真中流マネジメント

ルーキーもベテランも関係ない
大前提は「チームの勝利」のための選手起用

2016.06.24 公式 真中流マネジメント 第7回

起用を考える時点で試合はすでにはじまっている

チームの投打のバランスや、選手の能力を公平に見て
「勝利」にもっとも近づくための起用法を考える

前回は、選手の気持ちやモチベーションをいかにマネジメントするかということについてのお話をさせていただきました。今回は、それら選手の状態をくみ取ったうえで、どのように選手を起用するのか、という起用法についての話を中心にしていきます。
野球は投手を除くと8人の選手が試合に出ることができます。その中には、レギュラーとして試合に出続ける立場の選手がいたり、相手やチーム状況によって出たり出なかったりする選手がいたり、ルーキー、ベテラン、さまざまな立場の選手がいます。そうした選手たちの起用法を考えるうえで、常に私の頭の中に大前提としてあるのは、「チームの勝利」です。

例えば、鳴り物入りで入団してきたルーキーがいるとします。「育成」という面から見た一つの考え方として、シーズン早々に一軍に上げて試合に起用することで成長させていくというプランは有りといえば有りです。
ただ、そういった采配はひとえにチーム状況によって変わってきます。
「育成」の名の下に有望なルーキーを起用したはいいけれど、それでチームが勝ち星を逃すようなことになっては意味がありません。ですから、チームの投打のバランスや、選手全員のコンディション・能力を公平に見て、どのポジションに誰を使えば「勝利」にもっとも近づけるか、その点を決して忘れないようにしています。

ルーキーでもベテランでも、勝利に貢献できる選手を使う

「チームの勝利」と「選手の育成」という選択があったとしたら
何の迷いもなく「チームの勝利」を選ぶのがプロの世界

ただし、先述したように、チーム状況によっては、ルーキーを起用しながら育てていくということが可能なケースもあります。
例えば、宮本慎也がルーキーとして一軍に入ってきたばかりの頃、当時のヤクルトは古田敦也はじめ、バッティングのよい選手が揃っていました。ですから、多少バッティングは期待できなくても守備のセンスの高い宮本を、ショートで優先して使うことができました。宮本が打てなくてもある程度チームでカバーできるという算段が立ったんですね。
反対に、入団当初のチーム状況がバッティングの弱いチームだったとしたら、もっと打てるショートが守っていたかもしれません。とはいえ努力家の宮本ですから、たとえ状況が違ったとしてもそのうちレギュラーになり、常時3割を打てる選手として2000本安打も達成していたことでしょうね。

要するに、ある程度の失敗は大目に見て、それも経験と割り切って育成の方向に舵を切れるかどうかは、周りの選手がその失敗をカバーできるだけの力があるかどうかにかかっています。
少なくとも昨年のヤクルトも、今年のヤクルトにしても、それだけの余力のあるチーム状況ではありませんでしたから、そうした大胆な起用はなかなか難しいものがありました。

能力は既に一軍のレベルに達していたとしても、シーズンを通してレギュラーでいるにはまだちょっと力不足なところがあると判断すれば、一軍でベンチを温めるだけよりも、二軍で多くの試合に出て経験を積んでもらったほうがいい、と考えます。その場合、なぜ二軍に行くのかという意図を明確に伝え、選手のモチベーションを維持するような工夫をします。
チームの勝利と選手の育成という選択があったとしたら、何の迷いもなくチームの勝利を選びます。ルーキーであってもベテランであっても、勝利に貢献できる選手を使う。ここは変わりません。「ルーキーだから」という期待値を込めて多少大目に見たり、我慢して使い続けたりというのは、そもそもの実力があってこその話です。まずは勝利。ここはブレちゃいけません。

勝つために最善のレギュラーを選び、最善の戦略を立てる

選手全員が勝利を最優先に考えられるチーム作りが不可欠
勝つという目的が決まっていれば、起用にも迷うことはない

「勝つため」という点においていえば、ベテラン選手の起用法についても同じことが言えます。
ベテランというのは、よい方にも悪い方にもチームへの影響力を持っています。長年第一線でやってきた選手ですし、ましてやそのチームの生え抜きとして貢献してきた選手ともなれば、自らが衰えてきていることや若手にポジションを譲っていく過程を受け入れることは簡単ではありません。
ある程度の歳になり、代打やリリーフとしての役割が増えてくる。それを面白くないと感じる気持ちは誰にだってあるものです。私が現役時代にも、同じチームのベテラン選手が「なんでこんな場面で俺が代打なんだよ」みたいなことを言っていたことがありました。
一番よくないのは、そんな風にチームにとって「扱いづらいベテラン」になってしまうことです。それではチームのムードが非常に悪くなってしまいます。

では、そうならないためにはどうしたらいいか。
実は矛盾するようですが、私の場合、ベテラン選手相手に、チームのためにムードをよくしてくれとは言いません。選手は最後まで自分のプレーに集中してほしいですので、わざわざ、「お前が引っ張っていってくれ」なんてことも言いません。そういうリーダーや中心人物というのは、きっと自然にできていくものだと私は思っています。

私自身の話になりますが、私も晩年は代打としてベンチにいることが少なくありませんでした。もちろん、起用にイライラするときもありました。でも、あるタイミングから自分のことを考えるより、チームの勝利を考えるようになったんです。選手目線から首脳陣目線になるという感覚です。そうなると、どんな場面で起用されようが万全の準備をして試合に入っていくことができるようになりました。

つまり大切なのは、チームがいま勝利を優先して動いているのだと選手一人ひとりが自覚できるかどうかだと思います。それを受け入れるのが早い選手ほど、チームの中での存在感や重要度が上がっていくのでないでしょうか。

だからこそ私は、監督としてやはり「チームが勝つこと」を大前提に、そのときの最善のレギュラー、最善の戦略を立てるようにしています。そのためには、ベテラン選手に対して時に厳しい判断を下すこともあるでしょう。でもそこでブレではいけないと思います。首脳陣が一貫して「チームが勝つ」ための起用を実行していかなくては、選手たちにその気持ちを浸透させるのもきっと難しいことでしょう。

幸い、今のヤクルトには起用について不平不満をもらすベテランはいません。おそらくそれは、大前提にある「チームの勝利」を選手皆で共有できているからではないかなと思います。
勝つという目的が決まっていれば、実はあまり迷うことはないのです。

取材協力:高森勇旗

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プロフィール

真中満
真中満

1971年栃木県大田原市出身、宇都宮学園高等学校を経て日本大学卒業後1992年にドラフト3位で東京ヤクルトスワローズに入団。
2001年は打率3割を超えリーグ優勝、日本一に貢献。2008年現役を引退。
2015年東京ヤクルトスワローズ監督就任1年目にして2年連続最下位だったチームをセ・リーグ優勝に導く。
2017年シーズン最終戦をもって監督を退任。

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