ストレスに強く、自己肯定感が高くなる おばけメンタル

意外な盲点?「成功体験」が闇に変わる危険性

Getty Images

はじめに

最近、努力家な人が増えてきたように感じる。
単純に、テクノロジーの進化や社会の変化によって、努力することのハードルが下がってきたことも一因かもしれない。
良いことだ。努力は勝利や報酬以外にも様々な成果を生み、自己肯定感を養ってくれる。そして、その成果を栄養として次なる目標を掲げ、また人は努力する。
素敵なサイクルだ。このサイクルの真ん中で盆踊りでも開催して私もグルグルと回っていたい。フェスだ、フェスを始めよう。

そんな中、そうした人々に「なぜあなたはそのような努力ができるのか?」と尋ねると、多くの人から「努力しないと不安だから」などの、殊勝な言葉が返ってくる。
怠惰な私としては爪の垢を煎じて飲みたい心持ちだ。なんなら家に専用のドリンクサーバーを置いて定期的に飲みたいぐらいの勢いであった。
しかし、殊勝な彼ら/彼女らのメンタルにも、闇が巣食っていることを私は知っている。

殊勝な成功者にも闇がある

殊勝な成功者たる彼ら/彼女らに巣食うメンタルの闇、その一例を紹介しよう。

ある日、私のSNSのDMボックスに、ダイエットを目標にする一人の女性から「毎日、ダイエットの経過を報告します」と、一方的ながら応援したくなるDMが届いた。
スタートから一か月は、お菓子を食べてしまったり深夜にラーメンをすすってしまったりと散々な様子だったが、徐々にダイエット中の自覚が出てきたのか、二か月目から彼女は変わった。
具体的には、毎日会社からの帰宅時に最寄り駅の1駅前で降りて徒歩で帰り、3日に一度のランニングを始めたのである。

ダイエット開始から三か月が経ったころ、成果は出た。
身長160㎝、55キロだった彼女の体重が、突然51キロまでダウンしたのだ。
これは大きな成果である。
彼女はDMで「双子出産したんか? ってぐらい身体軽いです」と冗談交じりに成功談を語ってくれた。私も奮って褒めちぎり、喜びを共有した。よし、フェスだ、やはりフェスを開催しよう。

しかし、フェスの開催に間に合わず、事件は起きた。
毎日の歩数を増やす生活を送っていた彼女の膝が壊れたのだ。
幸いにも大きな怪我ではなかったが、ランニング中に動けなくなる程度の痛みから始まった、全治2週間の筋肉系の怪我だった。

彼女は残念そうに「もう一回双子出産してやろうと思ったのに。名付けてショットガン出産」と私に話した。
私も「出産で銃刀法違反するんじゃありません」と、笑って返した。

ここからさらに事件が起きた。
待てど暮らせど、彼女の膝が快方に向かったという連絡が来ない。
心配になり、私から彼女に連絡を取ると、なんと膝を手術することになったという。
私はDMを眺めながら、自身のスマートフォンに向かって大手町のド真ん中で「ハイィ!?」と叫んでしまった。
どうやら彼女は、自身の膝が壊れたのにもかかわらず、ランニングを続けていたそうだ。
なぜそんなバカなことを! 私は心配と少しばかりの怒気を込めて、彼女に理由を問うてみた。

彼女は答えた。
「運動しないと、体重が増えてしまうのではないかと不安で心が潰れてしまいそうだったから」

ご感想はこちら

プロフィール

おばけ3号
おばけ3号

作家・コラムニスト&インフルエンサー。1990年生まれ。
X(旧Twitter)にて、フォロワー数10万人超のインフルエンサーとして日常の愉快な話や、人々や社会とのコミュニケーションの関わり合いの手法を発信。聡明かつ鋭い視点と分析力に富んだ意見で、多くの企業・メディア・働く若年男女層の評価を得ている。
その実像は都内のコンサルティング会社に勤務する、現役のコンサルタント。
大手上場企業に対するSNS活用コンサルティングサービスの提供や、SNS活用セミナー登壇など多くの実績を擁する。
2020年より、タウンワークマガジン(リクルート社)へのコラム掲載や、株式会社ヴィレッジヴァンガードコーポレーションとのコラボレーション商品の開発販売等を実現し、自著『「お話上手さん」が考えていること 会話ストレスがなくなる10のコツ』をKADOKAWA社より発売。

出版をご希望の方へ

公式連載