世界のどの宗教にも共通する3つの大事な役割

宗教は今後も有効なのでしょうか?(写真:Sergey Nivens/PIXTA)
宗教は歴史、社会、文化、現代を理解するために必要な教養――。宗教の世界は、歴史の蓄積によるたくさんの言葉、概念、人名などの固有名、特殊な用語にあふれています。しかし、本質的にはかならずしも必要とはいえない情報も多いものです。さまざまな宗教を比較して考え、本質に切り込んだ宗教論を解説した『教養として学んでおきたい5大宗教』から一部を抜粋してお届けします。

宗教は矛盾に満ちたもの

「宗教がわかってない人はこの4原則を知らない」(2020年3月11日配信)で説明したように、宗教とは霊や神などをめぐる想像世界です。霊や神や理法のようなものが宇宙に潜在している。人間はその力を頼り、その意志に従い、その教えを守り、その極意を悟ろうとする。

それらは歴史的に構築されてきた共同主観的な観念世界ですから、地域の差、文化の差、系譜の差によって、多種多様な内容になっています。大宗教ともなれば、いずれもおおむね愛や慈悲を説き、平和を勧めるものになっていますが、ディテールはすべて異なっており、世界観も忠誠の対象も違うので、宗教間の軋轢も生まれます。愛や平和を説く宗教が戦いを正当化することもあります。

宗教は矛盾に満ちたものです。人間の論理はしばしば矛盾に突き当たります。それが天界に投影されたものである神の論理が矛盾だらけであるのはある意味仕方がないのかもしれません。

宗教は多様とはいえ、皆似たような役割を果たしています。主な機能は次の3つです。

① 奇跡をおこす

世界中の宗教が、病気治しをうたい、招福除災をうたっております。イエスは病人を癒やし、死者まで復活させたと伝えられています。密教の行者は加持祈祷を行い、護摩(浄化の火)をたいて悪霊を退散させます。

これらはもちろん非科学的な話です。非科学的な信念に基づく実践を呪術(マジック、魔術、魔法)と言います。宗教の機能の大部分は呪術です。死者にお供物を捧げるのも呪術であり、天に向かって祈るのも、しばしば呪術的な意識で行われるものです(祈りによって福を天から呼び寄せるという呪術)。

こうした呪術には心理的な働きがあり、病気などの場合、それが絶大な効果を上げる場合があります(心理状態がある程度身体状態にフィードバックされる)。

それにそもそも、ビジネスの企画から政府の政策まで、事がつねに未来の予測(占い?)に関わる以上、完全には科学的といえない希望的な要素はつねに存在します。それと同様のことを宗教が象徴的に行っているとも言えます。

あらゆる個人が「希望」を原理として生きている以上、どんなに絶望的な状況の者にも「希望」を抱く権利があるでしょう。それが奇跡待望という形をとることがあるのです。

② 秩序をもたらす

人々が同じ神話を共有することで、仲間意識を高め、スムーズな協力関係に入り、相互に善行を施しあうユートピアを部分的に現出することができます。これは人々に人生の目的と誇りを与え、アイデンティティーーの感覚を与えます。互助のシステムの創出は、奇跡と並ぶ宗教の重要な機能です。

人間は神話を共有して「仲間」をつくる

人間が動物と異なる最大のポイントは、何であれ神話を共有することで「仲間」をつくることができる点であるとも言われます。歴史的には大宗教の神話が何千万、何億という人々に同一のアイデンティティーを与え、社会の秩序と潜在的な協力体制を維持してきました。

そうした秩序を与えるために、宗教はしばしば戒律あるいは神の法で人々を拘束します。戒律は古代に生まれたものなので、必ずしも合理的ではありません(意味不明のタブー、階級差別、性差別、性指向差別などが残存している)。しかし神の権威で守られていますから変更はままなりません。ここに多大な問題があります。