「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」
指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、書籍『Z世代を甘やかすな』の著者黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。
1990年代半ばから2010年代序盤に生まれたZ世代の一部は、おそろしいことに三十代前半に突入している。管理職側は「そろそろこいつにも育成やらせないとな」と、しぶしぶながら新入社員のOJTを任せる。「コスパ、タイパばかりいっている彼らが管理職なんて務まるのか」と思うかもしれないが、人間は誰しも必ず年を取るので、いずれは彼らもマネジメント側に立つ日がやってくる。
隣同士の席に座り、指導しているらしいZ世代社員のセリフに耳を澄ませるとこうだ。「このマニュアルはタイパ悪いから、省略していいよ」「この会社の人、みんな考え古いから、飲み会とか無視してね」「怒られた? それは上司が悪くない?」好き勝手にタイパ・コスパ・他責思考に満ちた指導をしているのだ。それに対して無垢な新入社員はうんうんと頷いている。このようにして悪しきZ世代的価値観が受け継がれるのか……と、管理職層は気が遠くなる思いである。
しかし、管理職が危機感を覚え、Z世代社員を呼び出し「新入社員の〇〇くんはどう?」と聞いたとする。するとZ世代社員は「いやー使えないですねー」等と上から目線である。赤ちゃんは赤ちゃんを育てられない。体は大人でも、叱られる・否定されるという負荷への耐性が育っていなければ、精神状態は赤ちゃんのままだ。育っていない者が、他人をきちんと育てられるわけがない。
実際問題、新入社員もそれほど優秀というわけではなさそうだ。しかし、皮肉なことに、Z世代社員は彼らを叱れない。なぜなら、指導で「叱る」という選択肢を取れば、自分がしてきたのと同様に、パワハラ加害者化されるリスクを負うのだ。彼らは若手時代にこの武器の使い方を熟知している。自分が使っていた武器が、自分に向けられることを彼ら自身がよく理解している。
結果、Z世代社員は新卒社員を叱れず、指摘もできず、摩擦を避けてすべて自分で巻き取ることになる。Z世代社員が将来管理職になるとしたら、プレイングマネージャー一択であろう。皮肉にも、彼らが若手時代に構築を後押しした「腫れ物扱いの制度」というブーメランが、そのまま彼ら自身の管理職人生を蝕むことになる。