日本人が知らない世界の5大炎上事件2020年版

BLM運動をめぐっても波紋が

3.ロレアルのBLM対応

昨年はアメリカでBLM(Black Lives Matter)運動が盛り上がった。一部は暴徒化したほどだった。運動は黒人男性を白人警官が殺してしまう残念な事件から始まった。

ロレアルは2017年に某有名黒人モデルの起用を見送った。これは、その某有名黒人モデルが、人種差別に反対しているからだと噂された。もっというと白人に対する露骨な批判が問題視された。もちろん、ロレアルは人種差別など、いかなる差別にも反対だと述べている。しかし、当時から、採用を見送ることになった理由が問題視されていた。

そこにきて2020年のBLM運動を迎えた。ロレアルは、かつての騒動を、同黒人モデルに謝罪する運びになった。なお、同氏は2020年に「FUCK YOU @lorealparis」とまでツイッターで述べ、これまでの不満をぶちまけた。

この一連の経緯が話題になったが、これはどちらかというと炎上というよりも、議論を惹起した、という言い方のほうがふさわしいかもしれない。かつて有名人が公的に自らの思想的な発言をすることは、自らの仕事を失う可能性があるために敬遠された時代もあった。

しかし2020年は、人種差別であれ政治問題であれ、より深く、より明確にメッセージを伝える契機になったのだ。

4.Netflixドラマ「キューティーズ」

Netflixに限らずネットサービスは巣ごもり時代に、多くのユーザーを獲得するとことに成功した。しかし、そのなかでドラマ「キューティーズ」は物議を呼んだ。主人公の少女を性的搾取していると考えた視聴者が多くいたようだ。

舞台はフランスで、セネガル系の主人公が、ダンスグループに属する。そして、露出の多い服装で踊る。このダンスとは、自分が縛られていた文化や家族からの脱却を意味している。しかし、服装やダンスが行きすぎであると批判された。Netflixが作成したポスターで、10代前半の少女たちに露出した格好で際どいポーズを取らせたことについても批判の声が寄せられた。

いまNetflixに加入している人は、日本語字幕で視聴できる。正直にいえば、私はこの種の問題に、特別関心をもっているわけではない。ただ、鏡の前で、少女が胸を揺らしながら練習するシーンや、知人たちとヒップを強調するシーンなど、批判者の意見もよくわかった。とはいえ、映画の文脈では、それ自体を賛美するような内容ではないし、むしろセクシーな踊りで有名になろうとする風潮への皮肉にも思えた。

すくなくとも正しく文脈や意図が伝わらない可能性も含めて企業は商品・コンテンツ作成に心がけるべきだろう。なお、ツイッター上では、Netflixの解除運動にもつながった。

ある種の偏見を呼び起こす表現

5.コルゲート・パルモリーブの歯磨きマスコット

コルゲート・パルモリーブとは、歯磨剤やせっけんなどを販売する企業だ。同社は「Darlie」(もともとは「Darkie」)という歯磨剤ブランドを有している。これはぜひ画像を「Colgate-Palmolive Darlie」で検索して確認いただきたい。

すると、白い歯が印象的なロゴマークが登場する。このブランドも前述のBLM運動に影響を受けた。というのも、以前の「Darkie」ならびに「Darlie」とも黒人を想起するため、中国で販売される際には「黒人の歯磨き粉」と訳されている。

黒人の歯が白く笑っている様子は、ある種の偏見を呼び起こすとして、同ブランドは変更を検討するに至った。また、このブランド名や商品変更の動きは、同社だけではない。黒人女性や黒人男性を、ある種のステレオタイプに結びつけるものは、多くが見直しを選択している。いや、白人女性、白人男性であってすら、そこに差別的なステレオタイプを読み込む消費者がいる限りは今後も見直しが進むだろう。