ちなみに、Z世代社員にとっての後輩・部下となるのはα世代と呼ばれる若者たちだ。彼らは2010年代以降生まれで、生成AIをネイティブに使いこなす世代である。生成AIが学生時代から存在していた彼らは「タイパ」「コスパ」的価値観をZ世代よりも加速させているだろう。
もちろん、AIはこれからも進化していくので、AIが代替する業務範囲は格段に広がるだろう。人間がやるよりAIがやる方がコスパがいい仕事は増える。だが、それでも属人性の高い仕事、社として意思決定をするべき局面では人間が責任を負う場面はゼロにはならない。だが、そうした「AIと人間の仕事の範囲」というグラデーションを彼らが判断する力があるかは疑問だ。Z世代が将来管理職になった時、彼らはα世代部下に「それ、AIにやらせた方が早いですよね」と言い放つ未来は想像に難くない。
ただし、この先の展開を断定するのは時期尚早だ。α世代がZ世代よりさらに打たれ弱くなるのか、それとも豪州のSNS年齢制限のような規制強化やZ世代自身の子育て世代としての反動(自分の子には同じ轍を踏ませたくないという意図的な介入)によって逆方向に振れるのか、現時点で信頼できるデータは存在しない。
実際、筆者のクラスメイトでも「早々にスマホを子供に与えている親」と「徹底してスマホを忌避する親」は両極端と言えるほどくっきり分かれている。医師など高学歴・高所得層の家庭ほど、意図的にデジタル接触を遅らせ、対面でのスポーツや野外活動に時間を投資する傾向が見える一方、別の家庭ではすでにスマホ依存の兆候が見られる子供もいる。
医師や経営者の子供がクラスメイトにいるが、その子達はスマホを一切持たず、テニスやサッカー、習字などを習ったり、長期休みは野外活動に参加したりと脱デジタル生活をしている。
一方で、すでにスマホ依存症の兆しが出ており、数秒のスキマ時間があればすぐにTikTokを開いて動画を見始める子もいる。両者は決定的に大きな差になるだろう。
無論これは限られた観察に過ぎないが、教育投資力の差がそのままデジタル環境の差になり、α世代内部の格差を今まで以上に拡大させる可能性は高い。
確実に言えるのは、α世代はZ世代のように均質な一つの塊としては現れないということだ。
我々管理職世代が退職したあと、いったい何が起こるのか。「タイパ」「コスパ」「他責」「なんでもハラスメント」を武器にのうのうと暮らしてきたZ世代はいずれ管理職の席に座る。そして新入社員として「生成AIネイティブ」「スマホ依存症」のα世代が入ってくる。「タイパ」「コスパ」の価値観ではα世代に大きく後れを取り、一方で「ハラスメント」と言われるのを恐れているZ世代は叱ることもできず、α世代に「タイパ悪いですよね」と嘲笑されながらプレイングマネージャーの道を歩むしかない。今、我々管理職が働いている状況より数段厳しいだろう。
組織のためを思うのであれば、今後取るべき対策は、「育成」という業務の期待値を強制的に引き上げる制度設計だ。具体的には、育成の成果を管理職の評価・報酬に直接連動させ、「教えない」という選択肢の期待値を下げること。加えて、指摘・指導の基準を客観的な言動規定として明文化し、指導する側が「パワハラと言われるリスク」を過度に恐れず行動できる免責ラインを制度として用意することだ。
優しい管理職が増えているのではない。機能不全を起こした管理職が、優しさという言葉で正当化されているだけである。
本連載をベースに、実例とデータを増量し加筆修正したビジネス書『Z世代を甘やかすな』が発売! Amazonで今すぐチェックする