小川流2018燕改革!

選手と指導者たちとの良好な関係、
指揮官が理想とするあり方とは?

2018.12.14 公式 小川流2018燕改革! 第18回

選手が提出したレポートを通じて、
コーチ陣の指導力強化を目指す

――実際、選手たちも真剣にレポートを書いていたと、前回伺いました。そうなると、首脳陣も真剣に読むし、それにより緊密なコミュニケーション構築に役立ちそうですね。

小川 もちろんです。コーチたちには、「自分の成功体験を押しつけることのないように」と伝えてあります。そのコーチにとっての「最適な指導」が、選手にとっての「最適」かどうかは、わかりません。身体のつくりも、考え方も違うと、人によって「最適」は変わってきます。だからこそ、コーチたちには、選手の考えをきちんと理解し、その選手に合った「最適」を見つけてほしいし、コーチ自身も「きちんと伝える」ということを意識しなければならなくなります。

――そうなると、選手たちだけでなく、コーチ陣の「伝達力」「コミュニケーション力」が求められるわけですね。

小川 そうですね。コーチにとってはコミュニケーションの勉強になるし、選手の考えていることを直接知ることで、今後の指導の引き出しにもなると思うんです。さっきも言ったように、コーチというのはどうしても自分自身の現役時代の経験や体験をもとに指導します。でも、それだけではなく、今、目の前にいる選手たちの迷いや悩みをきちんと把握し、その対策を講じることで、コーチにとっても勉強になり、自身の引き出しになると考えました。

――自身の「経験則」だけでは、もはやコーチも生き残れない時代ですからね。

小川 たとえば、高校を卒業したばかりの18歳、19歳の選手たちと、40代、50代、60代のコーチ陣は良好な関係性を築いていかなければならないんです。その際に「経験則」だけを頼りにしていては、いくらいい指導であっても、選手たちの胸には響かない。確かに年齢も実績も、指導者の方が上かもしれないけれど、だからと言って、それだけで「だからコーチは偉いんだ」となってはいけないと思うんです。それよりも、個別ミーティングを通じて、選手たちの本当の姿、現状を知るところから本当の指導が始まるのだと思います。

――これは野球に限ったことだけではなく、ついつい先輩、年長者としては「こんなこともできないのか?」とか、「オレの若い頃は~」と、後輩や年少者を子ども扱いしがちになりますからね。

小川 まさに、それはコーチたちにも伝えました。たとえば、選手たちの中にはきちんと文章が書けない者もいたし、誤字や脱字がたくさんある者もいました。でも、そこで「お前、こんな文章もまともに書けないのか?」と指摘するのではなく、「今の選手たちの現状はこのレベルなんだ」と理解した上で、指導を始められればと考えました。

ご感想はこちら

プロフィール

小川淳司
小川淳司

千葉県習志野市出身。習志野高校卒業後、中央大学に入学。1981年ドラフト4位でヤクルトに入団。1992年現役を引退すると、球団スカウトやコーチなどを経て、2010年シーズン途中に監督に就任。2014年シーズンまでチームを率いる。退任後は、2017年シーズンまでシニアディレクターを務め、2018年から再び監督となる。

出版をご希望の方へ

公式連載