素人も藤井聡太七段の凄さが判る7つの注目点

藤井聡太七段の前では、驚異の生涯勝率を誇る羽生善治九段もかすむほど。いよいよ6月28日には渡辺三冠との棋聖戦第二局だ(写真:共同通信)

われわれは、藤井聡太七段の将棋をリアルタイムで観ることが出来る時代に生まれて幸せだ。

「何が凄いのか」がわかれば、ますます楽しくなる

藤井七段はさる6月4日に永瀬拓矢二冠に勝ってヒューリック杯棋聖戦の挑戦者に名乗りを上げた。コロナで対局日程が遅れて最年少でのタイトル挑戦記録の達成が危ぶまれたが、非常事態宣言解除後に東西の行き来を伴う対局が解禁されて、記録が達成された。史上最年少となる14歳2カ月でのプロ入り以来注目を浴び続けた藤井七段だが、また新しい記録を作った。

そして、その4日後の6月8日には、棋聖のタイトルホルダーである渡辺明三冠との第一局に臨んで勝利を挙げた。いよいよ6月28日には第二局が行われる。

本稿で、筆者は一将棋ファンとして、藤井七段の将棋を観ることを読者にお勧めする。もちろん、専門的な将棋の解説は筆者の手にあまるので、将棋ファンとして藤井七段の将棋を観るうえでのポイントをご紹介したい。

なお藤井七段は、棋聖戦の他に、6月23日に王位戦でも挑戦権を獲得した。また20日には師匠の杉本八段を破って竜王戦3組のランキング戦優勝を果たして挑戦者を決めるトーナメントの本戦に入った。最も賞金額の高い棋戦である竜王戦では6組からの参加以来4年連続ランキング戦を優勝しており、これも新記録だ。ランキング戦は現時点で20連勝となる。

藤井七段は現在17歳の高校生だ。14歳でプロデビューした時の印象があってつい「藤井クン」と呼んでみたくなることがあるが、トップレベルの厳しい戦いの中にいるプロフェッショナルであり、技術・人格ともに尊敬すべき人だと思うので、以下「藤井七段」と書くことにする。親近感を持って「藤井クン」と呼びたい読者は、心の中で読み替えて欲しい。

では、藤井七段の何が凄いのかについて、段位の「七」に因んで7つの
ポイントでご紹介する。

① 8割を超える勝率

何と言っても藤井七段はよく勝つ。プロ入り以来の公式戦の通算成績は178勝33敗の8割4分3厘6毛だ。凡そ6局指すと5局勝つペースだ。しかも、毎年8割を超える勝率を記録している。

「7割超」はもはや「異常に強い」領域

あくまでもファンの目線でのメドだが、大まかに言って6割を超える勝率は「強い棋士」、上位クラスの相手と多く当たる位置にいて6割5分はタイトルに手の届くかも知れない「トップクラスの棋士」、7割超えは「最強クラス」又は「絶好調」である。

ファンとしては、通算勝率と1年単位の勝率の様子を見ると個々の棋士の大まかな位置づけと調子が分かる。

例えば、羽生善治九段の7割を超える通算勝率は「異常に強い」。棋士の勝率を解釈するうえでは、棋士の大まかなクラスや年齢との関係を考慮するといい。

棋士は、順位戦と呼ばれる名人戦の予選リーグの所属によってクラス分けするのが大まかには分かりやすい。順位戦のリーグ分けは、A級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の「5クラス」に分かれていて、この他に順位戦を指さない「フリークラス」に所属する棋士がいる。

このうち、A級とB級1組に所属する20数人が、予選を免除されることが多い大まかには上位クラスの棋士達だ。彼らは当たる相手が強いので、たぶん勝率にして1割くらいのハンディキャップを負っている。このクラスで6割5分くらいのペースで勝っていると、タイトル(公式タイトルが現在8つある)に手が届く可能性が大きい。

一方、デビューから年数が経っていない主に若手の棋士の場合、各種棋戦の予選では下のクラスの相手と当たるので、勝率が高い。棋士の年齢的な全盛期がどのくらいなのかは議論のあるところだが、20代半ばから後半くらいにはピークに達し、トップクラスの棋士はピークの力を長く維持するが、45歳を過ぎると多くの棋士が勝率を1割程度当落とすようになる、という見当で筆者は見ている。