Z世代を甘やかすな

「うちの会社って遅れてますよね」高学歴の新卒Z世代の高プライド&無能化が進む理由

2026.05.01 公式 Z世代を甘やかすな 第10回
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受験エリートはAIに駆逐される

対照的なのが、就職氷河期を生き抜いた世代だ。彼らの時代、東大を出ても就職先がないという理不尽がまかり通っていた。安定したルートなど存在せず、むしろ「高学歴」が足かせになることさえあった。この「正解のない荒野」をサバイブした彼らは、マニュアルに頼る術を持たなかったため、強制的に「地頭」を使わざるを得なかった。仕事でも同じく、今のように懇切丁寧に教わることもなく、若手は「見て盗め」で放り込まれた。過去の先人が残した仕事から逆算して、求められる成果物の規則性を見出し、解釈するという仕事をしたのは筆者だけではないはずだ。もちろん彼らが万能だったわけではない。だが少なくとも「不確実性への耐性」だけは、しっかり鍛えられたのだ。
理不尽な上司、不条理な取引先、突然のルール変更。それらをただ嘆くのではなく、「攻略すべき環境変数」として捉え、泥臭く適応し、ねじ伏せてきた。彼らが持つのは、誰かが作ったテストで満点を取る能力ではない。ルール無用のストリートファイトで生き残るための強さである。この「野生の強さ」は、SAPIXや鉄緑会で培養された「養殖エリート」が最も苦手とするものである。
皮肉なことに、現代の高学歴Z世代がアイデンティティとする「正解をハックする能力」「最適解を導き出す情報処理能力」は、AIが最も得意とする領域である。与えられたデータからパターンを見出し、過去の事例(学習データ)に基づいて最適解を出力することにおいて、人間はもはやAIに勝てない。つまり、彼らが誇る「受験エリートとしてのスキル」は、今後急速にコモディティ化し、価値を失っていく運命にある。
では、彼らに活路はあるのか。逆説的だが、彼らが軽視してきた「非合理」や「非効率」の中にこそ、人間だけが発揮できる価値が残されている。データ化できない現場の機微を読み取る力。論理だけでは動かない人間の感情を調整する力。正解のない問いに対して、責任を持って「決断」を下す胆力。これらは、マニュアルやYouTubeの解説動画では決して学べない、「アナログな熟成」を必要とする能力である。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

1981年大阪府生まれ。実業家。学生時代から人間関係でなめられることに苦しみ、社会に出ても理不尽な扱いを受け続けた経験を持つ。しかし、その経験を逆手に取り、なめられないための戦略を研究、体系化した。現在は、本業のかたわら、アゴラ、プレジデント、Yahoo!ニュースなどネットメディアでニュース・オピニオン記事を執筆し、PVの最高値は1記事で150万PV超。テレビ朝日系、TBSラジオなどテレビ・ラジオ番組にも多数出演している。なめられる弱者だった立場から、自らを研究対象として積み上げてきた経験を土台に本書を執筆している。

著書

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黒坂岳央 /
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