日銀利上げでもなぜ「円安」のままなのか?アメリカ人は日本の「異次元緩和」終了をどう見ているのか?

2024.03.24 Wedge ONLINE

 日本銀行は、3月19日に金融政策決定会合を開催し、その結果を公表するとともに、植田和男総裁が会見を行って、緩和政策の終了を宣言した。黒田東彦前総裁が2013年に実施し、その後もずっと継続していた「異次元緩和」政策は、ここに終了した。

植田日銀の大規模緩和の終了は米国でどのように見られているのか(ロイター/アフロ)

 このニュース、米国での扱いは限定的だ。まず、あまりにも専門的すぎて、一般ニュースにはなじまないので、扱っているのは基本的に経済ニュースが中心だ。

 その報道内容だが、現時点ではあまり鋭い論評というのは見られない。まず、17年にわたって利上げがされなかったという歴史、そしてこの間のデフレ経済の問題などが回顧的に説明されるだけ、という記事が多い。

米国にとって日本は「別世界」で「興味深い」事例

 説明としては、とにかく少子高齢化に直面し、消費マインドが極端に落ち込んだ日本では、企業の設備投資も意欲が減退しており、これに対するカンフル剤として徹底的な緩和政策が取られたというストーリーだ。米国の場合、金融を引き締めて自国通貨を強くし、世界中からの投資を呼び込むというのが「タカ派の金融政策」だとされている。反対に、金利を下げ、市中に流動性を供給するのは「ハト派」とされる。

 安倍晋三政権が当時の日銀の黒田東彦総裁と共に実施した、「アベノミクス第一の矢」、つまり「異次元緩和」というのは、米国的な視点から見れば「極端なハト派政策」ということが言える。その意味で、極端なハト派の金融政策が13年から11年も継続し、それでもハイパーインフレになることなく、反対にデフレ圧力と拮抗しつつ、そのデフレを何とか沈静化させたというのは、クロウト的には「興味深い成功例」ということになる。

 米国の場合は、特に20年以降のコロナ禍の中で、トランプ政権もバイデン政権も、巨額の資金を市中にバラマキをして、サービス業などコロナ禍でダメージを受けた業種を救済したり、公共投資により経済を刺激し続けたりした。これに対して、コロナの収束後は、市中に資金がダブつく中で異常な景気の加熱が続く中、極端なインフレという副作用を伴っている。

 その意味で、日本経済というのは米国とは好対照という見方もある。極端な高齢化に直面し、消費マインドが冷え込む日本は、分厚い現役世代の人口が旺盛な消費を続ける米国から見ると、全く正反対ということも言えるだろう。その意味で、今回の日本の利上げのニュースとその背景にある日本経済の特徴というのは、一般的な米国人の視点からは「全くの別世界」ということにもなる。

日本株は「高リスク投資」

 もう一つは、投資先としての日本という視点での見方だ。米国の投資家の中には、日本株への関心は比較的高い。

 何よりも中国市場が不動産バブル崩壊の中で、非常に不安定となる中で、その代わりに比較的安定した日本への投資を強めるという動きがある。著名な投資家、ウォーレン・バフェットが日本の総合商社について、業界の専門知識を持って世界中の案件に投資を行う特殊なファンドだという特性を見抜き、その上では割安感があるとして投資を成功させたニュースは比較的良く知られている。

 こうした日本株への関心は、日本が中長期に成功しそうだという見方から来ているかと言うと、そうでもない。むしろ、株価の上下と、為替相場の上下が掛け算される中で、ボラティリティ(上下変動の可能性)が大きく取れることから、自分の資産ポートフォリオの中に「高リスク投資」として組み込むという動機が大きい。

 その意味では、米国の投資家からは、円安時に仕込んだ日本株を、この後にもしも円高になれば、ドル換算で大きな差益を伴って売却できるという思惑がある。もちろん、円高になれば日本株は下がるかもしれないが、その直前に、円は高くなってドル建て株価が膨張する瞬間があるはずで、そこで売って利益を確定しようというのである。