世界の石油市場をコントロールしてきた石油輸出国機構(OPEC)の有力メンバー、アラブ首長国連邦(UAE)が5月1日に同機構から脱退すると発表した。OPECを主導してきたサウジアラビアとの確執が主な理由とされる。
だが、その背景には、OPECに打撃を与えようとする米国とイスラエルの策謀があるようだ。中東再編の動きがさらに加速する雲行きだ。
「UAEのムハンマド国王の決断は偉大だ。彼をよく知っているがとても賢い。原油価格を下げるためにも良いことだ」
米国のトランプ大統領はこう言ってUAEのOPEC脱退に賛同した。大統領はこれまでOPECが世界を食い物にしているなどと非難してきた。
確かに石油価格の統制に大きな役割を果たしてきた「石油カルテル」の一角に大きな穴が開いたことは事実で、イラン戦争が終われば、油価の引き下げにつながる可能性もある。UAEは長い間、「生産量の割り当て」というサウジの方針に不満を抱えてきた。とりわけOPECにロシアなどを加えた「OPECプラス」体制になってからは割り当て量が少ないと異を唱えてきた。
UAEの石油生産量は日量約360万バレル。ムハンマド大統領は「世界がクリーンエネルギーの開発に動き、化石燃料から離れる前にできるだけ多くの石油を売る」という考えで、石油関連施設のインフラ投資に膨大な資金を投入してきた。
実際には日量500万バレルの生産が可能だという。今回の脱退について専門家は「UAEの独立宣言」とみている。
対してサウジの事実上の支配者ムハンマド皇太子は生産調整をして高価格を維持、次世紀まで資源を枯渇させないという方針。自らの国家改造計画「ビジョン2030」を成功させるためにもOPECの締め付けを強化して機構内の結束を図っていくハラだった。
この2国間対立とUAEの不満につけ入ったのがイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領だ。ベイルート筋によると、トランプ氏はかねてより米国内のガソリン価格に影響を与えるOPECを強く非難し、解体を要求してきたが、戦争でイランの標的になっているUAEに「防衛強化」と「OPEC脱退」の交換取引を持ち掛けた。
「アブラハム合意」でUAEと国交を樹立したイスラエルはミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」を提供したという。イスラエルにとってペルシャ湾を挟んだUAEに前線基地ができるのは願ったりかなったりだ。
実際に「アイアン・ドーム」が機能したかは明らかではない。「脱退を仕掛けた黒幕はトランプとネタニヤフではないか」(ベイルート筋)。
UAEは対イラン強硬派。トランプ政権に対し、イランへの徹底攻撃を進言しており、サウジなどペルシャ湾岸協力会議(GCC)の中では突出している。このためイランから数千発のミサイルやドローンの攻撃を受け、石油関連施設など約50カ所が損害を受けた。エネルギー資源の要衝であるホルムズ海峡の封鎖により、石油輸出は日量190万バレルまで減少した。
パキスタンがイラン戦争の終戦に向けて調停に躍起になっているのは舞台裏でサウジのムハンマド皇太子が要求しているためだ。両国は昨年「戦略的相互防衛協定」を結んだが、その背景としては核保有国であるパキスタンからいざというときに核爆弾製造技術を提供してもらうことにある。
パキスタンがUAEに支払わなければならない30億ドルのローンをサウジが肩代わりしたという報道もある。サウジとパキスタンは「金」と「軍事力」のバーターという補完関係にあるとも言えるが、UAEはパキスタンのイラン戦争の調停を妨害したいと考えているようだ。