米軍内部の大きな混乱、いったい何が起きているのか?陸軍長官の辞任、相次ぐ高官の更迭、イラン情勢や中間選挙に影響も…

2026.09.10 Wedge ONLINE

 現在はイランにおいて戦争が進行中である。長期的ビジョンのない戦争遂行で、現場は疲れ果てており、装備も不足がちである。そのような中、国防長官が陸軍長官らの意見を容れずに、高官を次々更迭していくことは、現場に負担を与えている。加えてそれらの将官の中には、ドリスコルが陸軍改革を進める上で、頼りにしている高官も含まれていた。

またも党派によって分かれる賛否

 今回の陸軍長官の辞任に対しては、別の見方もある。ドリスコルが法律家資格を取得したのは、イェール大学ロースクールで、バンス副大統領と同期であった。2人は昵懇の仲であり、ドリスコルはバンスの側近だったこともある。

 トランプの後継者としての意欲を見せつつあるヘグセスにとって、近い将来一番のライバルとなるであろうバンスの盟友が、自らの縄張りである軍において、枢要なポストを占めているのは好ましくなかったとのではないかというのである。しかも、同じトランプ政権内にあって、共に大統領を支えなければならない副大統領の盟友を率先して切ることができなかったのが、ドリスコルの側から辞表を叩きつけてくれたのは願ったりかなったりだったという見方もある。

 この辞任に対する反応は、いつもながら党派によって分かれた。共和党のマスト下院外交委員会委員長は、「ヘグセス長官は素晴らしい仕事をしている」と称賛した一方、上院軍事委員会のメンバーで民主党のリード議員は、「長官が作戦、経験、資質のいずれにおいても、国防長官の資格がないと最初から言っていた」と切って捨てた。

 ただ、中でもトランプ政権にとって予想外だったのは、味方であるはずの共和党議員からの批判であった。上院軍事委員会に8年務めた経験のあるティリス上院議員はXに投稿して、ドリスコルのこれまでの長官としての仕事に感謝すると共に、ヘグセスが「軍の上層部に指導力の空白を生み出して」おり、国防長官の軍に対する「これほど無能な管理を見たことがない」としてヘグセスを痛烈に批判した。

 そして、「軍の能力を損なうのではなく、それを維持し、力を与えるような新たな指導者を国防総省に見出すよう強く要請する」として、大統領にヘグセスの更迭を迫った。この投稿は、早速CBSニュースに取り上げられた。

共和党内にも自由にトランプ政権を批判するYOLO(You only live once人生は一度きり)議員連盟が増えてきているとされている(Senator Thom TillisのXより) 写真を拡大

 これまでであれば、このような共和党議員からの批判はトランプにとって潰すことは容易であった。MAGA派の対立候補を立てると脅したり、直接あの議員は反トランプだと批判することで、MAGA票が期待できなくなると恐れさせれば、みな言うことを聞いてきたからである。ところが今回はそううまくはいきそうにない。

 トランプの人気が以前に比べて陰りが見えるということもあるが、ティリス上院議員は、11月の選挙には出馬せず引退すると表明していることが大きい。次の選挙を気にしなくてよいため、トランプの支持を気にせず、自由に政権批判できる立場にあるのである。しかも、来年1月の任期切れまでは、与野党が僅差の上院の議員として貴重な一票を投じる資格がある。

 そこには、引退する議員だけでなく、予備選の段階でトランプが支持する候補に既に敗北してしまった議員も含まれる。このような議員のことを、米マスコミはYOLO(You only live once人生は一度きり)議員連盟と呼んで面白がっているように見える。

 次の選挙に出ないことを決めたため、翌年1月まで好きにトランプ政権批判や反対投票の出来る共和党議員は、「失うものはなにもない」、つまりトランプを恐れる必要はないのだ。今後、半年弱だが、人事の承認や緊急予算案の承認などで政権を悩ますことになりかねない。

オススメ記事

まだ記事はありません。