イラン戦争の開戦から2カ月を目前に、米国のトランプ大統領は4月21日、2週間の停戦の期限が迫る中、停戦延長を発表。だが、エネルギー輸送の要衝ホルムズ海峡は海峡の内側をイラン革命防衛隊が封鎖、外側を米海軍が「逆封鎖」し、船舶の航行は止まったままだ。イランは革命防衛隊が米国との協議を目指す文民派との権力闘争に勝利、ホルムズ海峡という「抑止力」を手中にした。
トランプ大統領は「停戦の延長はしない」と言明した数時間後に停戦を発表。相も変らぬ迷走ぶりだ。今月初め、米軍機2機がイラン側に撃墜され、乗員が行方不明になった際は、周囲に怒鳴り散らし、パニックに陥ったとの報道もある。
第1期政権で国家安全保障担当の補佐官を務め、けんか別れしたボルトン氏は「トランプの威嚇発言が裏目にでてイラン側に優位に働いている」と指摘した。
トランプ大統領は「イランが米国の提案を呑まなければ、あらゆる発電所と橋を爆撃で破壊する」と威嚇を続けてきたが、再三の停戦延長でイランはもはや圧力と感じていない。このため大統領はイランへの軍事的圧力から経済的締め付けに方針を転換。ホルムズ海峡の外側のオマーン湾で「逆封鎖」、これまでにイランの港湾に出入りする船舶30隻以上を湾内に追い返した。
ペルシャ湾の出入り口にあるホルムズ海峡は湾岸産油国からの石油・天然ガス輸送の要衝。平時ではタンカーなどが一日130隻も海峡を通過、世界のエネルギー資源の20%の通り道だ。そのため世界経済に深刻な影響をもたらし、ガソリン価格の上昇、諸物価の高騰、プラスチック製品や医療用ゴム手袋などの不足を招いている。
トランプ大統領は5月に中国訪問を予定しているほか、7月の建国250周年、秋の中間選挙を控えて早急に終戦させたいのが本音。特にガソリン価格が1ガロン4ドル以上と急騰しているのが痛い。イラン戦争は国民の人気はなく、最新の支持率も37%にまで下落した。
しかし、イランを再び空爆しても、屈服させるのは難しい。国民の反対の強い地上部隊投入など論外だろう。このままでは大統領が窮地に陥ったまま、追い詰められていくだけだ。
大統領は今回、停戦期限を設けなかったのも、打つ手のない表れとみられている。イランがホルムズ海峡を通過しようとして船舶2隻を拿捕したことについても「米国船ではない」として問題視しない考えを示し、イラン側の譲歩に秋波を送った。
一方でトランプ大統領は米海軍がホルムズ海峡で機雷の除去作業を実施中だとし、機雷を敷設するイラン船舶を撃沈するよう命じた。米紙によると、イラン側は3月、約20個の機雷を敷設したが、米メディアはイランが新たに機雷を敷設していると報じていた。
イラン側はこの機雷の掃討作戦にも反発、米国の海峡の「逆封鎖」を停戦違反として非難しているが、そもそも双方が目論む合意とはいかなるものなのか。情報を総合すると、4月11日の第1回の和平協議では、米国は戦闘終結に向けた「大枠を定める覚書」の署名を目指した。
主な論点はホルムズ海峡の開放、イランのウラン濃縮活動の停止、対イラン制裁緩和――の3点だ。この覚書を土台に約2カ月で合意を結ぶという「2段階」のシナリオだった。しかし、イラン側はあくまでもホルムズ海峡の支配権、ウラン濃縮活動の権利などを要求、米国との折り合いが付かなかった。
トランプ大統領は「イランは合意を求めている。ほぼ合意に達している」などと楽観的な発言を繰り返し、2回目の協議のためヴァンス副大統領ら代表団を協議の地、イスラマバードへ送り込もうとしたが、主張が対立し見送った。大統領が急ぐ理由は「戦争権限法」上の問題もある。