「第二次トランプ大統領」に備え日本や世界ができること プーチン政権継続で波乱と混乱の時代か、それとも新しい<欧露民主同盟>か?

2024.02.18 Wedge ONLINE

 米国の最先端のロシア研究所でもわざわざパリから専門家を招いたのだ。 ハーバード大学もロシアの民主化に関心を持っていることを示している。

 教授の議論はこうだ。プーチン大統領は永遠でない。大統領がロシアの政治の舞台から去れば、今大統領の周辺にいる人々が権力を握る。しかし、大統領に近い側近たちは「プーチン2.0」になれるほどカリスマ性や人気がある者はいない。 

 その為、新指導部は個人というよりも集団になる可能性が高い。体制的にもプーチン型、即ち専制的で非民主的な集団支配の政権だ。 

 しかし、この体制では必ず大小の内紛が起きる。それはプーチン大統領が長年にわたり高官らが「互いを憎み、互いに不信感を抱く」ように仕組んで来たからだ。いずれビルの高層階からの墜落死、不可解な事故死、ベネズエラやアフリカへの出国が始まるだろう。 

 そして数カ月か数年後にはロシアでは「ペレストロイカのような事態」が再び起きる。ポスト・プーチンの大統領候補者の中には、突出して抜きんでた個人はいないので誰が優位に立っても、いずれは自分の力の限界を悟るだろう。

 そうすると何とかして自国民の支持を確保しようとする競争が始まる。強硬独裁の時代は終わり、彼ら新指導層にとっては今や国民の支持こそが権力強化への唯一の道筋になるのだ。 

 当然、経済面、つまり国民生活を改善したら得点になる。そのための最も簡単な道はロシア経済を束縛している西側の経済制裁を解除することだ。

 だから彼らは必ず西側諸国に手を差し伸ばしてくる。西側はこのような展開を想定してすぐさまロシアを受け入れ、前向きに対応できるように準備をしておくべきだ。

 以上がグリエフ教授の議論だが、明らかに教授はウクライナ戦の帰趨とは関係なしにロシアの将来を論じている。プーチン大統領は万が一にも自分の地位に異常が生じたら、国際刑事裁判所(ICC)への身柄引き渡し拒否を含め、自分の生存を絶対的に保障する為あらゆる暴力手段を使うはずだ。 

 しかし、その辺の仔細は議論されていない。グリエフ教授としては「現状ではそこを云々しても埒が明かない。しかし、大きな筋道としてはポスト・プーチンのロシアは西側に接近する可能性がある」と論じたいのだと推測する。 

日本も積極策で行くべきだ

 しかし、私見ではポスト・プーチンの到来が見え始めたら、日本を含めて西側は直ちにロシアとの接触を始めるべきだ。グリエフ教授の指摘する通りロシアが西側に経済制裁の停止を求めてくるのを待つというのも一つの手だ。しかし、西側は全体状況を判断し、自らのイニシアチブで経済制裁の廃止などを決めるべきだ。 

 要するに最初から欧米側はロシア国民に対して「真に友好的で平和的な協力をする用意がある」ことを示すべきだ。そうする方が「欧米は帝国ロシアを潰しにかかっている」というプーチン大統領の口癖になっているプロパガンダを覆すことに役立つ。 

 状況が許す限り、西側は最大至急で行動し、兎に角、あらゆる面で先手を果断に取り続けるべきだ。西側は広くロシア市民社会に呼びかけ、彼らを抱き込むべきである。

 ただちに多様で友好的な対話のチャネルを開設し、接触を拡大し、全ての可能性をロシア社会と十分に議論し、探求し、一緒になって実行に移すのだ。例えば欧州議会は最も適切な時期にロシア人社会全体に対して満腔の友情を示し、全面的な協力の意図を欧州社会の総意として決議することができる。  

 そうしなければ色々と面倒な事態が起きてくる危険がある。 核兵器の管理の問題もある。特に重要なことは広い国土全体がモスクワの指令の下で動くのかという深刻な問題がある。それに中国がどう出てくるかも考慮に入れておくべきだ。