こんな仕事絶対イヤだ!

歯ブラシや石鹸の意外な正体――骨拾い

2018.02.04 公式 こんな仕事絶対イヤだ! 第99回

巷では相も変わらず企業の労働環境に関するニュースが絶えませんが、歴史を紐解いてみれば、ブラックな職業は大昔から存在していました。そこで本連載では、古代・中世ヨーロッパや日本の江戸時代にまで遡り、洋の東西を問わず実在した超ブラックな驚くべき職業の数々を紹介していきます。あなた達は、本当のブラック職業を知らない……

拾った骨を加工業者に売る

今ではほとんどゴミにしかならないような物でも、時と場所によっては価値が見出されることがある。ヴィクトリア朝期のイギリスにおける骨が、そのひとつだ。『骨拾い』と呼ばれた者たちが土中で白骨化した動物の死骸を掘り返し、手頃な骨を加工業者に売り渡したのだ。この仕事は、職にあぶれた工夫や農閑期の農夫が飢えをしのぐためにやる類のもので、社会的地位はもちろん、収入も最低クラスだった。本業の掛け持ちのバイトという感覚がせいぜいのところだろう。

集められた骨は、歯ブラシの柄や赤ん坊のおしゃぶり、ナイフの柄、櫛などに使用された。歯ブラシとか、口の中に入れるものだとダーティー加減が若干気になるところだが、加工業者の人がちゃんと洗ってくれているはずなので、たぶん大丈夫だ。そう思いたい。おしゃぶりは持ち手の部分に加工されていたものと思われる。内側に使用してしまうのは、いくらなんでも乳首硬すぎでしょ、という話である。さらに、どうしても加工しようのないクズ骨は、鍋で煮て脂分を分離し、石鹸の原料にした。いよいよ“出がらし”となった骨は、細かく砕かれて肥料となり、その使命を全うした。まさに、骨の髄までしゃぶり尽くす勢いである。

それにしても気になるのは、骨の正体である。捨てられている牛や豚の骨など、見つけられる数はたかが知れている。ましてや、野垂れ死んでいる動物の死体なんて探して見つかるものでもない。土に埋まっている場所がはっきり分かっていて、骨の太さ、本数とも手頃な生き物といえば……? 考えると不気味だが、“それ”を掘り返してしまうのが最も効率的なはずである。

(illustration:斉藤剛史)


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プロフィール

清水謙太郎
清水謙太郎

1981年3月、東京都生まれ。成蹊大学卒業後にパソコン雑誌の編集を手がける。また、フリーライターとして文房具、自転車などの書籍のライティングや秋葉原のショップ取材等もこなし、多岐に渡る分野でマルチな才能を発揮している。

著書

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金持ちの道楽として庭で飼われた「隠遁者」、貴族の吐いたゲロを素早く回収する...
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