庭 京介

庭 京介

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ミステリー 連載中 長編 R15
県境を挟んで二体の惨殺死体が発見される。それは共に、30数ヶ所の刺創及び腹を切り裂かれるという凄惨なものであった。同一犯による犯行と見なされ合同捜査本部が立ち上がった。被害者は若い男女である。二人の共通点は何か?  その最大の疑問を解き明かしたのは若い女刑事江森葵であった。葵は、SNSに二人の名前を発見し、更に介護者の集いというNPO法人での二人の接点を突き止めたのだ。捜査はそれを切っ掛けとして大きな進展を見せる。  容疑者として浮上したのがある親子であった。草壁麻利江、優作母子は介護者の集いにおいて、二人と接点があった。麻利江は脳出血の後遺症で右半身が不自由であり、優作は働きながら母の介護を続けるヤングケアラーであった。  その親子を犯人と断定とするに足る材料に乏しく、捜査本部の大勢はシロであった。だが草壁親子に狙いを定めた葵は、単独捜査を続ける。  おりしも葵が母麻利江の方からその手掛かりらしきものを見出だそうとした時、不眠不休の捜査で心身を酷使続けた葵の体力が悲鳴を上げ入院となった。  マンションから落下したと思われる死体発見の一報を受け、近石刑事は現場に駆け付ける。死体の傍らに上体を沈めた瞬間、近石は司法解剖の段取りに入るように部下に命じる。司法解剖及びマンション室内の検証により、自殺は否定され自殺偽装殺人であることが明らかとなる。被害者は草壁麻利江。脳出血の後遺症で右半身が不自由であった。麻利江を介護していた息子優作には明確なアリバイがあった。優作はそのアリバイは麻利江の姉美佐江によるアリバイ工作と見抜く。その後事件は急展開を見せる。麻利江の家出した娘香織と麻利江と離婚した元夫が相次いで自首してきたのだ。二人は各々が自分がを麻利江を殺害したと主張する。近石には一族の意図が見えていた。事件を複雑化させることによって、その真相を見え難くせんとしている。事件は一人の母の死などという単純なものではない。その難航する捜査に突破口を開けたのは、またしても江森葵であった。  葵は連続刺殺事件の捜査から外されていたが、麻利江殺害事件をも含めた事件の全体像について明確なイメージを抱いていた。かつてのコンビであり師でもある近石に対し、葵は事件の原点とも言うべき31年前の新聞記事を示す。近石はその記事から全てを理解する。それは麻利江の祖父による13名の女性連続刺殺事件に関するものであった。  麻利江は恐れたのだ。息子優作に祖父の汚れた血が宿っていることを。だが、手遅れであった。麻利江から飛び立った優作は既に殺人モンスターと化し、五件の殺人を犯していたのだ。  逮捕に向け一丸となった警察であったが、優作は北海道のホテルで惨殺死体となって発見される。  その優作殺しが、より凶悪なサイコパス脳を覚醒させ、新たな殺人モンスターを出現させる。
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文字数 103,915 最終更新日 2025.03.30 登録日 2025.03.30
歴史・時代 完結 長編
「大衆批判に過敏になっておられる上様が苦悩するご様子を目にし続けるのは忍びのうてな。そこでじゃ」  江戸城本丸中奥、目付五十畑修次郎は側用人柳沢保明の次なる一言を待った。 「あの事件の真相を明らかに致せ」  それが上様にとって好ましい結果になるという保証はない。そのような懸念を抱きつつ、五十畑は頭を垂れた。  五十畑は配下の徒目付安堂に赤穂城を離散した元家臣から浅野家内部情報の収集を命じ、自らは関係者の聴取に入った。吉良上野介に向かって小刀を振り被った内匠頭を制止した梶川与惣兵衛と上野介から始まった聴取において真相解明に直結し得る新情報の入手は無かったが、浅野家の江戸家老安井彦右衛門から気になる発言を引き出すことができた。浅野家主君と家臣の間には君臣の義と言えるものはなかった。問題があったのは主君の方。安井はそこまで言うと口を閉じた。  それは安堂からの報告からも裏付けられた。主君と家臣の間の冷めた関係性である。更に続いた安堂の報告に、五十畑は眉を寄せる。赤穂城内から頻繁に搬出された侍女の斬殺死体。不行跡により手打ちにあったということである。さらに浅野刃傷事件の際に内匠頭の暴走を制止した茶坊主の発言として、内匠頭から何かが臭ったというものである。五十畑はそれらの情報を繋ぎ会わせ、浅野刃傷の原因についてある結論を導き出す。  安堂の報告は、浅野家元城代家老大石内蔵助にも及んだ。京の郭で遊蕩にふける内蔵助の元へ頻繁に訪れる武士の姿。その武士は京都所司代の筋らしく遊蕩費の出所はそこらしいということであった。  五十畑は柳沢に密命の最終報告を行う。  内匠頭の家臣斬殺及び義や情を欠いた君臣の原点を知った柳沢は唸った。それは内匠頭の内面に潜む危険なる性であった。  その報告の中から、五十畑が敢えて除外したものがあった。京都所司代より流れた内蔵助の遊蕩費の件である。五十畑はその狙いが内蔵助を遊蕩漬けにし吉良仇討ちから遠ざけること、そしてそれを主導するのが柳沢であるとの確信を得ていた。  元禄15年末、泰平の夜に激震が走った。47名の赤穂浪士が吉良邸に討ち入り、上野介の御首級を上げたのである。  五十畑は赤穂浪士討ち入りの影に潜む悪意を見定めるため、細川越中守邸に預けられていた大石内蔵助に面会する。内蔵助は、遊蕩狂いが吉良方の目を欺くためではなく、自らの性癖により衝き動かされた自発的行為であることを認めた上で、そんな自分を吉良邸討ち入りに誘導したのは柳沢より提示された討ち入り後の無罪裁決及び仕官であると語る。そこまでは五十畑も想定の範囲内であったが、内蔵助はもう一人意外な人物の介入を口にする。金銭的援助及び吉良方の内部情報提供の申し出があったというのである。  二人の人物の吉良邸討ち入りを後押しする真の狙いは?  遂に赤穂事件の裏側に潜む闇が顔を出す。
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文字数 96,987 最終更新日 2025.03.11 登録日 2025.03.11
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