ハメネイ師死亡、なぜトランプはイラン攻撃に踏み切ったのか?革命防衛隊は今後どう動くか…「戦争の大統領」になったトランプの未来とは

2026.03.02 Wedge ONLINE

 米国とイスラエルは2月28日、イラン攻撃に踏み切った。この攻撃でイランの最高指導者ハメネイ師が死亡した。

(AP/アフロ)

 反発したイランはイスラエルやペルシャ湾岸の米軍基地に弾道ミサイルで報復、戦火が拡大した。イランの実力組織である革命防衛隊は戦争の泥沼化を画策、同師の後継者として自分たちの思惑通りに動く「傀儡」指導者を据える公算が強まった。

教訓学んだハメネイ師

 今回の戦争の最大の問題は戦闘がいつまで続くのかだ。11月の中間選挙への悪影響を心配する米国のトランプ大統領はイランの核、弾道ミサイル開発施設、革命防衛隊の軍事基地などを早めに集中攻撃し、一方的に勝利宣言して収拾したい考えだ。しかし、最高指導者まで殺害されたイラン側の怒りは激しく、トランプ氏の思惑通りに運ぶのは難しいだろう。

 イラン側は逆に戦争を長引かせて泥沼化にもっていく戦略だ。ハメネイ師を殉教者に祭り上げて国民を結束させ、その上でペルシャ湾の出入り口であり、石油・天然ガス輸送の大動脈であるホルムズ海峡を事実上封鎖する作戦だ。これにより石油価格が高騰すれば、米国のガソリン代が上がり、トランプ氏の与党共和党は中間選挙で敗北することを狙っている。

 しかし、約30人が殺害された昨年6月の「12日間戦争」までには至らなくても、革命防衛隊の司令官のパクプール将軍や最高指導者の軍事顧問シャムハニ前海軍司令官、ナリルザデ国防軍需相ら軍幹部7人が殺害されたのは大きな打撃だ。前回の教訓を学んでいないとも言える。

 だが、ハメネイ師はしっかり学んでいたようだ。米ニューヨーク・タイムズによると、同師は攻撃を受ける直前、イランの国防・外交を統括する最高安全保障委員会(SNSC)のラリジャニ事務局長を呼んで自分に「万が一」があった場合の代行を頼んだ。改革穏健派のペゼシュキアン大統領には託さなかったとされるが、ハメネイ師が殺害される中の混乱で、この辺の事情は定かではない。

権益保持が最優先

 さらに同師は自分が殺害された時に備え、政治や軍事の重要事項を決定する小人数の「臨時評議会」を設立。メンバーにはペゼシュキアン大統領や首席補佐官のヘジャジ氏、ガリバフ国会議長らが含まれているという。

 イスラエルによると、ヘジャジ氏も攻撃で死亡したとされる。ハメネイ師は最高指導者を選任する「専門家会議」が正式に後任を決定するまでの間、臨時評議会による集団指導体制で国政を運営させる方針だったとみられる。最高指導者の選定には数カ月要する見通し。

 最高指導者は高潔なシーア派の聖職者でなければならないが、同師は司法のトップであるモセニエジャイ師、首席補佐官のヘジャジ師、初代最高指導者ホメイニ師の孫のハッサン・ホメイニ師の3人を後任として推薦していた。ハメネイ以後の体制についてトランプ氏は「適任者は何人かいる」と述べている。

 革命後47年が経過した今、権力のバランスは最高指導者直属の革命防衛隊に傾いている。革命防衛隊は「聖域」である組織の権益を守るため、自らの思惑通りに動く人物を「傀儡」指導者として選任させたい考えとみられる。事実上のクーデターと言えるだろう。彼らにとって権益保持が最優先なのだ。

騙し打ちにあったオマーン外相

 攻撃継続について、イスラエルは「4日間」、トランプ大統領は「1週間ないし必要なだけ」としており、イランの報復の度合いを見ながら決めるもようだ。イラン側は今回、体制の存続がかかっているだけに背水の陣で臨むとみられ、イスラエルや湾岸の米軍基地、艦船だけではなく、基地のあるカタール、バーレーン、ヨルダンなども巻き添えを食う恐れがある。

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