【筒香はなぜ、日本球界に復帰したのか?】MLBに立ちはだかる“契約の壁”、条項一つで変わる選手の戦い方

2024.04.19 Wedge ONLINE

 米大リーグ、ジャイアンツからフリーエージェント(FA)となっていた筒香嘉智外野手が古巣・DeNAベイスターズに復帰することが決まった。球団が16日、正式に発表した。

 筒香選手は2019年オフにメジャーに挑戦し、レイズへ移籍。思うような結果を残せず、近年はマイナーや独立リーグでのプレーが続いた。ドジャースの大谷翔平選手を筆頭に、大型契約を勝ち取る日本人選手がいる一方、今季からメッツに移籍したメジャー2年目の藤浪晋太郎投手、日本ハムからポスティングシステムでメジャー挑戦した上沢直之投手はマイナースタートとなった。

DeNAへの復帰により日本球界へ戻ってくる筒香選手。メジャーでの活躍に何が足りなかったのか?(USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 「実力社会」でもあるメジャーは、同時に「契約社会」でもある。実力次第で夢もビッグマネーも手にできる“アメリカン・ドリーム”が目前にあっても、すでに体現した成功者たちが好待遇での契約を勝ち取っており、そこに割って入ることは容易ではない。立ちはだかるのは「契約の厚い壁」だ。

厳しい「40人枠」

 筒香はオフにジャイアンツとマイナー契約を結び、今年のメジャーの春季キャンプには、招待選手として参加した。メジャーでは春季キャンプからオープン戦にかけ、2つの契約形態の選手たちが参加する。

 一つは「メジャー契約」の選手。もう一つは「マイナー契約の招待選手」である。大きな差があるのは、メジャーに詳しい読者ならご存じだろう。

 各球団がメジャー契約を結ぶことができるのは40人。そして、40人枠のうち、メジャーの公式戦に出場できるベンチ入りメンバーは26人だ。

 実績のある選手と契約交渉する場合、球団は当然、メジャー契約で契約する。このため、各球団はキャンプインの時点で、40人枠はほぼ埋まっている。球団としては、40人枠の中で、いかに勝てる選手を集めるかに手腕が問われる。その上で、いくつかの枠を若手や復活を期すベテランの選手らに残す。

 招待選手には、そもそも「メジャーのいす」は用意されていない。だからこそ、春のキャンプとオープン戦で残りわずかな「枠」をかけて争うが、あくまでマイナー契約の選手であり、キャンプ、オープン戦はふるいにかけられる場である。決して多くのチャンスはもらえず、メジャー契約を勝ち取るハードルは高い。

 筒香は、2月下旬に腰の張りを訴えたこともあり、マイナー降格を通告されるまでのオープン戦の打席は5試合10打席のみ。8打数1安打(2四球)、打率・125、2打点と結果を残せず、マイナーへの合流が通告された。

 筒香は契約に盛り込んだオプトアウト(契約破棄条項)を行使してチームを退団。FAとなって自由に日米の他球団と交渉できる状況にあり、DeNAへの復帰が決まった。

当初は「メジャー契約」で守られていた

 もしも、近年のようにアメリカでプレーしたいと考えたとすれば、移籍先が見つかってもメジャー契約は難しく、戦力などを考えて、少しでも昇格の可能性が高い球団と契約し、マイナーでプレーを続けるしかない。その上で、マイナーで成績を残し、メジャー契約の選手が不振で解雇されたり、負傷したりした場合に備えることになるが、実際には22年シーズンの途中からはメジャー昇格はかなっていなかった。

 一度、メジャー契約を結んだ選手は立場が強い。筒香自身も最初に所属したレイズでは、2年総額1200万ドル(約18億5000万円)のメジャー契約だった。

 ところが、1年目から期待通りの結果を残せず、レイズは2年目途中にある決断を下した。それが40人枠から外す「DFA(Designate for Assignment)」と呼ばれる手続きだ。