ビジネス書業界の裏話

ベストセラーの光と影

2016.10.13 公式 ビジネス書業界の裏話 第17回
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ベストセラーとはどういうものか

作家にとっても、出版社にとっても、ベストセラーは目指すべき到達点である。
ベストセラー作家となれば、印税もかなりの金額となるし、作家として一気にブレイクできる。いきなり有名人となり、複数の出版社から次回作のオファーが次々と来るようになる。
ベストセラーは、作家にとっては夢といえるかもしれない。

ただし、到底かなわぬ夢というわけではない。
出版社にとってもベストセラーは福音である。ベストセラーが1冊あれば,資金繰りに余裕が生まれ、経営的にも楽になる。
業界にとっても、ベストセラーは多いほうがよい。
ベストセラーによって書店の売上も上がるし、当然、取次ぎ(本の卸し業者)も潤う。印刷・製本会社にとっても恵みの雨である。
そういう万事に喜ばしいように見えるベストセラーだが、実際のところ、どれくらい本が売れればベストセラーと呼ばれることになるのだろうか。

我々は昔、5万部を越えればベストセラーといっていた。
それは今日でも変わらないと思う。
しかし、世間の人にとってベストセラーとは、書店に本が山積みとなっていて、新聞、テレビで毎日のように話題になる、そういうイメージではないだろうか。
そういう状況をつくり出すには、5万部では足りない。だれでも必ず目にするような「目立つベストセラー」となるのは、やはり20万部を超えてからだろう。
5万部でも十分に売れている(ベストセラー)本といえるが、世間のだれもが知っているというレベルではない。5万部の本は十分に業界人の注目を集めるものの、案外、世間では目立たないものなのである。
私見ではあるが、ベストセラーによって作家に起こる現象を部数ごとに並べてみると、次のようになる。

  • 2万部超…担当編集者から賞賛される。
  • 5万部超…編集部内でも扱いが手厚くなる。
  • 10万部超…編集部のみならず出版社全体に認知された作家となる。
  • 20万部超…出版社に顔を出すと中小であれば社長が、大手であれば取締役が挨拶に出てくる。世間もベストセラー作家と認知し始める。
  • 50万部超…ほぼ時の人となる。
  • 100万部超…もはやムーブメントである。

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プロフィール

ミスターX
ミスターX

ビジネス雑誌出版社、および大手ビジネス書出版社での編集者を経て、現在はフリーの出版プロデューサー。出版社在職中の25年間で500人以上の新人作家を発掘し、800人を超える企業経営者と人脈をつくった実績を持つ。発掘した新人作家のうち、デビュー作が5万部を超えた著者は30人以上、10万部を超えた著者は10人以上、そのほかにも発掘した多くの著者が、現在でもビジネス書籍の第一線で活躍中である。
ビジネス書出版界の全盛期となった時代から現在に至るまで、長くビジネス書づくりに携わってきた経験から、「ビジネス書とは不変の法則を、その時代時代の衣装でくるんで表現するもの」という鉄則が身に染みている。
出版プロデューサーとして独立後は、ビジネス書以外にもジャンルを広げ文芸書、学習参考書を除く多種多様な分野で書籍の出版を手がけ、新人作家のデビュー作、過去に出版実績のある作家の再デビュー作などをプロデュースしている。
また独立後、数10社の大手・中堅出版社からの仕事の依頼を受ける過程で、各社で微妙に異なる企画オーソライズのプロセスや制作スタイル、営業手法などに触れ、改めて出版界の奥の深さを知る。そして、それとともに作家と出版社の相性を考慮したプロデュースを心がけるようになった経緯も。
出版プロデューサーとしての企画の実現率は3割を超え、重版率に至っては5割をキープしているという、伝説のビジネス書編集者である。

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