ハリウッドの衝撃、ワーナー・ブラザーズ買収合戦を“政治利用”するトランプの思惑とは?

2025.12.16 Wedge ONLINE

 ただ、よく見ると、これは単純な「正義」の話でもなさそうである。ではトランプの狙いはどこにあるのだろう。

パラマウントの敵対的買収にトランプの影

 この寡占を生む買収計画に反対したのは、活動家や議員だけではなかった。Netflixとの合意に臍をかんだパラマウント・スカイダンスのデヴィッド・エリソン最高経営責任者(CEO)もその一人である。彼の父親で、ソフトウエアの巨大会社オラクルの共同創業者であるラリー・エリソンがトランプ大統領に直接電話して、Netflixによる買収では、競争を阻害すると伝えたのである。

 ラリー・エリソンは、トランプ大統領の再選に向けて巨額の献金をした支持者である。困りごとがあって大統領に電話しても皆がつないでもらえるわけではなく、このエピソードからもホワイトハウスといかに太いつながりを持っているかがわかる。

 Netflixの合併に対する反対の声が広がる中、パラマウント・スカイダンスは、8日、一株30ドルという敵対的買収を実施するという形で名乗りを上げた。それはCNNなどのストリーミング以外の部分も含めて全体を買収しようというもので、パラマウント社の提案の方が、Netflixの買収案に比べて多くの現金がワーナー社の株主の手に渡ることになるものであった。

 パラマウント・スカイダンスは、ハリウッドの老舗の一つであるパラマウントと、デヴィッド・エリソンによって設立されたスカイダンス・メディアが、この夏に合併して誕生した企業である。この合併に際して、合併を連邦政府に認めさせるために、パラマウント傘下のCBSの番組で、トランプ大統領に批判的なスティーブン・コルベア氏が司会を務めていた人気トーク番組「ザ・レイト・ショー」の打ち切りを発表するなど、CBSテレビの保守化が進められた。デヴィッドの父親がトランプの有力支持者であることを考え合わせると、かなりトランプに影響力をもつ会社だということができる。

 トランプの影がちらつくのはそこだけではない。パラマウント社による買収に必要な巨額の資金の出所をみると、トランプの娘婿クシュナーの投資会社や、サウジアラビアやアラブ首長国連邦の政府系ファンドが名を連ねているのがわかる。

一番の関心はCNNの帰趨

 しかし、トランプがパラマウントの肩を持つのはそれだけの理由ではなさそうだ。なぜならトランプは、この件についてワーナー社の傘下にあるCNNについて言及するようになったからである。

 10日、ホワイトハウスで買収劇について質問されたトランプは、記者団に対し、この買収にCNNも含まれるべきだと答えたのである。Netflixの買収案には、CNNが含まれていない。トランプは、いかなる買収案にもCNNが含まれるべきであり、CNNが含まれないならば切り離して売却されるべきとまで述べた。

 また、CNNの経営陣は刷新されなければならないとも述べている。関係者によるとこれはパラマウント案の肩を持ったというよりも、Netflixが買収した場合でもCNNが分離されなければならないという、何が何でもCNNを切り離したいという意図の表れであった。

 トランプとCNNの間には確執の歴史がある。大統領一期目からトランプを厳しく追及し批判するCNNに対し、トランプが「フェイクニュース」と呼んで嫌ってきたことはよく知られている。一期目においてホワイトハウスでの記者会見でのアコスタ記者との騒動は有名だ。アコスタ記者がトランプの発言にかぶせる形で執拗に質問し、トランプが「もうたくさんだ」と述べているシーンや、トランプが「おまえは無礼なひどい人間だ」と言っているシーンなど枚挙にいとまがない。