味の素「希望退職者募集」で考える会社員の行方

経営危機まで行かない大企業の希望退職者募集。いったいどう考えるべきでしょうか(写真:Kazpon/PIXTA)

食品メーカーの味の素が1月6日から開始した希望退職者の募集など、経営危機はない企業で相次ぐ希望退職の実施が話題になっています。

50歳以上の約800名の管理職を対象に、約100名の希望退職者を募集。特別加算金を上乗せした退職金を支給し、再就職も支援するとのことです。

希望退職者を募集する理由は「事業環境の激しい変化のなかを勝ち抜いていくため、黒字である今だからこそ構造改革を進めていく必要がある」と広報発表されています。確かにアジアで流行するASF(アフリカ豚コレラ)の影響で飼料に混ぜるアミノ酸などを販売する事業が打撃を受け、今期の業績予想を下方修正しています。

経営危機ではないのに…?の声

ただ、人員削減するほど経営は厳しい状況なの?と、驚きや疑問の声を耳にします。それもそのはず、これまで日本の大企業が希望退職者を募るのは、周囲も社員も認識できるくらいに会社が危機的な状況に陥った場合がほとんどだったからです。

味の素の2020年3月期の売上高は1兆1385億円、事業利益は880億円、純利益は180億円となる見通し。今回の希望退職は業績が(まだ)堅調なうちの決断と言えます。それだけ日本企業に変革意識が高まってきていると認識すべき出来事かもしれません。

今後、こうした傾向は広がる可能性もあります。会社勤めをしている方は、自らの働き方を見つめ直す機会にするべきかもしれません。では、どのように見直すべきか? 考えていきたいと思います。

2000年以降に増えた希望退職者の募集。これまで、景気の低迷とリンクして増加傾向をみせてきました。業績不振で特定事業から撤退、そのぶん余剰人員が出るため希望退職を募る……というケースが一般的でした。

東京商工リサーチがまとめた、希望退職者を募集した企業数のグラフを見ると、2002年と2009年に大きなピークができています。2002年は計200社が希望退職を実施し、総募集人数は3万9732人。2009年の実施企業数は191社で、総募集人数は2万2950人。

これらのピークには、明らかな環境要因がありました。2002年はITバブルが崩壊、小泉政権下で進められた銀行の不良債権処理の影響。2009年は前年に起きたリーマンショックの影響で業績が大幅に落ち込んだ企業が急増しました。人員削減がまさに景気低迷にリンクしていたのです。

ところが、現在は景気低迷までに至らない状況ながら、希望退職が急増しつつあります。過去にあった大きな2つのピークまでには至っていませんが、2019年1~11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破。年間で1万人を超えたのは6年ぶりで、2018年1~12月(12社、4126人)の約3倍の人数に上るとのこと。その増加の一因が、味の素のような「戦略的な」希望退職のようです。

味の素のように短期的な業績からみれば、希望退職が急ぎで必要とは思えない会社が何社も並びます。さらに2020年以降も希望退職を募る方針を明らかにしている企業が何社もある様子。この動きが大きなうねりになっていく予感がします。

再就職支援に手厚い企業が増えている

このように、今回の希望退職の増加は、過去のピーク時とは明らかに違う動きとも言えますが、実際に希望退職に手を挙げた場合、その後のプロセスに変化はあるのでしょうか?

これまでは、退職金の積み増しなど「このタイミングに辞める特典」を得て、次の職探しへ向けて、セカンドキャリアの支援プログラムに参加するケースが多く見られました。今回の場合、退職金の積み増し額に大きな変化はないようですが、後者のセカンドキャリア支援に対する時間と手間をかける会社が増えている傾向がみられます。