欧州連合(EU)は中国政府との交渉で貿易赤字の削減を求めているが、10月までに中国が譲歩しない場合、プラグイン・ハイブリッド車に対する追加関税の発動を含む、強硬手段を検討している。背景にはドイツの自動車業界などの苦境もある。
EU・中国間で、貿易をめぐる対立がエスカレートしそうな雲行きだ。EUの行政執行機関・欧州委員会は、対中貿易赤字を減らすべく、数カ月前から中国政府と交渉を続けている。
EUは中国政府が欧州企業に中国市場へのアクセスを容易にすることや、中国企業のEU向け輸出量の削減などを求めているが、交渉は難航している。EUは「結論が出ない場合には、10月15日・16日のEU首脳会議までに交渉を打ち切る」という条件を付けている。中国政府が実効ある政策を打ち出さない限り、EUは10月の首脳会議で対中強硬策を公表する可能性が強い。
欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は9月16日にストラスブールで行った演説で、「EUの対中貿易赤字は、毎日10億ユーロ(1800億円・1ユーロ=180円換算)増えている。我々が今経験しつつある第2次中国ショックは、欧州の製造業界の衰退につながる。我々はこれまでの対中姿勢を変えなくてはならない」と警告した。
第1次中国ショックは、2001年の中国の国際貿易機関(WTO)加盟後に、中国が大量の安価な製品を欧米に輸出した時を指す。第1次中国ショックは、特に米国で失業者数を増やしたとされる。
25年にはEUの対中貿易赤字が前年比で17.4%増えて、3720億ユーロ(66兆9600億円)に達した。これは対中貿易赤字が3790億ユーロと最も多かった22年に次いで、2番目だ。EUから中国への輸出額は24年比で6.5%減ったが、中国からEUへの輸出額は6.4%増えた。(EU統計局調べ)
中国からEUへの輸出額が最も多いのは電子機器、オーディオ・ビジュアル機器、機械類、自動車だ。特に中国からEUへの自動車の輸出額は299億ユーロ(5兆3820億円)で、EUから中国への輸出額(164億ユーロ・2兆9520億円)を82.3%も上回っている。この数字から、中国の自動車市場で価格競争が激化し、車の需要に比べて生産能力が過剰になっているため、中国企業が国内で余った自動車のEUへの輸出量を増やそうとしていることがうかがわれる。
欧州最大の経済規模を持つドイツ市場も例外ではない。ドイツ連邦統計局によると、26年上半期に中国からドイツへの全輸出額は前年同期比で8.8%増えた。これに対しドイツの対中輸出額は前年同期比で12.2%減ってしまった。この結果、26年上半期のドイツの対中貿易赤字額は、前年同期比で30.1%増えて、527億ユーロ(9兆4860億円)に悪化した。
その中で注目されているのが、EUが中国から輸入されるプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)に対して新たな追加関税を発動する可能性だ。関税率はまだ公表されていないが、論壇では「基本関税10%に追加関税として最高35%を上乗せする可能性」が取り沙汰されている。
EUはすでに中国からの自動車輸入に関税措置を取っている。EUは、24年10月に中国から輸入されるBEV(電池だけを使う電気自動車)について、従来の基本関税10%に加えて最高35.3%の追加関税を発動した。関税率は、EUの調査に対する協力度などによって、会社ごとに異なる。たとえばBYDのBEVには17%の追加関税、上海汽車(SAIC)には35.3%の追加関税が課された。