人を育てるコツ

世代間におけるモチベーションの違い

2016.12.15 公式 人を育てるコツ 第2回

Getty Images

上司の方が時代に合わせる意識を持つ

前述のように、新入社員であるOさんには、Oさん世代なりのモチベーションの維持の仕方がある。そう考えた私は、課長だからとこちらの感性を一方的にスタンダードなものだとは決めつけないようにしました。そしてOさんには、「同じ会社で働く一人の人間として接するべきではないか」と、彼に対する視点を変えてみたのです。

まず、新人のOさんに、私が疑問に思うことを、1つ1つ聞いてみることにしました。そうすると、意外な答えが返ってきたのです。

電話を取ることも、片付けをすることも、宅急便の荷物を受け取ることも、私から指示されていないし、先輩からも聞いていないから、やっていいかどうか分からないとのことなのです。お客様先の営業訪問に関しても、どうやって営業したらいいか分からないから、悩んでいるということでした。Oさんは、少しでも頑張って仕事を覚えよう、早く上司や先輩に認められるようになりたいという気持ちは持っていました。しかし、仕事をどのようにこなしたらいいのか、理解できていなかったのです。

そこでまずは、1つずつではありますが、課として彼にやって欲しい業務を、こと細かに伝えることにしました。「自分で気づいて行動して欲しい」とどこかで思いながらも、1つひとつ教えることを続けたのです。すると、やっとOさんは自分自身で理解できたようで、少しずつ自主的に動くようになりました。

その時私が意識したことは、昇級による給料アップやボーナス査定の話しをすることは最小限にとどめ、「責任のある仕事を覚えることがOさんの今後の成長に役立つ」ということ、「Oさんの仕事のおかげで、会社が社会の役に立っていること」など、Oさんが関わることによって生まれる社会的な存在意義を説明しました。つまり、モノやお金ではない、別のモチベーションになりそうな言葉を選んで伝えたのです。

するとOさんは、私の説明に納得してくれた様子で、徐々に仕事に対する姿勢や意欲も変化してきました。その後も私は、Oさんのモチベーションが上がるような言葉をかけたり、影ながら支援することで彼のことをバックアップしていきました。

Oさんは仕事に関しての意義や意味を自分自身で納得できると、その後の動きは早かったのです。彼は、会社や上司に期待され、責任のある仕事を任されたことで自信がつき、仕事を積極的にこなすようになっていきました。Oさんが戦力になったおかげで営業所の成績にも貢献してくれ、会社にも必要とされる人材になってくれたのです。

今の若者は向上心がない、出世欲がない、やる気がない、指示待ち姿勢だなど、世間ではいろいろとネガティブなことが言われています。実際に私も、課長として若者の部下と関わったとき、最初はそのように感じていました。

しかし本当は世代間のギャップを理解し、「一人の人間として接すること」がとても大切なのです。若者の本音を話してもらう機会を作ること、会社や組織の都合ではなく、仕事を通して貢献する社会的な存在価値、存在意義などを示してあげること、少しでも責任のある仕事を任せることによって当事者意識が芽生え、彼らは成長していくという一例を、Oさんを通じて私は感じることができました。

時代は常に変わっていきますが、やはり変わらず大切なことは「新人だから○○」という旧態依然とした考え方ではなく、たとえ新人であっても「一人の人間として接し、責任ある仕事を任せること」が重要なのだと思います。人の自発性に火をつけるためには、その人を新人ではなく「一人の人間」として認め、その人を信じて任せ、そこに寄り添う形で上司がサポートする。こうしたスタイルで仕事をするのが大切なことだと、私は思っています。

次回に続く。


大岩俊之 新刊『格差社会を生き延びる〝読書〟という最強の武器』好評発売中

ご感想はこちら

プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

商談が楽しくなる! モノが売れる! 営業マンの自己心理改革

商談が楽しくなる! モノが売れる! 営業マンの自己心理改革

「頑張っているのに成績が上がらない」「実は人と話すのが苦手」「営業の仕事が自分に合っている気がしない……」。そんな思いを抱えている営業マンは意外...
口下手でもトップになれる営業術

口下手でもトップになれる営業術

アルファポリスビジネスの人気Web連載「入社1年目の営業スキル」を書籍化。「上手く話せない」「説得できない」「物が売れない」など、自身の営業スキ...
格差社会を生き延びる〝読書〟という最強の武器

格差社会を生き延びる〝読書〟という最強の武器

現代社会で本当に必要とされる人間になるためには、実は「読書」が不可欠。というのも、読書をすることで「知識」と「教養」を得ることができ、これが昨今...
出版をご希望の方へ

公式連載