【脱・人口減決定論】人手不足は少子高齢化のせいではない 真犯人はいったい誰なのか?

2024.02.28 Wedge ONLINE
(出所)総務省統計局「労働力調査」 (注)20-24歳人口の増加等は、5年前との差。 写真を拡大

 図2はこれらの値を示したものである。予想通り、20~24歳人口は97年以降減少している。一方、団塊世代の就業者は2012年以降急速に増加している。つまり、団塊世代の大量退職という状況にはならなかったのだ。

 この間、93~03年、09~10年は就職氷河期である。97年以降、若者人口は減少しているのに、就職状況は改善しなかった。ところが、10年からは、就職氷河期にはなっていない。

 図2には、65歳以上の人口の変化も示している。人口であれば、12年前後に60~64歳人口が増加し、その後急激に減少する。しかし、就業者数はそうではない。すなわち、人口構成変化で雇用状況を説明することはできないということだ。

では、社会構造変化によるのか?

 社会構造変化論は、非正規労働者の増加で賃金が上昇していないこと、高齢化に伴う医療介護での労働需要の増加や共働き化にともなう保育領域での労働需要の増加、情報通信業の雇用需要の増加が雇用増加の理由で、大規模緩和が理由ではないと主張する(上野剛志「異次元緩和の意義について考える-黒田日銀10年の振り返り」ニッセイ基礎研レポート、23年5月10日」)。

 図3で、雇用の全体と情報通信、医療・福祉(介護、保育を含む)について、13年4月の大規模緩和開始前の12年12月から、23年12月の就業者数(後方6カ月平均)の変化をみると、総数は6296万人から6773万人の477万人増加した。そのうち、同期間で情報通信は185万人から283万人に98万人増加、医療・福祉は713万人から909万人に196万人増加している。

 つまり、全体の増加477万人のうち、294万人(98+196)と全体の62%(294÷477)を説明しているように見える。しかし、図から明らかなように、情報通信、医療・福祉はトレンドとして伸びているだけであり、全体の雇用の伸びが異次元緩和の前後で上昇反転していることを説明できていない。

必要な人手不足対策

 雇用の改善は、人口減少による、人口動態の変化による、それに伴う社会構造の変化によるという議論を見てきたが、いずれも現実を説明していない。現在、叫ばれている人手不足は人口減少でも、少子高齢化でも、社会構造の変化によるものでもないということだ。

 経済学の観点から言えば、人手不足というものはあり得ない。人手不足の業界であれば、賃金が上がり、企業がその賃金上昇を吸収できなければ、販売価格が上がり、販売価格が上がれば需要が減って、それ以上人手集める必要がなくなって人手不足は解消するはずだからだ。人手不足が続いているということは、経営者や政治がそうした取り組みをしていないということが言える。

 そろそろ、人口減決定論は終わりにし、必要な手立てをしてもらいたいものだ。