中国は10月1日~7日まで国慶節(建国記念日)の大型連休に入っている。今年は9月25日~27日の中秋節の休暇との間の平日も休みを取れば13連休になることから、大勢の観光客が国内外に繰り出している。地元の報道によれば、延べ21億3000万人が大移動するという。
しかし、例年ならばこの時期になると、日本メディアで空港に到着した中国人団体観光客の様子を映し出したり、東京・浅草や銀座で買い物をする中国人の様子を中継したりするが、今年はそういった報道は一切見かけない。日本から姿を消した中国人は一体どこに出かけているのか。そして、日本に来たかったけれど、来られなかった中国人の本音とは?
9月30日夜、広東省深圳市に住む30代の筆者の知人の中国人女性は、家族そろってマイカーで同じ広東省内にある実家に帰るショート動画をウィーチャットに投稿していた。夜道を走る車の中から楽しそうな家族の声が聞こえてきて、これから始まる連休への期待が感じられた。
「今年も高速道路は無料なので、家族で私の田舎に帰ってのんびりします。海外旅行も考えたのですが、航空券が高すぎるのであきらめました。同僚は雲南省や貴州省に旅行すると言っていました。広東省からはけっこう距離が近いので。日本ですか? そもそも検討もしていませんでした」(中国人女性)
中国の旅行予約サイト「同程旅行」の調査によると、今年の国内の人気旅行先は新疆ウイグル自治区ウルムチ市や雲南省昆明市などとなっている。ほかに“常連”なのは四川省の重慶市や成都市、北京市、上海市などだ。北京郊外の世界遺産、「万里の長城」や上海の繁華街、南京路などは地方からやってきた“おのぼりさん”で黒山の人だかりとなる。
そうした大混雑を避けたい人、公共交通機関をできるだけ使いたくない人は、コロナ禍以降、マイカーで、できるだけ人がいないところに行って、キャンプや釣りなどをしてのんびりするという旅行形態を選ぶようになった。
一方、海外旅行はどうだろうか。中国民用航空局が9月下旬に発表した予約同行によると、中秋節と国慶節の連休中の国際線の予約数は前年同期比22.5%増となった。今回はカレンダーの並びがよく、長期で休めることから比較的遠方への旅行を計画した人が多かったようだ。
前述の「同程旅行」によると、今年の人気海外旅行先(都市別)は、バンコク(タイ)、クアラルンプール(マレーシア)、ソウル(韓国)、シドニー(オーストラリア)の順だった。ほかにドバイ(アラブ首長国連邦)、ロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、モルディブなども人気だが、上位10都市の中に日本はランクインしなかった。昨年は3位に東京、8位に大阪が入っていたが、今年はあえて日本旅行は避けられたようだ。
背景にあるのは昨年11月の高市早苗首相の「台湾有事」をめぐる国会答弁だ。これ以降、日中関係は冷え込み、中国政府は日本への渡航自粛を呼び掛けた。
日本政府観光局(JNTO)の今年1~8月までの訪日外国人客数のデータを見ると、中国からは290万4600人で前年同期比56.7%減だった。韓国や台湾などからの訪日客がプラスになっているのと比べると、中国からの訪日客の減少ぶりは突出している。
JNTOの概況によると、航空便の減便の影響やホリデースクールの影響とあるが、ほかに国内景気の悪化や9月15日から施行された「出入国に関する国務院規定」の影響もある可能性がある。同規定はAI、半導体、レアアースなどの先端技術の技術者などを対象にした出国制限に関する規定だ。