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圭佑と聖は、ささやかな幸せを分け合いながら暮らしていた。
だがある冬の朝、圭佑は事故で突然この世を去る。
死んだはずの圭佑が次に目を覚ましたのは、二人で暮らしていたアパートだった。
時間はすでに二年が経っている。
そして彼の目の前で、恋人の聖は“終わらせよう”としていた。
声も届かず、触れることもできないまま、それでも圭佑は聖を追いかける。
やがて二人は、かつて何度も通った高台の公園へ辿り着く。
星の下で、ついに圭佑の声と姿を認識した聖は、壊れたように言葉を溢れさせる。
時間がない中で語られる、言えなかった想い。
果たされなかったプロポーズ。
「忘れてくれ」と「忘れないでくれ」の矛盾した愛。
別れのあと、聖は圭佑の言葉を胸に、生きることを選ぶ。
それは長く、静かで、確かな一生だった。
これは、
愛する人を失った夜が、朝へと変わるまでの物語。
文字数 3,357
最終更新日 2026.02.06
登録日 2026.02.06
雨上がりの空に、虹が架かった日。
若い兵士・高木伍長は、ひとりの上官に恋をした。
吉田傳中尉。
無駄を削ぎ落とした所作と、感情を表に出さない静かな男。
戦時という極限の中で、彼は「判断する側」として生きていた。
高木の恋は、告白ではなく「共有」から始まる。
空の色、夜の会話、意味を持たないはずの言葉。
——なるようになる。
それは、慰めでも希望でもない、ただ受け入れるための言葉だった。
二人の距離は、近づくことも遠ざかることもなく、
規律と沈黙の中で、確かに存在していく。
やがて下される、ひとつの決定。
それが誰の人生を、どこへ運ぶのか。
選ぶ者と、選ばれる者。
伝えられなかった言葉と、届いてしまった声。
これは、
戦場で結ばれることのなかった恋の物語であり、
それでも消えずに残り続けた感情の記録である。
虹は、理由を持たない。
けれど、人はそこに意味を見出してしまう。
——その日、恋は始まり、
そして、終わりの方角へと歩き出した。
文字数 3,901
最終更新日 2026.02.05
登録日 2026.02.05
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