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父親が失踪し、残された借金だけを背負った高校一年生、桐生 悠真。
中学時代から新聞配達を続け、高校では授業のあとにコンビニ、休日には短期の仕事まで詰め込む毎日を送っていた。
食事も睡眠も削り、「生きるのに必要のないものは無駄だ」と切り捨てる悠真にとって、麻雀は父親と借金を思い出させる嫌いなものだった。
雀荘に満ちる煙草と酒の匂い、金をやり取りする大人たち、そして乾いた牌の音。
――そのすべてが、彼には同じものに見えていた。
そんなある日、校内で絡まれていた同級生、朝倉 明莉を助けたことから、悠真は麻雀同好会へ足を踏み入れる。
そこにいたのは、明るく距離を詰めてくる明莉、気さくに接する二年生の水瀬 夏希、そして悠真の無理を誰より早く見抜く部長、九条 琴葉。
三人が囲む卓には、煙草も酒も金のやり取りもなかった。
ただ、牌を打つ音と笑い声だけがあった。
順子、刻子、聴牌、立直。最初は「金にならない」と拒んでいた悠真も、一つずつルールを知り、自分で考えて一枚を選ぶ面白さを覚えていく。
やがて麻雀は、ただの遊びではなくなる。
待つこと、誰かを頼ること、失敗しても次を選ぶこと。
卓上で覚えたものは、借金を返すことだけに縛られていた悠真自身の生き方にも重なっていく。
しかし、置き去りにしたはずの父親と借金の問題は、再び悠真の日常へ迫ってくる。
すべてを一人で背負おうとする彼に、明莉たちや雀荘の男たちはそれぞれのやり方で手を伸ばす。
過去の責任と、自分の未来。
その境界に立たされた悠真は初めて、「どう生き延びるか」ではなく「これから何を選びたいか」を考え始める。
嫌いだった牌の音が、いつの間にか放課後の笑い声と結びついていく。
これは、明日を耐えることしか知らなかった少年が、誰かと卓を囲み、明日を楽しみにできるようになるまでの青春麻雀物語。
文字数 206,924
最終更新日 2026.09.14
登録日 2026.09.14
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