こんな仕事絶対イヤだ!

組合員はつらいよ――葬式通報人

2017.11.29 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第80回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

葬儀の手配は全ておまかせ

『葬式通報人』は、14世紀の頃からフランスに存在していた職業である。別名は“死者の鐘ふり”。なんだか、ゲームの必殺技みたいだ。この職業が登場した当初は、死者が出たことを街頭に立って通知し、死者が墓に安置されるまで鐘を鳴らし続けることのみが仕事だった。しかし、時代を経るごとに彼らの取り扱い業務は増えていった。15世紀には遺族に葬儀のよろずマナーを教えるガイド役を兼ねるようになり、16世紀に入ると、葬儀用品の販売までこなすようになった。国王によって葬儀用品の販売権を独占することが許されていたため、むやみに新参業者が乱入してくることもなかった。

だが、これをもってしてオイシイ職業と言い切ることはできない。葬式通報人になるには嫡出子(ちゃくしゅつし)でカトリック信者、さらに品行方正なマジメ君でなければならなかった。執り行なえる葬儀は、教会がやらないような規模の小さいものに限られていたし、受け取った葬儀代の75%は組合に納めるという義務があった。

そうは言っても、たまには貴族や大商人の葬儀を請け負うこともあった。ここで登場したのが、組合が全力を持って手抜き発注した大型霊柩車である。手抜きと言われるだけあって、この霊柩車の耐久力は瀕死のチワワ以下であった。走っている間に壊れる可能性があるため、密かに車大工と馬具職人が乗り込んでいたほどだから。使用機会が少ないものに金はかけられなかったのだろうが、いくらなんでもモロ過ぎる。もし坂道でクラッシュしようものなら、棺桶が飛び出してボブスレーみたいになってしまう。故人の権勢を偲ばせる荘厳な葬列が、一転してドリフ状態になる危険性すら内包していたのである。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

著書

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