人を育てるコツ

自分の意図が、部下に全く伝わらない場合

2017.01.19 公式 人を育てるコツ 第4回
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部下がきちんと理解できる指示をする

こんにちは。ロールジョブの大岩俊之です。私にはよく、企業の管理職クラスを対象にした、コミュニケーション研修をする機会があります。ここでは、「聴くスキル」「質問するスキル」などのコミュニケーションの基本も教えますが、管理職の方が、普段、部下とどのようなコミュニケーションをとっているのかを振り返ってもらい、その部分を見つめ直すことが重要なテーマの1つになっています。

たとえば、上司が部下の話を聞く態度、姿勢、目線、話す内容は「上から目線」でないか、分かりやすく伝える工夫をしているか、パソコンで作業しながら話しを聞いていないかなど、会話の内容だけでなく、会話の内容とは直接関係ない「部下との向き合い方」の部分まで、コミュニケーションを追求していきます。

先日の研修で、受講生の方から、このような質問がありました。「私は、部下にきちんと、私の指示を伝えています。それなのに、部下は私の指示通り動いてくれないのです。これは、きちんと指示を聞いていない部下が悪いと思うのですが、間違っていますか?」とのことでした。

上司は部下に指示したつもりでも、部下にはきちんと伝わっていないので、結果的に指示通りになっていないということは、よく起こります。会社で、上司と部下のコミュニケーションは、いろいろな状況が想定できるので、その時々によって、どちらにミスがあるのかは一概にはいえませんが、1つだけ言えることがあります。

「コミュニケーションは、結果がすべて!」だと言うことです。どんなに分かりやすく相手に伝えたとしても、相手に伝わっていなければ、伝え方が悪いのです。逆に、さほど丁寧に伝えていなかったとしても、相手にきちんと伝わっていれば、コミュニケーションとしては、成立しているのです。

その受講生の話を聞きながら、私は自分が会社員で課長職であったときの部下であった、Gさんという社員のことを思い出しました。

Gさんは、他の営業所から移動してきた社員で、在社年数も10年と長い社員でした。Gさんには、必然的にリーダー的な仕事も要求されることから、私が直接彼の面倒をみていました。

Gさんは社歴も10年あり、さほど丁寧に教えなくても製品の知識があるため、物事は理解できます。私は、「もし分からないことがあったら、Gさんから聞きに来るだろうし、細かく言わなくても内容を理解できる」と考え、仕事のポイントだけを伝えていました。

しかし、どうやら、その「ポイントだけを伝えていた私のやり方」がよくなかったのか、だんだんと、私が望む仕事と、Gさんがこなす仕事にズレが生じてきたのです。

1つの例ですが、このようなことがありました。ある時、私の考えている書類の提出期日と、Gさんが考えている提出期日に相違がありました。課長である私は、月末に、営業課員全員の売上げデータをまとめて提出します。ですが、その前に、営業部のルールとして、その月の売上げ予測データを、毎月20日の10時ころまでに、部長に提出する必要がありました。

私はGさんに、「今月の20日の朝一に売上げ予測データを部長に提出するので、それまでに、営業課員に確認して、データを集めておいて欲しい」と伝えたのです。このデータは、どんなに遅くなったとしても、19日の夕方までには欲しい資料でした。

私は、19日の午前中くらいに、営業課員全員から確認したデータを、Gさんから提出してもらえるとばかり思っていました。ですが、Gさんは、19日になってから、営業課員に、売上げ予測データを確認し始めたのです。営業課員は、基本的に外出しており、会社に戻ることが遅くなることが多々あります。時には、朝から外出の予定が入っていることもあります。

共有のスケジュール管理を見れば、営業課員の予定は分かりますが、突発的な予定により、急遽変更になってしまうことくらいは分かっていたはずです。

案の定Gさんの私への報告は、19日の夕方には、間に合いませんでした。私は、感情的になって、Gさんに強い口調で確認しました。Gさんは、「AくんとBくんは、営業で出かけているので、戻らないと分からないようです。Cくんは、今日は戻らず、明日は直行のようで、確認できませんでした」と、私に報告したのです。

この時点で私は、自分の指示について2つの失敗に気付きました。1つは、私が正確な提出期限をGさんに伝えていなかったこと。そしてもう1つは、私の意図をきちんと把握できるようにGさんに説明していなかったことです。

そこで私は、冷静になってこう考えました。

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プロフィール

大岩俊之
大岩俊之

理系出身で、最新のエレクトロニクスを愛する元営業マン。
大学卒業後、電子部品メーカー、半導体商社など4社で法人営業を経験。いずれの会社でも、必ず前年比150%以上の営業数字を達成。200人中1位の売上実績を持つ。
独立起業を目指すなか、「成功者はみな読書家」というフレーズを見つけ、年間300冊以上の本を読むようになる。独立起業後、読書法やマインドマップ、記憶術などの能力開発セミナー講師をしながら、法人営業、営業同行、コミュニケーション、コーチングなどの研修講師として7,000人以上に指導してきた実績を持つ。年間200日以上登壇する人気講師として活躍している。
主な著書に、『格差社会を生き延びる“読書”という最大の武器』(アルファポリス)、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)、『1年目からうまくいく! セミナー講師超入門』(実務教育出版)などがある。

著書

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