「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」
指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、ビジネスライターの黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。
出世に興味がないと言われているZ世代の中にも「どんどん成長したいです! 厳しい環境でも頑張ります!」と目を輝かせて語る者もいる。今どき殊勝な若者だ、とその意欲を買って、あえて難易度の高いタスクを与え、ミスに対して少し強めの口調で指導をしたとする。すると数日後、彼は突然会社を休み、人事部から「彼があなたからパワハラを受けて精神的に参っていると訴え出た」と呼び出しを食らうのだ。
あるいは、「もっと裁量権を与えてほしい」と堂々と主張するZ世代に仕事を任せてみたところ、締め切り直前になって「やっぱりキャパオーバーで無理でした。先輩の手助けがない環境のせいです」と平然と他責にしてキレれてくる。なぜこうした「よかれと思ったマネジメント」が最悪のすれ違いを招くのだろうか。
結論から言えば、Z世代は「成長はしたいけど、努力はしたくない」という強烈な「自己矛盾」をはらんでいるからだ。成長には努力が不可欠だ。そのため、管理職は「成長したい」と言われれば、Z世代部下を思って、負荷をかけてやる。ところが、「負荷をかけるなんてハラスメントだ!」と怒り始める。
まず、Z世代が「成長」を求めているのは嘘ではない。終身雇用が崩壊し、「会社に依存せず個人のスキルで生き抜け」という自己責任論を刷り込まれて育った彼らからすれば、自分の市場価値が停滞することは、将来の「死」を意味するのだ。例えば、彼らは「ブラック企業」よりも「ゆるブラック企業」に入社することに恐怖している。「ゆるブラック企業」とは、別名パープル企業ともいい、残業がほぼなく、上司から厳しく叱られることもなく、ノルマへの強烈なプレッシャーもない、一見すると非常にホワイトで居心地の良い職場のことを指す。しかし、Z世代が「ゆるブラック企業」に入社すると、ぬるま湯のような環境に強烈な恐怖を覚え、早期離職を選択する。「この会社にいても成長できない」「自分の市場価値が上がらず、将来いざという時に転職できなくなる」という焦燥感に駆られるのである。
ここまでは、彼らの危機意識として理解できる。成長意欲があって素晴らしいじゃないかと称賛したくなるかもしれない。だが、彼らの本当の厄介さはここからだ。「もっと成長できる環境を!」と自ら望み、厳しく鍛えてくれる会社や部署に異動や転職をしたとする。しかしその直後、彼らは手のひらを返したように絶望し、「残業は嫌だ!」「こんなにきつい指導をするなんてハラスメントだ!」と会社を糾弾し始める。
このような両極端な不満はデータにも表れている。リクルートワークス研究所の調査では、職場環境の改善が進む中で、約36%の新入社員が「職場がゆるい」と感じており、これが成長実感の欠如やキャリア不安につながっている。「このままの仕事では成長できない」と回答する割合が、ゆるいと感じる層で62.6%に達し、離職意向も高まる傾向がある。一方で、リクルートマネジメントソリューションズの調査では、新人・若手社員の退職理由として「労働環境・条件がよくない(労働時間、休日のとりやすさなど)」が25.0%で最多、「職場の人間関係がよくない、合わない」が14.5%と上位を占めている。また、離職を想起した理由でも「仕事にやりがい・意義を感じない」(27.0%)が目立つ。つまり、若手の一部は「仕事の負荷が低く、スキル習得の機会が少ないため成長できない」と感じて離職を考える一方で、別の一部は「労働時間が長く、厳しい指導や人間関係のストレスが大きい」と感じて不満を抱いている。つまり「成長したい。でも会社は僕にやさしくすべきだ」ということである。