テレビ番組の画像や動画をSNSにアップするのは危険? 横行する切り抜きコンテンツ、「適切な引用」のルールとは?

2026.04.07 Wedge ONLINE
 テレビ番組や配信の決定的な瞬間を切り取った「切り抜き動画」や、ラジオ番組の名言をテキスト化した「書き起こし」は、既存メディアのコンテンツを瞬時に拡散し、新たなファン層を呼び込む原動力となっています。しかし、この「シェア」と「拡散」の熱狂は、著作権法という既存の法体系に大きな挑戦を突きつけてもいます。熱心な視聴者や、いわゆる「切り抜き職人」と呼ばれるクリエイターによるこれらの行為は、法的に見てどこまで許容されるのでしょうか?

語り手:寺内 康介(弁護士)
聞き手:KAI-YOU(ポップカルチャーメディア)
構成・執筆:長谷川賢人

*本記事は、『ポップカルチャーを愛し続けるための法律入門 どこから盗作? どこから中傷?』(ウェッジ)から一部抜粋、編集の上掲載しています。
(Worawee Meepian/gettyimages)

――テレビ朝日系列のテレビ番組『永野&くるま クレバーなクレーマー*1』(2024年7月15日放送回)で、お笑い芸人の永野氏と髙比良くるま氏が、「SNSでテレビ番組のキャプチャがバズること」について意見を述べたシーンが話題になりました。放送内で、テレビ朝日が違法動画や画像の削除作業を行っていること、動画配信サービス「TVer*2」へのURLリンクを貼ればOKではないことなどが強調されていた点も印象に残っています。そもそも、テレビ番組の画面キャプチャ*3や切り抜き動画*4を、SNSをはじめとするインターネット上にアップロードすることの法的問題点について、どのように考えるべきなのでしょうか?

 テレビ番組を素材としてアップロードする行為は、著作権法上、大きく2つの権利侵害に該当する可能性があります。

 まずは複製権侵害です。テレビ番組の画像や動画をキャプチャする時点で、著作物の「複製」に当たります。それを行う複製権、つまり「著作物をコピーする権利」は、著作権者が持つ権利の一つです。

 個人的に楽しむ目的で行う「私的複製」であれば法的に許容されますが、SNSにアップロードする目的でキャプチャする場合は、私的複製の範囲を超えてしまいます。

――仕事で使う場合はどうでしょうか? 社内資料に使うため、他の著作物をコピーしている会社も多そうですが。

 業務上の利用は「私的」に含まれません。例えば、業務目的でテレビ番組の画面キャプチャを共有したり、書籍をコピーしたり、「商用利用可能」とされていない画像をダウンロードしたりすることは、理論的には著作権侵害の可能性があるのです。

――えっ⁉

 驚きですよね。しかし、そもそも権利者側が問題行為を把握できないことも多いでしょうし、ごく常識的な範囲内であれば黙認するケースもあるといったことから、実際に問題となることはそれほど多くありません。

 もっとも、新聞社に無断で新聞記事を社内のイントラネット(社内向けの電子掲示板やネットワーク)で共有した行為が著作権侵害とされた裁判例*5もあります。

新聞社は、一定の利用料を支払えば社内で新聞記事を共有できるというクリッピング・サービスを展開していますし、会社が購入した新聞を社内ネットワークで見られてしまっては売上減にもつながるため、黙認はできないでしょう。

*1 『永野&くるま クレバーなクレーマー』 テレビ朝日系列で2024年7月に放送された深夜バラエティ番組。当初は、視聴者や業界関係者から寄せられた「クレーム」を題材に、「世の中をちょっと良くするクレバーなクレーム」を見つけていくというコンセプトだった。番組の反響を受けて、後にタイトルとコンセプトを変更し、『永野&くるまのひっかかりニーチェ』としてレギュラー化。

*2 TVer 日本の民放テレビ局が共同で運営する公式無料配信サービス。放送後の番組を一定期間視聴できる。

*3 画面キャプチャ テレビやパソコンなどの画面を「画像・動画」として保存する行為。スクリーンショットとも呼ばれる。

*4 切り抜き動画 長尺の動画・配信から特定の場面を短く編集した動画。YouTubeやTikTokなどの動画配信プラットフォームでも人気のコンテンツ形式。

*5 鉄道会社が東京新聞や日本経済新聞の記事を10年以上にわたり社内イントラネットに掲載していた行為について、東京地裁は複製権および公衆送信権の侵害を認め、それぞれ約200万円、約460万円の損害賠償を命じた(東京地裁2022年11月30日判決)。

――「社内のクローズドな範囲だから問題ない」という認識は誤りであると。そうすると、社内の誰もが読めるように新聞を置いておくことや、お店に雑誌や漫画を置くことはどうなんでしょう? ラーメン屋に置いてありがちな『週刊少年ジャンプ』とか……。

 その場合は、著作物のコピーを取っているわけでないので「複製権」の侵害にはなりません。なお、著作権には「貸与権」というものもあり、著作物を無断で公衆に貸し出しできないのですが、あくまで店の中で読めるものであれば「貸与」にはならないと考えられており、貸与権との関係もクリアできます。

――あくまで複製しているかがポイントなのですね。複製権のほか、「切り抜き」のアップロードはどのような権利侵害に該当するのですか?

 公衆送信権*6の侵害です。キャプチャした画像や動画をSNSにアップロードする行為は、インターネットなどを通じて著作物を公衆向けに「送信」する権利、いわゆる「公衆送信権」の侵害に該当します。

 「公衆」とは、不特定「または」多数を言います。「または」なので少数であっても不特定である場合や、特定でも多数の人々は「公衆」に当たります。

――では、誰もが見られるわけでない「メンバー型のSNS」だとセーフなのでしょうか?

 ケース・バイ・ケースでしょう。例えば、承認したメンバーしか見られない、いわゆる「鍵付き」のSNSアカウントであっても、それを見られる人が多数いる場合は「公衆」に該当します。100名もいれば多数になるでしょうが、具体的な人数の基準はありません。

 逆に、限定的な、少人数かつクローズドなグループ内での共有であれば「公衆」送信に当たらない可能性はあります。ただし、鍵付きでもメンバー承認のリクエストを緩く認めているならば「不特定」への公開とされる可能性があるでしょう。

 このように、少人数のクローズドなグループ内での共有を除き、テレビ番組のキャプチャや切り抜き動画をSNSにアップロードする行為は、著作権法違反のリスクが高いと言えます。

「引用」が成立するための条件

――テレビ番組のキャプチャや切り抜き動画をアップロードする人の中には「引用」であることを主張するケースも見受けられます。一方で、テレビ局や番組制作サイドからは「出典明記やTVerへのURLリンクを貼れば構わないという話ではない」と注意喚起する言葉も。「引用」が適用される場合の要件について、どのように考えるべきでしょうか?

 引用とは、自分の作品などに他人の著作物を登場させることですが、著作権法上適法な引用と認められるには、きちんと著作権法上の要件を満たす必要があります。その成立要件は、著作権法第32条第1項に記載されていますが、読んでみると、かなり「ざっくり」した内容だと感じるはずです。

著作権法32条
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

 このように「公正な慣行に合致」することと、「目的上正当な範囲内」であることが要求されていますが、「具体的にどのような態様であれば該当するのか」は条文からはハッキリしません。もっとも、これまでの裁判例や学説などから、適法な引用と認められるためには次の6つの点に注意しておくとよいと言えます。

1.既に公表されている著作物を利用すること
2.引用部分と自己の作品部分とが明瞭に区別されていること(明瞭区別性)

3.自分の作品部分がメインであること(自分の作品と引用部分との「主従関係」)
4.引用目的の正当性(引用の必要性)
5.改変をせず引用すること
6.合理的方法で出所を明示すること

 今回の争点であるテレビ番組の切り抜きについて、制作サイドが「TVerのURLリンクを貼る(=出所の明示)だけでは不十分である」と言っているのは、上記のように「出所の明示」は引用が認められる要素の一つにすぎず、他の要素を満たしていないことを指摘しているのかもしれません。

*6 公衆送信権 著作物をインターネットなどを通じて公衆向けに送信する権利。SNSへの投稿も含まれる。著作権法第23条で定められている。

 

 他人のコンテンツをただ紹介する切り抜き動画であれば、先ほど述べたうち、主従関係、引用目的の正当性(引用の必要性)を満たすとは言えず、引用の適用は難しいでしょう。

――「引用」って気軽に出てくる言葉ですけど、かなり難しいものなんですね。

 そうなんです。結構誤解があるところで、「引用なのでいいですよね?」と聞かれることもあるのですが、意外と要件を満たすのは大変です。日常的な用語とこんがらがるので、「引用」と「適法な引用」を分けて説明することもあります。

 そもそも「適法な引用」が成立するのは、何かしら自らの考えを世の中へ伝えたいとか、表現したいことがまずあり、それがメインになることが前提です。そして、そのメイン部分を成立させるために他人の著作物を利用する必要があるかといったことが問われます。

 そのため、ただ面白いシーンを紹介するだけでは「適法な引用」にはなりませんし、分析や批評と称しているだけで実際はただの紹介であれば、それも「適法な引用」とは認められません。

「適切な引用」と認められるためには?

――「面白いから」というだけでは引用の正当な理由になり得ないと……。

 ここで言う、著作物を利用する必要があるか(引用目的の正当性・必要性)の判断は難しいです。例えば、あるテレビ番組内のコメンテーターによる問題発言を引用して社会問題を「批評」する場合、実際の映像まで必要なのか、映像は使わずその発言の概要を紹介すれば足りるのではないか、 という点は問われるでしょう。

 他方、例えばダンスの振り付けとキャラクターの動きが似ていることで炎上した事例に関して法的検討をするコラムを書こうと思ったときに、実際のダンスの動きとキャラクターの動きがわかる映像の比較は必要でしょう。言葉の説明では伝わりにくいですからね。もしこれを書籍化するのであれば、キャプチャを載せることも正当化されやすいでしょう。

 このように、対象を自身の言葉だけでは十分に説明できない要素があるような場合、元作品そのものを引用する必要性は高まってくると言えます。

 引用する側は「その素材をそのまま使用する必要性」を明確に説明する必要がありますし、使う映像の長さや画像の多さなど、使用する範囲が不必要に多くならないよう注意しなくてはなりません。なお、ウェブ記事などで映像を引用したい場合は、公式YouTubeの埋め込みで対応するのが安全です。リンクを埋め込む行為は著作物の利用には当たらないので、著作権侵害とならないからです。

――引用にも説明責任が伴う、ということですね。意外と「適法な引用」とは認められにくそうだと思いました。

 はい。引用が認められるには様々な注意点があり、ハードルがあるのは事実です。ただし、著作権法の目的から照らせば、他人の作品を「利用してはいけない」と硬直的になりすぎることがよいとも思えません。引用が認められる範囲を厳しく制限しすぎれば、新たに生まれる表現が狭められてしまうでしょう。ここでも保護と利用のバランスが求められています。

 興味深いのは、先ほど見た引用を認める著作権法の条文には「公正な慣行に合致」という文言があることです。「公正な慣行」は社会がつくっていくものとも言えます。

 現代は動画や画像で物事を伝えることが一般的になりつつあります。単純な「切り抜き動画」は別として、自らの考えや表現を世の中に伝えるに当たって、他人の動画や写真をどこまで利用することが「公正」なのかは、もしかすると時代とともに変わっていくかもしれません。

ポップカルチャーを愛し続けるための法律入門 どこから盗作?どこから中傷?
寺内 康介:著 ,KAI-YOU:著
ウェッジ
定価:2,200円(税込み)