ウクライナの無人機(ドローン)技術が世界的な注目を集めている。2022年のロシアによる侵攻開始以降、軍民が一体となって廉価な防衛手法を編み出さなくてはならなかった苦境が、ウクライナをドローン先進国に押し上げた。
基盤となっているのは、民間企業の強い意欲と旧ソ連時代からの名残である高い教育水準だ。戦時下でも、IT産業は生き残りをかけて活発な活動を続けており、そのようなウクライナの取り組みが思わぬ形で成果を生み出しつつある。
「ウクライナの軍人は、オンラインで日用品を購入するように、われわれのウェブサイトで武器を―迎撃用ドローンを購入する。迎撃用ドローンを購入できるアマゾンのようなものだ。このような状況を英国やドイツの専門家らに話すと、彼らは理解できないという顔をする。彼らの国の軍需産業では、考えられないことだからだ」
ウクライナのドローン大手「TAFインダストリーズ」のオレクサンドル・ヤコベンコ最高経営責任者(CEO)は自国メディアの取材にこう答えた。豊かな髭をたくわえ、パーカーを身にまとったラフな姿は欧米の新興ITベンチャー企業のトップさながらだ。
彼はこう続けた。「(欧米の関係者に対する)僕の説明はシンプルだ。〝なぜそんなことが可能なのか。それは、われわれのチームの一人ひとりが、何をなすべきか理解していて、そのタスク(課題)に最大限集中するからだ〟」。分業制が整えられ、ベルトコンベヤーで商品を組み立てるよう迅速な流れ作業でドローンが生産される、同社の工場の姿が浮かび上がる。
ウクライナのドローン産業に対する世界の注目は高まる一方だ。
「ウクライナは無人機防衛で最も経験が豊富だ。世界は、私達の経験なしで自国を守ることはできない」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ドローンを活用した防衛技術における自国の優位性をそう強調する。米国、イスラエルの攻撃を受けるイランは報復として、米軍基地を持つほかの湾岸諸国に対し無人機「シャヘド」を使った攻撃を繰り返している。これに対し各国はウクライナに支援を要請し、サウジアラビアやカタール、アラブ首長国連邦(UAE)などにはウクライナから数百人規模の専門家が派遣された。
ウクライナの防衛ドローン技術への注目は、湾岸諸国にとどまらない。日本でも4月初めに、日本のドローン開発企業がウクライナの防衛テック企業「アメイジング・ドローンズ」に出資すると報道され、日本企業の株価が急騰した。アメイジング・ドローンズは、現在月産200機程度の体制を、資金調達を通じて早期に5倍の1000機にする計画という。
日本政府は現在、ドローンで沿岸を守る構想を打ち出し、防衛体制の再構築に向けて採用機種の選定を進めている。そのような機会をチャンスととらえ、ほかのウクライナ企業に出資する動きが広がる可能性は十分にある。
冒頭で紹介したTAFインダストリーズはもともと、ウクライナ産穀物の輸出や燃料の輸入を担っていた物流会社だった。
2022年2月のロシアによる全面侵攻開始を受け、ヤコベンコCEOはウクライナ軍への物資の搬入支援を開始した。そのような中で、搬入先の南部オデッサで中国製の民生用ドローンがいかに戦場で役に立っているかの現状を知り、ドローン生産に関心を持ったという。
そして22年末には、ドローンに搭載したカメラからの映像を操縦者がゴーグルなどで受信して操縦する「FPVドローン」と呼ばれるタイプのドローン生産に向けて、ウクライナ軍と協力して部材の調達を開始した。製造にあたるボランティアを集め、徐々に生産を開始したという。