒に捨てられてしまう可能性だってある。
二人きりでも生きていけるように、いろいろなことを覚えておきたい。
まだまだ僕たちは小さくて、できることは限られているけど、少しずつやっていこう。
◆ ◇ ◆
そうこうしているうちに、あっという間に次の春が来た。
最近僕は本棚の中から初心者向けの魔法の使い方の本を見つけたので、今まで以上に本の虫だ。
この本によれば、魔法にはいくつかの属性があるらしい。
まず誰でも使える無属性の魔法。ここが異世界だと気づくきっかけになった体を綺麗にする魔法は、このうちの【生活魔法】に分類されるそうだ。
そして、基本の属性には、火・水・風・土・回復の五つがあるという。
それ以外にも、光や闇、雷といったレアな属性があるらしい。さらに珍しい属性もあるみたいだけど……このあたりは詳しく載っていなかった。
こちらの世界ではだれもが魔力を持っているようだ。その中でも魔法の扱いに長けた人を、魔法使いと呼ぶ。
「にーに、今日も魔法の練習するの?」
「するよ。頑張って【魔力循環】を覚えようね」
魔法を使うためには、まずは基礎訓練が必要だという。
僕とエリザベスは、手を繋いで魔力を循環させる練習を毎日やっている。
手を繋ぐのには二つ理由がある。
一つ目はエリザベス対策のため。僕一人で瞑想していると、「つまらない」とちょっかいをかけてくるのだ。手を繋いで一緒に魔法の練習をすれば、彼女が不機嫌にならなくて済む。へそを曲げたエリザベスの相手は大変で、一時間以上は誰とも喋らないし、ずっとグスグスと泣いているのだ。
それを回避するためにも、必ずこのやり方をしている。
二つ目は、二人で魔力を循環させたほうが訓練の効率がいい気がしたから。これは本に書いてなかったので、オリジナル理論なんだけど……
僕たちが最初に覚えたのは【魔法障壁】……バリアを張る無属性魔法。これなら簡単で安全だ。
「にーに、いくよ!」
【魔法障壁】を展開した僕に、エリザベスがボールを投げてくる。
これは、バリアがきちんと張れているかを確認するため。
エリザベスも【魔法障壁】ができるようになったので、一緒にボールを跳ね返して遊んでいる。
お世話をしてくれる女性は、魔法で遊んでいる僕たちに驚いていたけど、意地悪な二人には黙ってくれているみたいだ。「よくそんな遊び方を思いつきますね。天才です」と感心していた。
さらに僕は、ものの真贋を見抜く【鑑定】を覚えた。
これは極めると、俗に言うステータス……相手の細かい情報まで確認できるようになるらしい。
試しに、自分とエリザベスを【鑑定】したんだけど……正式な名前が《アレクサンダー・バイザー》、《エリザベス・オーランド》であることが分かった。
この部屋に連れてこられたこと以外、僕たちの接点は不明だ。
一体、あの意地悪な二人にはなんの目的があるんだろう?
こうして時が流れ、魔法の練習は順調に進んでいった。
◆ ◇ ◆
僕が四歳になると、お世話係が変わることになった。
今までお世話をしてくれた二人が、退職することになったのだ。
僕とエリザベスは「ありがとう」と言って、二人を送り出した。
僕たちが大きくなり、身の回りのことをこなせるようになったので、新しいお世話係はかなり若い女性だ。
彼女は食事やお風呂の時以外はほとんど部屋に入ってこず、僕たちは二人きりで部屋にいることが増えた。
ある日、あの意地悪な二人が、久しぶりに僕たちの前に姿を現した。
「ふん、相変わらず辛気臭い顔をしているな」
「放っておきましょう。どうせ二人ともすぐに追い出すのです」
「あうー」
久々に会ったあの二人は相変わらずの不機嫌な顔と、隠しもしない敵意を僕たちに向けていた。
生まれたばかりらしい赤ちゃんを抱いているが、この部屋に置いていく様子はない。なんというか、僕たちに赤ちゃんを見せつけに来た感じだ。
エリザベスが、僕の手をギュッと握る。
たくさん練習して精度が上がった【鑑定】で、こっそり彼らの名前を確かめる。
男性の名前は《ゲイン・バイザー》、女性のほうは《ノラ・バイザー》……僕と同じファミリーネームだ。
僕の両親は死んでいるから……この二人は親族なのかな?
ゲインとノラ、そして赤ちゃんが部屋を出ていった後、僕はエリザベスを呼んだ。
「お嬢、よく聞いてね」
「うん、お兄ちゃん」
最近、エリザベスは僕を「お兄ちゃん」と呼ぶようになった。
彼女は年齢以上に聡い。なので、僕はこれからの計画を伝えることにした。
「僕とお嬢は、もうすぐこの家を追い出されると思う」
「……うん。あの女の人のお話で、なんとなく分かってたの」
「そっか、お嬢は賢いね」
僕が頭を撫でると、エリザベスはふにゃりと微笑んだ。
そのまま話を続ける。
「僕たちは捨てられる。でも、ただその時を待っているだけじゃ駄目だ。だから、二人だけで生きていけるように準備をしよう」
そう言って、僕はエリザベスにあるものを渡す。
「これはなあに?」
「魔法袋っていうんだ。いろいろ収納できるから、大切なものをしまっておこう。これからは、寝る時も身に着けていてね」
魔法袋は、いわゆるアイテムボックスのようなものだ。
初心者向けの魔法の本に作り方が載っていて、試してみたらうまくできた。だから、エリザベスにも作っておいたのだ。
中にしまったものは、時間が止まって腐らなくなる。ただ、生き物は入らないので注意が必要だ。
魔法袋の中には服や下着はもちろん、毛布や食べ物も入れる。
さすがに鍋やナイフは手に入らなかったが、コップとお皿はこっそり確保した。
少しずつ荷物をまとめながら、並行して魔法の練習にも力を入れる。
お風呂に入りながら水魔法を使ったり、明かりの代わりに光魔法を使ったり……バレないように工夫してとにかく練習する。
必死に練習したからか、僕は土を除いた基本の四属性に加え、レアな光、闇、雷属性をマスターした。土魔法もできる気がするんだけど……部屋の中では試せないので、ひとまず保留だ。
エリザベスはまだまだ練習中だけれど、いくつかの属性が使えるみたい。
僕は安全に旅をするために、近くの生き物の位置を探る【探索】を覚えた。
あとは土魔法を使って簡易シェルターが作れれば、夜も安心して過ごせる……はず。
水魔法で飲み水は出せるから、喉が渇いても平気だ。
ちなみに、傷を治す回復魔法や体を綺麗にする【生活魔法】は、僕よりエリザベスのほうが圧倒的にうまい。それに【鑑定】や【探索】は無属性の魔法だから、頑張れば彼女も覚えられると思う……ただ、「お兄ちゃんがやってくれるもん」と言っているので、覚える気はないようだ。
できることは増えてきたものの、旅をするには備えが足りないし、何よりお金がまったくない。
不安に押しつぶされそうになりながらも、エリザベスのために絶対やらなきゃという覚悟を持って毎日を過ごしていると、とうとう運命の日がやってきた。
応援ありがとうございます!
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