喫茶店で大人が学生を囲い込み儲け話に勧誘→「詐欺だよ」と教えるのは適切?

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「gettyimages」より

 喫茶店で近くのテーブルで若い人が、スーツを着た大人が話す儲け話を真剣に聞いていた――。都市圏の飲食店を利用したことがある方なら、そんな光景を目にしたことがある人も多いだろう。そんな怪しい投資の話を聞いていた男子学生に「詐欺だからやめておけ」とアドバイスした男性のエピソードがX(旧Twitter)に投稿され、その行動が賞賛されている。喫茶店やホテルのラウンジなどで若い人相手に儲け話を持ちかけて金を募るといった投資詐欺のやり口は、昭和の時代から耳にする話。それがなぜ令和の現在も続いているのだろうか。防犯アドバイザーの京師美佳氏はいう。

「警察庁のデータによると、投資詐欺、ネットワークビジネスなどのトラブルはここ数年で増加傾向にあるようです。要因はいろいろありますが、個人的には成人年齢が18歳に引き下げられたことが大きいのではと感じています」

 2022年4月1日より、これまでの20歳から18歳に引き下げられた成人年齢。これにより、18歳以上は親の同意なくさまざまな契約ができるようになった。

「高校卒業まで社会生活で必要な判断や手続きは親が行っていた。そんな高校卒業したばかりの、大人社会への免疫がない人が狙われてしまっていると思われます。今の時代、奨学金を利用する学生も多い。東京や大阪などの都会の大学に出て1人暮らしをする学生のなかには、アルバイトで生活費を賄う人も多いでしょう。そんな状況であれば『少しでも生活が楽になるなら』という思いが芽生えてしまいます。

 コロナで求人が減り、生活費をアルバイトで稼ぐのが厳しくなった。そんなことも詐欺被害が拡大した要因だと考えられます。儲け話に乗って被害に遭う人のほとんどが、生活費や月々の支払いに困っている方なんです」

 デジタルの時代にもかかわらず、詐欺を行う業者が直接会って口説くアナログなスタイルをとるのにはそれなりの理由がある。騙す側にとっては、相手の反応を直接見ることができるし、多数で1人を囲むことで相手を口説き落としやすい状況を作ることができる。さらにこんな手口もあるという。

「友達に『相談したいことがあるので喫茶店に来てくれ』と言われて、行ってみたら友達と一緒にスーツを着た大人の人がいて儲け話が始まった、なんてケースもあるようです」

プロに相談することが大切

 さまざまな事情が重なり、ここ数年で増加傾向にあるネットワークビジネスや投資の詐欺話。自分が怪しい儲け話のテーブルに乗らないためにはどうしたらいいのか。

「友達の相談だと思ったら、というパターンもあるので、投資詐欺の誘いのテーブルにつくことを100%回避するのは難しいと思います。なので、そういうテーブルについてしまった場合や、初対面の大人から儲け話を切り出されたときは『いったん話を持ち帰って検討する』と話して、その場で契約などの話に進まないことが大切です」

 もし、契約してしまった後に詐欺だと気づいた場合はどうすべきか。

「まずはプロに相談することが大切です。警察の相談ダイヤル『#9110』や、消費者ホットライン『188』に電話して、これからどうしたらいいかアドバイスを受けましょう。クーリングオフや契約に瑕疵(かし)がないかを確認してもらえます」

 よかれと思って友人に持ちかけた話が詐欺だった場合はどうすればよいか。

「各地にある法テラスで弁護士の無料法律相談を受けるのもいいでしょう。詐欺罪は故意に騙そうしたかどうかがポイントとなる罪。騙してしまったと分かってからすぐに相談することで、故意ではないということを示せる可能性があります。とにかくどんな場合でも自分一人の力で解決しようとせず、専門家に相談してください」

 では、ホテルのラウンジや喫茶店で投資詐欺をしようとしている現場を見つけてしまった場合はどうすべきか。

「詐欺グループの人が一度席を立った隙に注意するという方法もありますが、見ず知らずの人に急に『詐欺だよ』と注意しても、儲け話に興味が芽生えてしまった人の心には響かないと思います。なので『話に出てきた会社名や、説明された内容をスマホで検索してみて』と声をかけるのがいいと思います」

 投資詐欺の話を持ちかける人は、相手の心を落とすプロ。傍目から見ればただの詐欺話にしか聞こえなくても、ターゲットとなる人にだけは魅力的な話に聞こえるテクニックを持った人たち。そんな状況で正論を放っても騙されている人は気づかない可能性がある。したがって自分で気づくようなきっかけを作るのが賢明な判断といえるだろう。

(文=渡辺雅史/ライター、協力=京師美佳/防犯アドバイザー)