トランプがAI規制に転換?強まる「安全保障」ファクター、今後を見据える4つの焦点

2026.06.24 Wedge ONLINE

規制はさらに強化されるのか

 第一に、多くのAI開発企業に影響を及ぼす米政府の今後のAI規制方針だ。これまでのAI規制は、EUのAI法をはじめ、機微なデータへのアクセスや非倫理的利用に関わるものが中心であったが、今後の争点は純粋にAIモデルの能力・パフォーマンスそのものであろう。

 焦点の一つは、6月2日の新大統領令が強制力のある直接規制に発展するか否かである。仮にトランプ政権が現状を維持しても、次期政権が直接規制色を強めるかもしれない。

 規制強化の手法は最先端モデルの事前リスク評価・審査や輸出管理政策のみならず、政府によるAIモデル開発企業の株式取得も提案されている。同様の構想はトランプ政権のみならず、民主党のサンダース上院議員も提案している。

 第二に、個別のAI開発企業のスタンス、政権との距離感である。国防・国家安全保障への貢献を重視するPalantir(※AIモデル開発ではなく、実装・運用を担う)のような例外を除き、AIモデル開発企業と米政権の間には、程度の差こそあれ、一定の緊張関係にある。

 Anthropicとトランプ政権の軋轢はこれまでもあった。今年3月4日、米国防総省はAnthropicを通常は敵対国企業に用いる「サプライチェーンリスク」に指定した。背景には、次世代国防システムをめぐる契約交渉の決裂がある。

 国防総省は同社の大規模言語モデルClaudeを次世代国防システムの基盤として採用すべく、数億ドル規模の契約交渉を進めていたが、Anthropicは「Claudeの憲法」およびこれに基づく訓練手法「憲法AI」に従い、国防総省に対して自社技術を完全自律型致死兵器や米国内の大規模監視に使用することを禁じる契約条項の挿入を要求していた。こうした経緯もあって、トランプ大統領は同社や経営層を「急進左派」と批判してきた。

 一方、OpenAIは政権との関係を比較的うまくマネージしているように見える。2月末、OpenAIが国防省の機密ネットワークへのモデル導入契約を発表した際、契約条件の工夫により、自社の倫理原則と両立する形で合意に至ったと説明した。前述の政府によるAI開発企業の株式取得もアルトマン最高経営責任者(CEO)が昨年、提案したものとされる。

同盟国・同志国への影響と中国との競争

 第三に、米国のフロンティアAI開発企業や米国政府が、AIモデルへのアクセスをどこまで許容するか、である。中国等のライバル国企業へのアクセスは検討の遡上にも上がらないだろうが、争点は同盟国・同志国の重要インフラやサイバーセキュリティ関連企業である。

 Mythosについては、これまで三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクとトレンドマイクロがアクセス権を得ているという。Open AIは、サイバー防衛特化型AIモデル「GPT-5.5-Cyber」について日本政府や重要インフラ事業者の導入に向け協議予定だ。

 政府は幅広い重要インフラによる最先端AIモデルへのアクセスを求め続けるだろうが、これは難しいかもしれない。フロンティアAIモデルの開放性・公開範囲を高めることがリスクとなるという前提に立てば、米国産最先端AIの公開範囲は米国の安全保障を維持・改善する範囲においてであろう。

 システミックリスクを引き起こしうる金融業界、安全保障に直結する通信業界・防衛産業、サイバーセキュリティに関連するソフトウェアベンダ・クラウドサービスプロバイダー等はアクセス権を得られるかもしれないが、フロンティアAIのアクセスが日本の重要インフラ15種全てに拡大するというのは楽観的だろう。

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