「人へのアドバイス」はなぜしてはいけないのか

相手の悩みを聞いた後、疲れてしまった経験ってありませんか? 相手のためにもなり、自身も疲れない話の聞き方を紹介します(写真:mits/PIXTA)

こんにちは。生きやすい人間関係を創る「メンタルアップマネージャ®」の大野萌子です。

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親しい人の相談を聞きながら、「またその話?」と思ったり、「どう反応したらいいのかな?」と悩んだりしたことは、ありませんか? 頑張って話を聞いて、別れてからどっと疲れたり……。

最近、そんな「聞き疲れ」をしている人が増えていると感じます。

とくに、相手を思いやる気持ちの強い聞き上手な人ほど、頑張りすぎて心身をすり減らしがちです。

この、話を聞くときの「モヤモヤ」や「イライラ」は、何が原因なのでしょうか?

今回は、拙著『『聞き上手さん』の「しんどい」がなくなる本 自分も相手も嫌いにならない話の聞き方』から、話を聞いても疲れなくなるコツをご紹介します。

「どうしたらいいと思う?」と聞かれたら

「これってどう思う?」「どっちがいいと思う?」と聞かれることは、よくありますよね。

とくに、聞き上手な人は、人から相談されることが多いと思います。

例えば、「恋人と別れたほうがいいと思っているけれど、別れられない。どうしたらいいと思う?」と相談を受けたとしましょう。あなた自身は「別れたほうがよさそうだな」と思うけれど、「本当は別れたくない」という相手の気持ちも察すると、返答に迷うのではないでしょうか。

関係性にもよりますが、それでも相手のためをと思って「私にも同じような経験があるけど、別れたほうがいいと思う」「気持ちはわかるけど、そろそろハッキリさせなきゃ」などと、アドバイスをするかもしれません。

実は、この「アドバイスをする」という行為が、聞き疲れの原因になっていることがあるのです。

その理由は主に2つあります。

1つは、「頭を使っていること」です。

アドバイスをする人は、話を聞きながらも「どんなアドバイスをするか」ということに意識が向いています。自分の経験を思い出したり、相手を傷つけない言葉を考えたりして、頭を使いすぎるのです。この「考えすぎ」が疲れの原因になります。

もう1つの理由は、悩みに対してアドバイスをした後に、「ああ言ったけれど、よかったのかな」と悩んだり、「いいことを言えたはず!」と得意になったりすること。話を聞いた後も感情が揺れ動き、疲れにつながります。

また、この後で詳しくお話ししますが、アドバイスで他人を変えるというのはとても難しいことです。「いいアドバイスをした」と思っていたのに、実行もされず、また同じような相談をされる……ということが起きるのはこのため。何のために親身に相談に乗ったのかと、疲れの原因になります。

答えは必ず本人の中にある

・アドバイスはしなくていい

そもそも、相談をしてきた人というのは、本当に意見やアドバイスを求めているのでしょうか?

例えば、友だちとのショッピングを例に挙げてみましょう。

AとBのどちらを買えばいいか相談されたとします。よくあるのが、自分がAをすすめたとしても、「Bがいいと思うんだよね」と、結局は本人が決める、というケース。

アドバイスしたほうは「悩んで損した」「決まってるなら聞かないでよ」と思いますよね。この場合、友だちが求めていたのはアドバイスではなく、自分と同じ「B」という答えです。

このように、答えは、必ず本人の中にあります。深刻に思える相談でも基本的には同じで、本当に求めているのは、自分の決断を後押ししてもらうことなのです。

それでも、なかには、「自分の経験を伝えて参考にしてもらえたら」と思う人もいるかもしれませんね。