大義なき喝采〜赤穂事件の背後に蠢く策謀〜
「大衆批判に過敏になっておられる上様が苦悩するご様子を目にし続けるのは忍びのうてな。そこでじゃ」
江戸城本丸中奥、目付五十畑修次郎は側用人柳沢保明の次なる一言を待った。
「あの事件の真相を明らかに致せ」
それが上様にとって好ましい結果になるという保証はない。そのような懸念を抱きつつ、五十畑は頭を垂れた。
五十畑は配下の徒目付安堂に赤穂城を離散した元家臣から浅野家内部情報の収集を命じ、自らは関係者の聴取に入った。吉良上野介に向かって小刀を振り被った内匠頭を制止した梶川与惣兵衛と上野介から始まった聴取において真相解明に直結し得る新情報の入手は無かったが、浅野家の江戸家老安井彦右衛門から気になる発言を引き出すことができた。浅野家主君と家臣の間には君臣の義と言えるものはなかった。問題があったのは主君の方。安井はそこまで言うと口を閉じた。
それは安堂からの報告からも裏付けられた。主君と家臣の間の冷めた関係性である。更に続いた安堂の報告に、五十畑は眉を寄せる。赤穂城内から頻繁に搬出された侍女の斬殺死体。不行跡により手打ちにあったということである。さらに浅野刃傷事件の際に内匠頭の暴走を制止した茶坊主の発言として、内匠頭から何かが臭ったというものである。五十畑はそれらの情報を繋ぎ会わせ、浅野刃傷の原因についてある結論を導き出す。
安堂の報告は、浅野家元城代家老大石内蔵助にも及んだ。京の郭で遊蕩にふける内蔵助の元へ頻繁に訪れる武士の姿。その武士は京都所司代の筋らしく遊蕩費の出所はそこらしいということであった。
五十畑は柳沢に密命の最終報告を行う。
内匠頭の家臣斬殺及び義や情を欠いた君臣の原点を知った柳沢は唸った。それは内匠頭の内面に潜む危険なる性であった。
その報告の中から、五十畑が敢えて除外したものがあった。京都所司代より流れた内蔵助の遊蕩費の件である。五十畑はその狙いが内蔵助を遊蕩漬けにし吉良仇討ちから遠ざけること、そしてそれを主導するのが柳沢であるとの確信を得ていた。
元禄15年末、泰平の夜に激震が走った。47名の赤穂浪士が吉良邸に討ち入り、上野介の御首級を上げたのである。
五十畑は赤穂浪士討ち入りの影に潜む悪意を見定めるため、細川越中守邸に預けられていた大石内蔵助に面会する。内蔵助は、遊蕩狂いが吉良方の目を欺くためではなく、自らの性癖により衝き動かされた自発的行為であることを認めた上で、そんな自分を吉良邸討ち入りに誘導したのは柳沢より提示された討ち入り後の無罪裁決及び仕官であると語る。そこまでは五十畑も想定の範囲内であったが、内蔵助はもう一人意外な人物の介入を口にする。金銭的援助及び吉良方の内部情報提供の申し出があったというのである。
二人の人物の吉良邸討ち入りを後押しする真の狙いは?
遂に赤穂事件の裏側に潜む闇が顔を出す。
江戸城本丸中奥、目付五十畑修次郎は側用人柳沢保明の次なる一言を待った。
「あの事件の真相を明らかに致せ」
それが上様にとって好ましい結果になるという保証はない。そのような懸念を抱きつつ、五十畑は頭を垂れた。
五十畑は配下の徒目付安堂に赤穂城を離散した元家臣から浅野家内部情報の収集を命じ、自らは関係者の聴取に入った。吉良上野介に向かって小刀を振り被った内匠頭を制止した梶川与惣兵衛と上野介から始まった聴取において真相解明に直結し得る新情報の入手は無かったが、浅野家の江戸家老安井彦右衛門から気になる発言を引き出すことができた。浅野家主君と家臣の間には君臣の義と言えるものはなかった。問題があったのは主君の方。安井はそこまで言うと口を閉じた。
それは安堂からの報告からも裏付けられた。主君と家臣の間の冷めた関係性である。更に続いた安堂の報告に、五十畑は眉を寄せる。赤穂城内から頻繁に搬出された侍女の斬殺死体。不行跡により手打ちにあったということである。さらに浅野刃傷事件の際に内匠頭の暴走を制止した茶坊主の発言として、内匠頭から何かが臭ったというものである。五十畑はそれらの情報を繋ぎ会わせ、浅野刃傷の原因についてある結論を導き出す。
安堂の報告は、浅野家元城代家老大石内蔵助にも及んだ。京の郭で遊蕩にふける内蔵助の元へ頻繁に訪れる武士の姿。その武士は京都所司代の筋らしく遊蕩費の出所はそこらしいということであった。
五十畑は柳沢に密命の最終報告を行う。
内匠頭の家臣斬殺及び義や情を欠いた君臣の原点を知った柳沢は唸った。それは内匠頭の内面に潜む危険なる性であった。
その報告の中から、五十畑が敢えて除外したものがあった。京都所司代より流れた内蔵助の遊蕩費の件である。五十畑はその狙いが内蔵助を遊蕩漬けにし吉良仇討ちから遠ざけること、そしてそれを主導するのが柳沢であるとの確信を得ていた。
元禄15年末、泰平の夜に激震が走った。47名の赤穂浪士が吉良邸に討ち入り、上野介の御首級を上げたのである。
五十畑は赤穂浪士討ち入りの影に潜む悪意を見定めるため、細川越中守邸に預けられていた大石内蔵助に面会する。内蔵助は、遊蕩狂いが吉良方の目を欺くためではなく、自らの性癖により衝き動かされた自発的行為であることを認めた上で、そんな自分を吉良邸討ち入りに誘導したのは柳沢より提示された討ち入り後の無罪裁決及び仕官であると語る。そこまでは五十畑も想定の範囲内であったが、内蔵助はもう一人意外な人物の介入を口にする。金銭的援助及び吉良方の内部情報提供の申し出があったというのである。
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遂に赤穂事件の裏側に潜む闇が顔を出す。
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