年間15%の人件費が「会議」に使われている衝撃

ある製薬会社の幹部の声です。「わが社では、社員全員を巻き込む文化、チームとして学び、成長する文化を推進しています。ミーティングが多すぎるという状況は、その取り組みに伴う税金みたいなものでしょう。トップ以外は誰も意見を言わなくなり、社内の協力関係やコミュニケーションが減るくらいなら、もっとミーティングを増やしたほうがましですよ」。

69%の従業員は会議に否定的

そんなマネジメント層の思惑とは裏腹に、出席する当の従業員たちの反応は芳しくありません。

2005年、マイクロソフトが4万人近くの会社員を対象に働き方や生産性に関する調査を行ったところ、全世界で69%の会社員がミーティングは非生産的だと考えていました。また、2014年に行われた「職場の時間泥棒は何か」を尋ねた調査によると、「ミーティングが多すぎること」という回答が最も多かったそうです。

2000人以上の会社員を対象に行われた調査では、「(作業の進捗を報告するような)ミーティングの間は、話を聞きながらほかの作業もしている」と5人に3人が回答。そして半数近くは、「あんな会議に出るくらいなら、免許センターの長い列に並んだほうがまし」という欄にチェックを入れました。

私自身、セミナーの席で、「ミーティングで使う時間の何%が無駄だと思いますか?」という質問をすることがあります。この調査では、私が「10%、20%」と数字を上げていき、自分の感覚と一致する数字のところで拍手をしてもらいます。拍手がいちばん大きくなるのは、いつも決まって「50~70%」のところ。南米、アジア、ヨーロッパ、北米の各地で聞き取りを行っていますが、結果はどこも同じでした。

ゼロックス社がミーティングに関するコストを算出した調査によると、年間で「1億40万ドル」、人件費にして「15%」がミーティングに費やされているとのことでした。しかし、これらのコストはあくまで過小評価した数字だという点は見落とせません。これらの数字は単純な年収だけをベースにしており、社員それぞれにかかる福利厚生費などは含まれていません。また、ミーティングに使われる場所、設備、出席者の移動にかかる費用なども勘案されていません。

そして、おそらく最も重要なのは、非生産的なミーティングを行うと、各種の間接的なコストが発生するという点です。まずは「機会損失」というコスト。ミーティングに使った時間を、もっとほかの生産的な作業に当てられた可能性は排除しきれません。加えて、「心理的なコスト」。ある研究によると、ミーティングは出席者のやる気を著しく減退させ、不満が募っていくことを示す確かな傾向があるとのことです。

そして最後に、「ミーティング回復症候群」とも呼ぶべき現象について。これは、悪いミーティングに出席すると、心理的なダメージから回復するまでにある一定の時間を要するという現象です。回復のプロセスにある間は、本人だけでなく、周囲の人も愚痴を聞かされたり、八つ当たりの対象にされたりして、ネガティブな影響を受けかねません。

このように考えていくと、ミーティング関連費用は組織内に存在する巨大な「隠れた費目」ということが言えそうです。

会議をなくすと「もっと厄介な問題」も

では、ミーティングは少なければ少ないほどいいのでしょうか? 極端な話、不要なのでしょうか? わざわざ集まる必要がないと断言できるのならミーティングを減らす効果はあると思いますが、ミーティングをなくしても問題解決にはなりません。ミーティングは少なすぎても問題で、「大切な情報が伝わらない」「チームや組織への帰属意識が希薄になる」「周囲のサポートが感じられない」といった問題につながりかねないのです。