「説明が的を射ない人」と上手な人の決定的な差

出発地点
↓(まずは1km直進して左折)
経由地A
↓(続いて5km直進して右折)
経由地B
↓(最後に300m直進すれば)
目的地周辺

カーナビの説明はある意味で完璧です。あれ以上わかりやすく説明しゴールまで導いてくれるコミュニケーションは世の中に存在しません。だから私は企業研修やビジネス書などで「カーナビのように話しましょう」と提案します。最初は「?」という反応がほとんどです。中にはバカにしたように鼻で笑うベテラン社員もいます。しかしその真意を説明することで最後は納得いただけます。カーナビのような機械的な話し方ではなく、カーナビのように構造化して話すのがわかりやすいということです。

ビジネスパーソンの日常は9割が雑談力で事足りるシーンかもしれません。しかし残りの1割はいわゆる勝負どころ。会議での説明。上司へのプレゼンテーション。金額の大きな商談。ここだけは雑談力では乗り切れません。信頼されるコミュニケーションが必要だからです。極論、内容よりもまず伝え方に信頼がおけるかが重要なのです。そしてそんな場面で信頼を勝ち取っている人とは、実は数学的に説明する人なのです。

わずか1割の場面でカーナビになれるか。

これがビジネスの成果を決めているのです。

この記事も構造化して書いている

最後にこの記事の構造を明らかにしておきます。

【問題提起】雑談力があればビジネスで成果は出るのか?
↓(そこで)
【主張】信頼を勝ち取るコミュニケーションは別である
↓(具体的に)
【提案】構造化する技術
↓(例えば)
【具体例】カーナビ
↓(以上より)
【結論】わずか1割の場面でカーナビになれるか

これがまるで数学の問題解説のように見えるのは私だけでしょうか。ビジネスで成果を出したければ、数学的に説明する技術を身につけましょう。「話す力」を鍛えるのではなく、「構造化する力」を鍛えるのです。もちろん今からでもそれは可能です。

『数学的に考える力をつける本: 本質をつかむ 考えがまとまる 説明上手になる 』(三笠書房)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

例えばあなたの職場にも「なぜあの人の説明はいつもわかりやすいのだろう」と思わせるお手本がいるのではないでしょうか。あなたがそう思うということは、必ずそこに理由があります。今日からでもその人物のする説明をよく聞いてください。その説明は間違いなくこの記事でご紹介したような構造化された内容になっているはずです。そしてその人物の話し方を真似するのではなく、構造化の仕方を真似するのです。

世の中には、このような提案を聞いたときに「まあ確かにそうね」と言って何もしない人と、実際に(本当に)やってみる人がいます。繰り返しですが、普通のことが意外に難しいものです。しかしその普通のことができる人とそうでない人の差は、実はこのようなちょっとしたことをするかしないかの差です。