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11巻
11-3
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「今回は、平和そうだな」
出発までの時間を戦闘時の連携確認や観光に当て、2日後、シンたちは船の上で水平線を眺めていた。ゲイル・サーペントのようなモンスターに襲われることなどそうそうないので、航海は至って順調だ。
「この辺の海は海賊やモンスターも少ないからな。いざってときは、あんたたちに期待してるぜ?」
船の専属護衛を担っている冒険者の1人、アラルが声をかけてきた。短く刈り込んだ赤髪に、野性味のある顔立ちの男だ。
新人冒険者が増長しているように見られないよう、シンは丁寧な言葉で返す。
「任せてください。ランクは低いですが、海の戦闘は何度か経験しているので」
「頼もしいな。ただ、海では俺たちの考えつかないようなことが起こる。船乗りの間じゃ、この辺は幽霊船が出るってもっぱらの噂なんだぜ?」
「幽霊船ですか?」
アラルの話し振りは、ちょっと怖がらせてやろうといった気配だった。
しかし、シンにとっては冗談では済まない。ゲーム時代はエリアボスとして、本物の幽霊船が出現する海域が存在したのだ。
シンが怖がらせないでくれと返すと、アラルはにやりと笑って去っていった。
「船か……」
思い出すのは、『六天』のギルドハウスのひとつ、二式強襲艦セルシュトースのこと。
黄金商会も発見していないと聞いているので、もしかすると、どこかの海をずっとさまよっているのかもしれない。
そんなシンの思いなど知らぬとでもいうように、船は大きな帆で風を受け、どんどん大海を進んでいく。
天気が崩れることもなく、快晴の空の下には、幽霊船やセルシュトースの影は一切ない。
船旅は順調に進み、船出から2日後、シンたちは再び大地に降り立った。
「ここが海洋都市バルバトスか。海賊の街みたいな名前だな」
「なんでも、地熱を利用した温水プールが有名らしいわよ?」
船長からそう聞いたらしいフィルマが、別れを惜しむように、船のほうへ手を振りながら言った。
「プールか。普通は海水浴なんだろうけどな」
海には危険なモンスターが数多くいるうえに、陸に上がってくるタイプも存在する。
わざわざ海を区切るように壁だの網だのを設置するよりも、海と完全に切り離したレジャー施設を作ったほうが安全の維持管理が簡単なのだ。
そんな理由もあって、海洋都市にはビーチなど存在しないという。
「せっかくだし、時間があったら行ってみましょうよ。湖とか海と違って、モンスターを気にしなくていいからきっと楽しいわ」
「そうだな。たまには面倒なことは忘れて、遊ぶのもいいか」
フィルマが『界の雫』に閉じ込められる前は、娯楽を楽しむ余裕はほとんどなかったらしい。
本格的に遊ぶことなどこの世界に来てからほとんどなかったので、シンも乗り気だった。
「なら、まずは水着選びよね。あ、でもその前に食事かしら」
すでに午後1時を回っている。昼食はバルバトスで取ろうと決めていたので、朝食以降何も食べていない。
テンションの高いフィルマを落ち着かせて、シンたちは店を探すことにした。
「――で、ここか」
「はい。クック様配下のザジ、ケリトリ、ベル、シェルの4人がここにいるはずです。しかし……これは予想以上ですね」
シンがエルトニア大陸に向かう際、行き先をここバルバトスに決めたのは、『六天』の1人クックのホーム『時雨屋』があるからだ。今も変わらず料理屋として営業しているらしい。
配下のうち、長命種の4名はまだ現役で、バルバトス以外からも訪れる客がいる、とアラルが言っていた。
そしてその言葉通り、シンたちの前には長蛇の列が出現していた。老若男女問わず、種族問わず、きちんと1列に並んでいる。
「これは1時間待ちとか、そういうレベルじゃないな」
「メッセージを飛ばしてみます。何かしらの反応はあるはずです」
列を眺めていたシンに、シュニーが言う。
しばらくすると、店の扉を開けて2人の少女が飛び出してきた。その顔は瓜ふたつで、どちらも頭部にねじくれた角を持ち、背には被膜のある翼、服の下からは鱗に覆われた尾が見えている。
少女たちこそがベルとシェルだ。どちらも目が深紅で、ベルが銀髪を右頭部でくくり、シェルが黒髪を左頭部でくくっている。
「相変わらず、あの格好なのな」
シンがそう言ったのは、ベルが割烹着を、シェルがメイド服を着ていたからだ。
この分なら、中に残っている料理人の2人も、片方はコックコート、片方は着物を着ているのだろう。
「シュニー発見!」
「フィルマ発見!」
シンたちがいるほうを指差して、ベルとシェルが元気良く叫んだ。シュニーの名前が出たが、変装中なので気づく者はいない。
「シュバイド発見!」
「シンさ――」
「2人とも? 少し騒がしいですよ?」
シンの名前を呼ぼうとしたところで、シュニーが割って入った。まるで蛇に睨まれた蛙のごとく、体の動きまでピタッと止まっている。
シンたちは思った。あ、怒っていると。
「騒がないようにと、ケリトリに送ったメッセージに記載してありましたよね?」
「「ご、ごめんなさーい!」」
話を聞かずに飛び出してきたのだろう。2人は謝ると同時に店に駆け戻っていった。
「なんというか、この騒がしさも懐かしいな」
「公衆の面前で名前を叫ばれるのは、さすがに困ります」
ベル&シェルとのやりとりで、シンたちは多少なり周囲から注目を浴びていた。
これは出直したほうがよさそうだと考えていると、シュニーが店の裏手に回るように言う。
どうやら、ケリトリからメッセージが返ってきたらしい。
一旦店から離れて、人通りの少ない道を迂回する。一行が時雨屋の裏手に着くと、そこには1人の女性が立っていた。
シュニーとメッセージのやり取りをしていた、ケリトリだ。
黒髪を後頭部で結い、動きやすさを重視した着物をたすき掛けにしている。緑色の瞳は、シンの記憶と同じ優しげな光を宿していた。
「お待ちしておりました。ベルとシェルがご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません」
「気にしなくていい。相変わらずみたいで、安心したよ」
ケリトリに案内されて、シンたちは時雨屋に入る。通されたのは、特別客用の個室だ。
ちょうど食材が切れたところだったらしく、営業は終了。店にはまだ食事中の人だけが残っていた。
「ご用意しますので、少々お待ちください」
昼食を時雨屋でと考えていたことを伝えると、ケリトリは任せてくださいと意気込んで引き受けた。従業員用の食材がまだあるらしい。
「お冷です」
「おしぼりです」
ケリトリと入れ替わりに姿を見せたのはベルとシェルだ。
シュニーの前では少し動きがぎこちなくなるが、お許しが出ると、笑みを浮かべて本日のメニューを告げた。
「そういえば、ザジは料理中なんだよな?」
「ザジっちゃんは料理に集中してます!」
「ああなると、てこでも動きません!」
シンの質問にベルとシェルが、しょうがないやつです、とでも言いたげな表情で返してくる。
「「呼んできますか?」」
「いや、挨拶しときたかっただけなんだ。どうせ後で会うだろうし、その時でいい」
まったく同じタイミングで言ったベルとシェルに、シンは首を振った。料理を中断させてまで呼び出す気はない。
かつて時雨屋のトップ、料理長は当然クックだった。
ザジはケリトリとともに副料理長の役目を負っていた。2人の料理の腕はほぼ互角で、戦闘力は陸戦ならケリトリ、海戦ならザジに軍配が上がる。
ウェイトレスのベルとシェルは、料理の技術は未熟だが、戦闘力はザジたちより上だった。
「ごちそうさまでした」
食事を終えると、タイミングを計ったようにザジとケリトリが姿を見せた。
着物を着たケリトリの横に、細身ながらもしっかりと筋肉のついた肉体をコックコートに包んだザジが並ぶ。一見、同じ店に勤める料理人とは思えない。
包容力を感じさせるケリトリに対して、ザジは赤い短髪が似合う、所謂ワイルド系だ。料理人というより冒険者といったほうがしっくりくる。
「料理の腕、上がったか?」
「そう思っていただけたなら、精進してきた甲斐があります」
ケリトリは微笑を浮かべてうなずく。
頻繁に時雨屋に来ていたわけではないが、シンの記憶している味より、幾分か進歩しているように感じられた。
「それで、今日はどのような用件で?」
ザジが口を開いた。
容姿に見合った低く響く声。茶色の瞳は睨みつける一歩手前の鋭さだった。
「せっかくだから、挨拶をしておこうと思ったんだ。わざわざ個室まで用意してもらって、悪かった」
「いえ、クック様のご友人に不調法はできませんので」
そう言いつつも、ザジの表情は「面倒をかけやがって」と言っているようにしか見えない。
もともとそういう顔つきなのだと知らなければ、機嫌を損ねたと勘違いしてしまうところだ。
「……ひとつ伺いたい。シン殿は、あの噂を聞いてきたのではないので?」
「こら、ザジ。シン様でしょ」
「いや、いいよ。それより、噂っていうのは何のことなんだ?」
ザジを諫めるケリトリを宥めて、シンは尋ねた。
「バルバトスの沖にあるクウェイン海域。そこで、巨大な船を見たという船員がいるのです。その男はエルフで、セルシュトースを知っていました」
「それで、巨大な船がセルシュトースだったと言っている?」
「はい」
ザジは眼光を鋭くして、シンを見ていた。
その瞳には、セルシュトース――主であるクックのギルドハウスを必ず見つけ出す、という強い意志が込められていた。
「予定変更だな。当時の状況を詳しく教えてくれ。可能なら、俺たちで確保する」
アラルが言っていた幽霊船。もしかすると、それかもしれないとシンは思った。
話を聞くと、そのエルフは、もうバルバトスにいないらしい。
数年前に、セルシュトースを見たと、ザジたちに報告に来たという。
「そのエルフっていうのは、誰かのサポートキャラか?」
「いえ、シン殿にわかりやすく言うなら、ただのNPCです。以前はエルクルスの港で働いていたらしく、何度か見たセルシュトースの威容を覚えていたとか」
「確かにエルクルスには何度か停泊したな。なら、見間違える可能性は低いか」
エルクルスはゲーム時代、港町として栄えていたホームタウンだ。大小さまざまな船以外に、船舶タイプのギルドハウスも停泊可能だった。
わざわざ港に泊めなくても、『六天』メンバーは各自、自分のギルドハウスやホームから直接転移できる。補給についても専門のサポートキャラを置いていて不用だった。
だが、やはり船なのだから、と一時期港を利用していたのだ。
その巨大さと豪華さを自慢したかった、というのも理由のひとつである。
「クウェイン海域っていうのは具体的に、どのあたりにあるんだ?」
「バルバトスからヒノモトの上を通るように進んだ先にあると、漁師や交易船の船員が言っていました。ただ、封鎖はされていませんが、危険水域ということでギルドが立ち入りを禁止しています」
顔をわずかに歪めてザジが言った。
ザジが不機嫌なのは、クウェイン海域への立ち入り許可を求めた際に、許可が下りなかったからだとケリトリが説明した。
「危険水域というのは、どういうことなんだ?」
「クウェイン海域は3つの大きな海流によって囲まれた部分で、三角形をしているそうです。そして、三角形のそれぞれの頂点に当たる部分を棲み処にした、海域を守護するモンスターがいます。数年前までは、海域に立ち入ろうとした者を威嚇して追い返すだけだったのですが、今では船ごと破壊してしまうようになったのだとか。穏やかだった海域も、大型船ですら転覆する嵐が常に吹き荒れる状態らしいです」
ザジの話を引き継いだケリトリが、頬に手を当てながらため息をつく。
嵐だけでも厄介だというのに、モンスターまで加わるとなると、ギルドが調査よりも封鎖を選んだのは間違っていないとシンは思った。
クウェイン海域を守護するモンスターは3体。
北西を縄張りにする、20メルを超える足と魔術を放つ宝玉を持つ烏賊『マスキューダ』。
南東を縄張りにする、刃のようなヒレと全身に生えた毒針を持つ鮫『エオリオス』。
南西を縄張りにする、鋼並みの硬度の体毛と複眼、さらに蟹のような鋏を持つ海蛇『ゲゼルドラン』。
これらのモンスターが、眷族を従えて互いに領域を拡大しようと争っているため、クウェイン海域に入って生きて帰った者はほとんどいない、とケリトリは続けた。
セルシュトースを見たエルフも、船が嵐で転覆し、潮に流されていく過程でたまたまクウェイン海域に入ってしまったという。本人も、生きて帰れないと覚悟した。
しかし、セルシュトースを目撃したのち、力尽きて海に沈んだはずが、気がつくと浮き輪代わりの木片とともにバルバトスの近くに浮かんでいたらしい。
そして、近くを通った船に救助され一命を取り留めた。
「それ、明らかに何かがいるよな」
「はい。海という点を考えれば、おそらくビースト。人魚か魚人でしょう」
ケリトリの推測に、シンもうなずいた。
【THE NEW GATE】では、外見が人に近い者を人魚、魚に近い者を魚人と呼称している。
いずれもビーストの亜種で水中戦に特化しており、無制限の潜水と、水中での全ステータス10パーセント強化が特徴だ。代わりに、地上では全ステータスが10パーセント低下する。
水による動きの阻害もなくなるので、海では無類の強さを誇った。
プレイヤーによっては、無限の潜水能力を使って相手プレイヤーを溺れさせて勝つ、などの戦法も使っていた。
呼称やステータスが変化することもあり、ビーストの中でも特殊な立ち位置と言える。
「エルフの話からして、その立ち入り制限っていうのは、壁か何かがあるわけじゃないんだろ? こっそり入れないのか?」
「可能だと思います。ただ、内部を調査するとなるとそれなりの規模の船が必要になりますから、ギルドに無断で、というのは難しいのではないかと」
ケリトリたちは調査用の船が調達できず、許可を得られなかったようだ。
シンもゲームで嵐の海を体験している。
魔術による付与を施さなければ、大型船も簡単に転覆してしまうような大波が、この世界では当たり前のように発生するのだ。そこらの船ではどうしようもない。
「そうなると、先に許可をもらっておいたほうがいいか。許可の出る条件はわかるか?」
「一定以上の規模の船舶を保有していること。Aランク以上の冒険者がいること。水中戦用の装備を持っていることだそうです。もちろん、死亡や怪我についての補償はありません。というより、あの海域に向かうことが、自殺行為だと思われているようですね」
「まあ、そうだろうな」
ケリトリの言葉に、シンも同意する。
クウェイン海域には、三海魔以外にもモンスターが多い。ザジたちが集めた情報を聞いただけでも、シンにはその厄介さがわかった。
海というのは、ときに陸などとは比べ物にならない量のモンスターが出現することもある。
足場は不安定で、敵の攻撃は360度の全方位から。
おまけに敵が水中ということで、こちらの攻撃手段が制限される。
ゲーム時代は、陸で名を馳せたプレイヤーが海に出た途端死に戻りした、などという話に事欠かなかった。
三海魔自体がレベル800台の強力なモンスター。当然、眷族もそれに相応しい強さを有している。
戦闘よりも、料理や他の生産系に重点を置いて育成されたザジたちでは、生きて帰ってくることはできないだろう。
「とりあえず、俺たちに足りないのは船だな」
「シン殿には、何か当てが?」
ザジが期待を込めた目を向けてきた。
「いやな、パーツはあるんだ。組み立てる場所が確保できれば、用意はできるぞ」
セルシュトースは魔導戦艦の中でも、ことさら巨大かつ強力で、【THE NEW GATE】内でも指折りの超弩級戦艦だった。
整備用パーツは膨大な数にのぼり、その大半は鍛冶師であるシンのお手製である。
よって試作品や予備を含めれば、おびただしい数の船舶用アイテムがシンのアイテムボックスには眠っているのだ。
ボックス内では、船の大きさごとにフォルダ分けしてパーツを保管してある。同じ規模の船なら、パーツを交換してカスタマイズも可能だ。
「さすがシン様です! さっそく手配しましょう!」
大喜びするケリトリは今にも駆け出しそうだった。
「そんなに簡単に場所が用意できるものなのか? さすがにその辺でやるってわけにはいかないぞ」
ゲームなら、港の管理所に行って登録するだけでよかったが、現実はそうも行かないだろう。
「知り合いの造船所で、船を作ってもらっているんです。親方には申し訳ないですけど、そこをお借りしましょう」
「大丈夫なのか? こう、人間関係的に」
場所があるならすぐに取りかかりたい。しかしいきなりやってきて、やっぱり依頼した船は作らなくていい、ではまずいのではないか。
「大丈夫でしょう。あの親父は自身の技術を高めるためなら、小さなことには固執しない。むしろシン殿が作る船を見て、技を盗もうとするでしょう」
自分の船が不要なら、その代わりの船を見せてもらおう――そのくらいは言うだろうと、ザジは続けた。
「なら、さっそく案内してもらえるか? さっさと準備して、クウェイン海域に向かいたい」
シンの言葉にうなずき、2人が立ち上がる。
ベルとシェルに洗い物を任せ、ザジとケリトリはシンたちを先導して大通りへ歩を進めた。
料理人の2人は着替えをしていない。ザジたちの着る服は、自身と装備を常に清潔に保つという魔術が付与されているのだ。
戦闘では役に立たないが、そこは譲れないと言うクックの依頼で、カシミア、ヘカテーと合同で作成したことを、シンは懐かしく思い出していた。
†
「ここです」
「さすが造船所、でかいな」
シンたちが訪れたのは、港の端に近い場所に位置する造船所だった。端に近いといっても、規模は周りの造船所に負けていない。
ザジの後に続いてドックの中に入ると、ガレオン船が2隻、固定具によって空中に浮かんでいた。
その横に作りかけの船が見える。あれがザジたちの依頼した船なのだろう。
作業員たちがザジに気づき、その中の1人が少し遠くにいた大柄な人物に声をかける。
そしてやってきたのが、背は低いが横幅が常人の倍近い、筋骨隆々の男だった。
「おう、ザジじゃねぇか。例の船は、まだ完成には早いぞ?」
気軽に話しているところを見ると、親しい間柄なのだろう。
シンはなんとなく、幹部クラスの船大工だろうと思った。
「今日はその船について、話があってきた。こっちは知り合いの冒険者で、シン殿という。この人はここ、ゴード造船所の所長兼船大工、ジグマ・ゴード。通称おやっさん」
ザジがそれぞれを紹介した。
人の目がある場所ではあまり仰々しくしないでほしいと伝えてあったので、ザジの紹介はぶっきら棒にも思える。
そんなザジを見て、ケリトリが1人ハラハラしていた。
「ケリトリ、落ち着きなさい」
「いくらなんでも、ザジの物言いは失礼では?」
「大丈夫です。シンはそういうことを気にする人ではありません」
シュニーがフォローしてくれている間にも、ザジとジグマの話は続く。
ザジが船の製造を中止してほしいと伝えると、ジグマの目がシンに向けられた。
「ここでする話じゃねぇな。詳しい話は奥で聞く。ついてこい」
出発までの時間を戦闘時の連携確認や観光に当て、2日後、シンたちは船の上で水平線を眺めていた。ゲイル・サーペントのようなモンスターに襲われることなどそうそうないので、航海は至って順調だ。
「この辺の海は海賊やモンスターも少ないからな。いざってときは、あんたたちに期待してるぜ?」
船の専属護衛を担っている冒険者の1人、アラルが声をかけてきた。短く刈り込んだ赤髪に、野性味のある顔立ちの男だ。
新人冒険者が増長しているように見られないよう、シンは丁寧な言葉で返す。
「任せてください。ランクは低いですが、海の戦闘は何度か経験しているので」
「頼もしいな。ただ、海では俺たちの考えつかないようなことが起こる。船乗りの間じゃ、この辺は幽霊船が出るってもっぱらの噂なんだぜ?」
「幽霊船ですか?」
アラルの話し振りは、ちょっと怖がらせてやろうといった気配だった。
しかし、シンにとっては冗談では済まない。ゲーム時代はエリアボスとして、本物の幽霊船が出現する海域が存在したのだ。
シンが怖がらせないでくれと返すと、アラルはにやりと笑って去っていった。
「船か……」
思い出すのは、『六天』のギルドハウスのひとつ、二式強襲艦セルシュトースのこと。
黄金商会も発見していないと聞いているので、もしかすると、どこかの海をずっとさまよっているのかもしれない。
そんなシンの思いなど知らぬとでもいうように、船は大きな帆で風を受け、どんどん大海を進んでいく。
天気が崩れることもなく、快晴の空の下には、幽霊船やセルシュトースの影は一切ない。
船旅は順調に進み、船出から2日後、シンたちは再び大地に降り立った。
「ここが海洋都市バルバトスか。海賊の街みたいな名前だな」
「なんでも、地熱を利用した温水プールが有名らしいわよ?」
船長からそう聞いたらしいフィルマが、別れを惜しむように、船のほうへ手を振りながら言った。
「プールか。普通は海水浴なんだろうけどな」
海には危険なモンスターが数多くいるうえに、陸に上がってくるタイプも存在する。
わざわざ海を区切るように壁だの網だのを設置するよりも、海と完全に切り離したレジャー施設を作ったほうが安全の維持管理が簡単なのだ。
そんな理由もあって、海洋都市にはビーチなど存在しないという。
「せっかくだし、時間があったら行ってみましょうよ。湖とか海と違って、モンスターを気にしなくていいからきっと楽しいわ」
「そうだな。たまには面倒なことは忘れて、遊ぶのもいいか」
フィルマが『界の雫』に閉じ込められる前は、娯楽を楽しむ余裕はほとんどなかったらしい。
本格的に遊ぶことなどこの世界に来てからほとんどなかったので、シンも乗り気だった。
「なら、まずは水着選びよね。あ、でもその前に食事かしら」
すでに午後1時を回っている。昼食はバルバトスで取ろうと決めていたので、朝食以降何も食べていない。
テンションの高いフィルマを落ち着かせて、シンたちは店を探すことにした。
「――で、ここか」
「はい。クック様配下のザジ、ケリトリ、ベル、シェルの4人がここにいるはずです。しかし……これは予想以上ですね」
シンがエルトニア大陸に向かう際、行き先をここバルバトスに決めたのは、『六天』の1人クックのホーム『時雨屋』があるからだ。今も変わらず料理屋として営業しているらしい。
配下のうち、長命種の4名はまだ現役で、バルバトス以外からも訪れる客がいる、とアラルが言っていた。
そしてその言葉通り、シンたちの前には長蛇の列が出現していた。老若男女問わず、種族問わず、きちんと1列に並んでいる。
「これは1時間待ちとか、そういうレベルじゃないな」
「メッセージを飛ばしてみます。何かしらの反応はあるはずです」
列を眺めていたシンに、シュニーが言う。
しばらくすると、店の扉を開けて2人の少女が飛び出してきた。その顔は瓜ふたつで、どちらも頭部にねじくれた角を持ち、背には被膜のある翼、服の下からは鱗に覆われた尾が見えている。
少女たちこそがベルとシェルだ。どちらも目が深紅で、ベルが銀髪を右頭部でくくり、シェルが黒髪を左頭部でくくっている。
「相変わらず、あの格好なのな」
シンがそう言ったのは、ベルが割烹着を、シェルがメイド服を着ていたからだ。
この分なら、中に残っている料理人の2人も、片方はコックコート、片方は着物を着ているのだろう。
「シュニー発見!」
「フィルマ発見!」
シンたちがいるほうを指差して、ベルとシェルが元気良く叫んだ。シュニーの名前が出たが、変装中なので気づく者はいない。
「シュバイド発見!」
「シンさ――」
「2人とも? 少し騒がしいですよ?」
シンの名前を呼ぼうとしたところで、シュニーが割って入った。まるで蛇に睨まれた蛙のごとく、体の動きまでピタッと止まっている。
シンたちは思った。あ、怒っていると。
「騒がないようにと、ケリトリに送ったメッセージに記載してありましたよね?」
「「ご、ごめんなさーい!」」
話を聞かずに飛び出してきたのだろう。2人は謝ると同時に店に駆け戻っていった。
「なんというか、この騒がしさも懐かしいな」
「公衆の面前で名前を叫ばれるのは、さすがに困ります」
ベル&シェルとのやりとりで、シンたちは多少なり周囲から注目を浴びていた。
これは出直したほうがよさそうだと考えていると、シュニーが店の裏手に回るように言う。
どうやら、ケリトリからメッセージが返ってきたらしい。
一旦店から離れて、人通りの少ない道を迂回する。一行が時雨屋の裏手に着くと、そこには1人の女性が立っていた。
シュニーとメッセージのやり取りをしていた、ケリトリだ。
黒髪を後頭部で結い、動きやすさを重視した着物をたすき掛けにしている。緑色の瞳は、シンの記憶と同じ優しげな光を宿していた。
「お待ちしておりました。ベルとシェルがご迷惑をおかけしたようで、申し訳ありません」
「気にしなくていい。相変わらずみたいで、安心したよ」
ケリトリに案内されて、シンたちは時雨屋に入る。通されたのは、特別客用の個室だ。
ちょうど食材が切れたところだったらしく、営業は終了。店にはまだ食事中の人だけが残っていた。
「ご用意しますので、少々お待ちください」
昼食を時雨屋でと考えていたことを伝えると、ケリトリは任せてくださいと意気込んで引き受けた。従業員用の食材がまだあるらしい。
「お冷です」
「おしぼりです」
ケリトリと入れ替わりに姿を見せたのはベルとシェルだ。
シュニーの前では少し動きがぎこちなくなるが、お許しが出ると、笑みを浮かべて本日のメニューを告げた。
「そういえば、ザジは料理中なんだよな?」
「ザジっちゃんは料理に集中してます!」
「ああなると、てこでも動きません!」
シンの質問にベルとシェルが、しょうがないやつです、とでも言いたげな表情で返してくる。
「「呼んできますか?」」
「いや、挨拶しときたかっただけなんだ。どうせ後で会うだろうし、その時でいい」
まったく同じタイミングで言ったベルとシェルに、シンは首を振った。料理を中断させてまで呼び出す気はない。
かつて時雨屋のトップ、料理長は当然クックだった。
ザジはケリトリとともに副料理長の役目を負っていた。2人の料理の腕はほぼ互角で、戦闘力は陸戦ならケリトリ、海戦ならザジに軍配が上がる。
ウェイトレスのベルとシェルは、料理の技術は未熟だが、戦闘力はザジたちより上だった。
「ごちそうさまでした」
食事を終えると、タイミングを計ったようにザジとケリトリが姿を見せた。
着物を着たケリトリの横に、細身ながらもしっかりと筋肉のついた肉体をコックコートに包んだザジが並ぶ。一見、同じ店に勤める料理人とは思えない。
包容力を感じさせるケリトリに対して、ザジは赤い短髪が似合う、所謂ワイルド系だ。料理人というより冒険者といったほうがしっくりくる。
「料理の腕、上がったか?」
「そう思っていただけたなら、精進してきた甲斐があります」
ケリトリは微笑を浮かべてうなずく。
頻繁に時雨屋に来ていたわけではないが、シンの記憶している味より、幾分か進歩しているように感じられた。
「それで、今日はどのような用件で?」
ザジが口を開いた。
容姿に見合った低く響く声。茶色の瞳は睨みつける一歩手前の鋭さだった。
「せっかくだから、挨拶をしておこうと思ったんだ。わざわざ個室まで用意してもらって、悪かった」
「いえ、クック様のご友人に不調法はできませんので」
そう言いつつも、ザジの表情は「面倒をかけやがって」と言っているようにしか見えない。
もともとそういう顔つきなのだと知らなければ、機嫌を損ねたと勘違いしてしまうところだ。
「……ひとつ伺いたい。シン殿は、あの噂を聞いてきたのではないので?」
「こら、ザジ。シン様でしょ」
「いや、いいよ。それより、噂っていうのは何のことなんだ?」
ザジを諫めるケリトリを宥めて、シンは尋ねた。
「バルバトスの沖にあるクウェイン海域。そこで、巨大な船を見たという船員がいるのです。その男はエルフで、セルシュトースを知っていました」
「それで、巨大な船がセルシュトースだったと言っている?」
「はい」
ザジは眼光を鋭くして、シンを見ていた。
その瞳には、セルシュトース――主であるクックのギルドハウスを必ず見つけ出す、という強い意志が込められていた。
「予定変更だな。当時の状況を詳しく教えてくれ。可能なら、俺たちで確保する」
アラルが言っていた幽霊船。もしかすると、それかもしれないとシンは思った。
話を聞くと、そのエルフは、もうバルバトスにいないらしい。
数年前に、セルシュトースを見たと、ザジたちに報告に来たという。
「そのエルフっていうのは、誰かのサポートキャラか?」
「いえ、シン殿にわかりやすく言うなら、ただのNPCです。以前はエルクルスの港で働いていたらしく、何度か見たセルシュトースの威容を覚えていたとか」
「確かにエルクルスには何度か停泊したな。なら、見間違える可能性は低いか」
エルクルスはゲーム時代、港町として栄えていたホームタウンだ。大小さまざまな船以外に、船舶タイプのギルドハウスも停泊可能だった。
わざわざ港に泊めなくても、『六天』メンバーは各自、自分のギルドハウスやホームから直接転移できる。補給についても専門のサポートキャラを置いていて不用だった。
だが、やはり船なのだから、と一時期港を利用していたのだ。
その巨大さと豪華さを自慢したかった、というのも理由のひとつである。
「クウェイン海域っていうのは具体的に、どのあたりにあるんだ?」
「バルバトスからヒノモトの上を通るように進んだ先にあると、漁師や交易船の船員が言っていました。ただ、封鎖はされていませんが、危険水域ということでギルドが立ち入りを禁止しています」
顔をわずかに歪めてザジが言った。
ザジが不機嫌なのは、クウェイン海域への立ち入り許可を求めた際に、許可が下りなかったからだとケリトリが説明した。
「危険水域というのは、どういうことなんだ?」
「クウェイン海域は3つの大きな海流によって囲まれた部分で、三角形をしているそうです。そして、三角形のそれぞれの頂点に当たる部分を棲み処にした、海域を守護するモンスターがいます。数年前までは、海域に立ち入ろうとした者を威嚇して追い返すだけだったのですが、今では船ごと破壊してしまうようになったのだとか。穏やかだった海域も、大型船ですら転覆する嵐が常に吹き荒れる状態らしいです」
ザジの話を引き継いだケリトリが、頬に手を当てながらため息をつく。
嵐だけでも厄介だというのに、モンスターまで加わるとなると、ギルドが調査よりも封鎖を選んだのは間違っていないとシンは思った。
クウェイン海域を守護するモンスターは3体。
北西を縄張りにする、20メルを超える足と魔術を放つ宝玉を持つ烏賊『マスキューダ』。
南東を縄張りにする、刃のようなヒレと全身に生えた毒針を持つ鮫『エオリオス』。
南西を縄張りにする、鋼並みの硬度の体毛と複眼、さらに蟹のような鋏を持つ海蛇『ゲゼルドラン』。
これらのモンスターが、眷族を従えて互いに領域を拡大しようと争っているため、クウェイン海域に入って生きて帰った者はほとんどいない、とケリトリは続けた。
セルシュトースを見たエルフも、船が嵐で転覆し、潮に流されていく過程でたまたまクウェイン海域に入ってしまったという。本人も、生きて帰れないと覚悟した。
しかし、セルシュトースを目撃したのち、力尽きて海に沈んだはずが、気がつくと浮き輪代わりの木片とともにバルバトスの近くに浮かんでいたらしい。
そして、近くを通った船に救助され一命を取り留めた。
「それ、明らかに何かがいるよな」
「はい。海という点を考えれば、おそらくビースト。人魚か魚人でしょう」
ケリトリの推測に、シンもうなずいた。
【THE NEW GATE】では、外見が人に近い者を人魚、魚に近い者を魚人と呼称している。
いずれもビーストの亜種で水中戦に特化しており、無制限の潜水と、水中での全ステータス10パーセント強化が特徴だ。代わりに、地上では全ステータスが10パーセント低下する。
水による動きの阻害もなくなるので、海では無類の強さを誇った。
プレイヤーによっては、無限の潜水能力を使って相手プレイヤーを溺れさせて勝つ、などの戦法も使っていた。
呼称やステータスが変化することもあり、ビーストの中でも特殊な立ち位置と言える。
「エルフの話からして、その立ち入り制限っていうのは、壁か何かがあるわけじゃないんだろ? こっそり入れないのか?」
「可能だと思います。ただ、内部を調査するとなるとそれなりの規模の船が必要になりますから、ギルドに無断で、というのは難しいのではないかと」
ケリトリたちは調査用の船が調達できず、許可を得られなかったようだ。
シンもゲームで嵐の海を体験している。
魔術による付与を施さなければ、大型船も簡単に転覆してしまうような大波が、この世界では当たり前のように発生するのだ。そこらの船ではどうしようもない。
「そうなると、先に許可をもらっておいたほうがいいか。許可の出る条件はわかるか?」
「一定以上の規模の船舶を保有していること。Aランク以上の冒険者がいること。水中戦用の装備を持っていることだそうです。もちろん、死亡や怪我についての補償はありません。というより、あの海域に向かうことが、自殺行為だと思われているようですね」
「まあ、そうだろうな」
ケリトリの言葉に、シンも同意する。
クウェイン海域には、三海魔以外にもモンスターが多い。ザジたちが集めた情報を聞いただけでも、シンにはその厄介さがわかった。
海というのは、ときに陸などとは比べ物にならない量のモンスターが出現することもある。
足場は不安定で、敵の攻撃は360度の全方位から。
おまけに敵が水中ということで、こちらの攻撃手段が制限される。
ゲーム時代は、陸で名を馳せたプレイヤーが海に出た途端死に戻りした、などという話に事欠かなかった。
三海魔自体がレベル800台の強力なモンスター。当然、眷族もそれに相応しい強さを有している。
戦闘よりも、料理や他の生産系に重点を置いて育成されたザジたちでは、生きて帰ってくることはできないだろう。
「とりあえず、俺たちに足りないのは船だな」
「シン殿には、何か当てが?」
ザジが期待を込めた目を向けてきた。
「いやな、パーツはあるんだ。組み立てる場所が確保できれば、用意はできるぞ」
セルシュトースは魔導戦艦の中でも、ことさら巨大かつ強力で、【THE NEW GATE】内でも指折りの超弩級戦艦だった。
整備用パーツは膨大な数にのぼり、その大半は鍛冶師であるシンのお手製である。
よって試作品や予備を含めれば、おびただしい数の船舶用アイテムがシンのアイテムボックスには眠っているのだ。
ボックス内では、船の大きさごとにフォルダ分けしてパーツを保管してある。同じ規模の船なら、パーツを交換してカスタマイズも可能だ。
「さすがシン様です! さっそく手配しましょう!」
大喜びするケリトリは今にも駆け出しそうだった。
「そんなに簡単に場所が用意できるものなのか? さすがにその辺でやるってわけにはいかないぞ」
ゲームなら、港の管理所に行って登録するだけでよかったが、現実はそうも行かないだろう。
「知り合いの造船所で、船を作ってもらっているんです。親方には申し訳ないですけど、そこをお借りしましょう」
「大丈夫なのか? こう、人間関係的に」
場所があるならすぐに取りかかりたい。しかしいきなりやってきて、やっぱり依頼した船は作らなくていい、ではまずいのではないか。
「大丈夫でしょう。あの親父は自身の技術を高めるためなら、小さなことには固執しない。むしろシン殿が作る船を見て、技を盗もうとするでしょう」
自分の船が不要なら、その代わりの船を見せてもらおう――そのくらいは言うだろうと、ザジは続けた。
「なら、さっそく案内してもらえるか? さっさと準備して、クウェイン海域に向かいたい」
シンの言葉にうなずき、2人が立ち上がる。
ベルとシェルに洗い物を任せ、ザジとケリトリはシンたちを先導して大通りへ歩を進めた。
料理人の2人は着替えをしていない。ザジたちの着る服は、自身と装備を常に清潔に保つという魔術が付与されているのだ。
戦闘では役に立たないが、そこは譲れないと言うクックの依頼で、カシミア、ヘカテーと合同で作成したことを、シンは懐かしく思い出していた。
†
「ここです」
「さすが造船所、でかいな」
シンたちが訪れたのは、港の端に近い場所に位置する造船所だった。端に近いといっても、規模は周りの造船所に負けていない。
ザジの後に続いてドックの中に入ると、ガレオン船が2隻、固定具によって空中に浮かんでいた。
その横に作りかけの船が見える。あれがザジたちの依頼した船なのだろう。
作業員たちがザジに気づき、その中の1人が少し遠くにいた大柄な人物に声をかける。
そしてやってきたのが、背は低いが横幅が常人の倍近い、筋骨隆々の男だった。
「おう、ザジじゃねぇか。例の船は、まだ完成には早いぞ?」
気軽に話しているところを見ると、親しい間柄なのだろう。
シンはなんとなく、幹部クラスの船大工だろうと思った。
「今日はその船について、話があってきた。こっちは知り合いの冒険者で、シン殿という。この人はここ、ゴード造船所の所長兼船大工、ジグマ・ゴード。通称おやっさん」
ザジがそれぞれを紹介した。
人の目がある場所ではあまり仰々しくしないでほしいと伝えてあったので、ザジの紹介はぶっきら棒にも思える。
そんなザジを見て、ケリトリが1人ハラハラしていた。
「ケリトリ、落ち着きなさい」
「いくらなんでも、ザジの物言いは失礼では?」
「大丈夫です。シンはそういうことを気にする人ではありません」
シュニーがフォローしてくれている間にも、ザジとジグマの話は続く。
ザジが船の製造を中止してほしいと伝えると、ジグマの目がシンに向けられた。
「ここでする話じゃねぇな。詳しい話は奥で聞く。ついてこい」
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