神戸の小学校PTA「上部団体離反」に見えた綻び

実は、2019年度には、傘下の各連合会に約82万円の「助成」もした。予算は約202万円だったが、小学校PTA連合会は振り込まれた約120万円を返納した。これは1世帯当たり22円で算出されたもので、事実上集めすぎた負担金の一部を還元するものだが、これを各PTAが会員に戻すことは現実的ではないためだ。同協議会の「最大派閥」といえる小学校PTAの「反乱」といってもいいだろう。こうした批判もあり、2020年度の負担金は1世帯当たり20円値下げして80円で予算が組まれた。

こうした議論を呼んだ体温計提案だったが、市協議会は取材に「原案として賛成かどうかを確認しようとしたもので、議決を求めるものではありません」と答えた。

さらに、2学期が始まって間もなくの8月24日、協議会は、実際に集まっての「理事会総会」を9月3日に開くと、傘下のPTA連合会に知らせた。ただ、この時点で小学校PTA連合会は2020年度の役員を決められていなかった。中高生らに比べて手がかかる小学生が家にいる時間が長く、PTA活動どころではなかったという。区の連合会の総会が終わっていないところが残っていて、市の連合会の総会が開けない状態だったのだ。

理事会総会は2019年度と2020年度が続けて開かれたが、最大勢力の小学校PTA連の2019年度の役員は2020年度理事会総会で退席を求められ、新会長予定者だけが出席した。小学校PTA連の記録によると、2019年度決算の審議で、会計担当だった中学校PTA連の副会長は「会計事務処理は事務局員がすべて行っており、実際は処理を終えた書類を見るだけのような状況だった」などと、会計処理の課題を指摘。「神戸市PTA協議会の今後を心配している」などと述べた。

神戸市PTA協議会の言い分

小学校PTA連のある会員は「PTAは子どもたちのためにあるのに、協議会はコロナだろうがなんだろうが、自分たちの仕事を進めることが中心で役に立っていない」などと話す。市協議会は「通常の理事会総会は6月に開催するが、4月の役員会で9月頃の開催とした。その後の役員会でも協議し、最終的には8月の役員会で9月3日開催を確認した。小学校PTA連合会長も出席している」などと反論している。

コロナ禍の中で、上部団体であるPTA協議会を退会する動きは、既報のとおり『PTAの「人やお金の動かし方」に猜疑心が募る訳』(2020年8月14日配信)でも紹介した。さいたま市南区の市立浦和別所小学校PTAが5月に退会したが、同区の市立大谷場東小学校も9月に退会した。

大谷場東小の退会理由は「ダイエット」だ。コロナ禍でさまざまな活動が止まり、「本当に必要なPTA活動」は何かを検討して、4つある委員会を1つに減らし、協議会からも退会することを決めた。

廃止した委員会は講演会などを企画する「文化委員会」、次年度の会長ら役員を選ぶための「選考委員会」、広報紙を作る「広報委員会」。同小PTAは、建前でなく自由に参加する前提のボランティアを「猫の手」として組織しており、文化委員会が担ってきたベルマークの選別などは、猫の手活動でやりたい人がいれば続ける。

登下校の見守りをする「地区委員会」は残したが、交通安全運動でティッシュを配るなどの「ボランティア」をすることが恒例化している「さいたま市交通安全保護者の会(母の会)」からは退会して負担を減らした。この会は市や区が事務局を務めるが、市内に164校ある公立小中学校のうち、68校しか参加していなかった。市は配布用のティッシュを買うためなどとして130万円を補助しているが、関係者からは、公費を出すことの是非も検討するべきだという声も出ている。