サッカーの北中米ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表26人のメンバーには、森保一監督がカタールW杯後の3年半で積み上げてきたチーム作りの方向性が色濃く反映されている。単純な“ベストメンバー”というより、グループリーグ3試合と決勝トーナメント5試合、最大8試合という短期決戦を勝ち抜くための機能性、戦術的柔軟性、コンディション管理まで含めた編成だ。
森保監督はメンバー発表の記者会見で「今、日本が世界で勝つための最高の26人」と表現した。今回の選考を見ると、当然だが能力の高い選手から26人を並べるのではなく、組織論に基づき、大会中に起こる色々なことを想定しながら、どれだけ臨機応変に戦い抜けるかが重要な基準になっていたことが分かる。
まず見えてくるのが年齢と世代のバランスだ。最年長は5大会連続のW杯メンバー入りとなった39歳の長友佑都(FC東京)。森保監督は「これまでの過去4大会の成果も課題も全て知っている」と選出理由を説明した。豊富な経験はもちろんのこと、練習では常にギラギラしながら出場チャンスを狙い、試合になれば仲間たちを鼓舞できる長友の存在はチーム全体の意識を引き上げることが期待される。
その一方で21歳の塩貝健人(ヴォルフスブルク/ドイツ)、20歳の後藤啓介(シント=トロイデン/ベルギー)という二人の若手ストライカーが選ばれた。彼らは2028年に行われるロサンゼルス五輪に出場資格がある、いわゆる”ロス五輪世代”で、次のサイクルへの橋渡しの意味合いも考えられるが、何よりここから本大会まで、短期間でも成長が期待できる選手たちで、優勝を目指すチームの爆発力になりうる。
チームの軸になるのは東京五輪を経験した1997年から2000年生まれの選手たち。センターバックの板倉滉(アヤックス/オランダ)や冨安健洋(アヤックス/オランダ)、右サイドアタッカーの堂安律(アイントラハト・フランクフルト/ドイツ)、中盤の田中碧(リーズ/イングランド)、そしてエースストライカーの上田綺世(フェイエノールト/オランダ)はカタールW杯を経験した選手たちでもある。
こうしたカタールW杯経験者が多いことも今回のメンバーの特徴だ。前回大会で日本はドイツ、スペインを破り、クロアチアにあと一歩のところでPK戦負け。その悔しさと共に、世界トップレベルと戦える感覚を得た。試合運び、メンタル面において彼らの経験は大きい。
結果的にカタールW杯の経験組が13人、未経験の選手が13人という構成バランスになったが、森保監督は”カタール組”がもっと多くなることを想定していたという。確かに膝の怪我で選外となった南野拓実(モナコ/フランス)とメンバー選考の直前に太ももを負傷した三笘薫(ブライトン/イングランド)がいれば、過半数になっていたはずだ。
前回からもっとも大きく入れ替わったのがGKだ。パリ五輪世代で、3月のイギリス遠征2試合でゴールを守った鈴木彩艶(パルマ/イタリア)を軸に、Jリーグで活躍する早川友基(鹿島アントラーズ)と大迫敬介(サンフレッチェ広島)という構成になっている。
国内外に実力のある選手はいるが、GKは基本的に一人が試合に出続ける中で、練習のルーティーンをハイレベルに維持していく必要がある。下田崇GKコーチは最終的にW杯経験のあるベテランを招集するプランも選択肢にあることを明かしていたが、予選後の代表活動でほぼ固定している3人のまま行けると判断したのだろう。
ディフェンス陣は最終ラインが3バックになることを想定して、センターバックを本職とする選手が7人の大所帯となった。34歳の谷口彰悟(シント=トロイデン/ベルギー)が中央から守備を統率し、右にオランダで経験を積む渡辺剛(フェイエノールト)、左にドイツ王者・バイエルン・ミュンヘンに所属する伊藤洋輝というファーストセットになりそうだ。そして長期の怪我から復調してきた冨安健洋(アヤックス/オランダ)は優勝を目指す上でキーマンになりうる。