「寅さん」から「相棒」まで、長寿シリーズの条件 

1994年に始まった『古畑任三郎』(フジテレビ系)などは、まさにそうだろう。第3シーズンまで作られ、ほかにもスペシャル版などが放送された。

ここでも、主人公の魅力は大きい。主演の田村正和が演じる古畑任三郎は警視庁捜査一課の刑事。見た目や振る舞いは紳士的だが、時々負けず嫌いな一面ものぞかせる。事件現場に愛用の自転車でやってくるところなど、ちょっと変わってもいる。独特の雰囲気があり、よく物まねもされた。犯人役でも出演している木村拓哉が『SMAP×SMAP』(フジテレビ系、1996年放送開始)でパロディコント「古畑拓三郎」をやっていたことは有名だろう。

ドラマとしての最大の見どころは、古畑と犯人の攻防である。ミステリーとしては倒叙ものと呼ばれるスタイルで、犯人は最初から明らかになっている。その犯人に対し、古畑が巧みな質問を繰り出し、時には罠を仕掛けながら、犯行を暴いていく。そのスリリングな駆け引きが視聴者を引きつけた。このあたりは、脚本の三谷幸喜の腕が冴え渡る。

また、昨年Season 20に到達し、映画化も決まった『科捜研の女』(テレビ朝日系、1999年放送開始)にも、同じことが言えるだろう。

こちらの主人公は、沢口靖子演じる榊マリコ。刑事ではないが、京都府警科学捜査研究所の研究員だ。『古畑任三郎』が超人的な推理力で事件を解決するとすれば、こちらが頼りにするのは最新の鑑定技術を駆使した科学捜査である。こちらも基本的に1話完結で、毎回異なる事件が起こる。

ただし、『古畑任三郎』とは違い、この『科捜研の女』ではチームで事件解決に当たる。もちろん榊マリコという主人公の魅力もあるが、科学捜査研究所には文書鑑定や映像データなどのプロがいて、全員が協力して解決するところに醍醐味がある。さらに内藤剛志演じる京都府警刑事・土門薫と榊マリコのバディ的な魅力も見逃せない。

2000年代以降を代表する長寿シリーズ『相棒』

そのバディものと言えば、水谷豊主演の『相棒』(テレビ朝日系)が思い浮かぶ。2000年代以降を代表する長寿シリーズと言えば、やはりこの作品だろう。

元々『相棒』が2時間ドラマ枠で始まったことは、ファンであればよく知った事実だろう。2000年から2001年にかけて3作放送され、それが好評だったことから2002年に連続ドラマとなった。冒頭でもふれたように、現在season 19、劇場版は4作目まで制作されている。

『相棒』の長寿シリーズ化の理由も、1つだけではない。まずはやはり、水谷豊演じる主人公・杉下右京の魅力がある。右京は抜群の観察眼と人並外れた推理力で難事件を解決に導く。スコットランドヤードでの研修経験があるなど、そのモデルはシャーロック・ホームズだ。あまり人付き合いがいいとは言えず、皮肉屋なところがあるのもホームズを彷彿とさせる。いずれにしても、右京の鮮やかな謎解きが毎回の見どころだ。

また『相棒』には、「警察」ドラマの側面がある。

ただ事件が起こり、それを解決すれば終わりということではなく、そこにしばしば警察組織の不正や政治的思惑といった問題が絡んでくる。東大卒のキャリアとして警察官になった右京が特命係という“陸の孤島”に追いやられたのも、そうした組織の闇に見て見ぬふりをしなかったからだ。

このような警察ドラマの流れをつくったのは織田裕二主演の『踊る大捜査線』(フジテレビ系、1997年放送開始)からだと言えるが、『相棒』はその流れをくむ作品である。だからこそ、岸部一徳が演じた小野田官房長のような人気キャラクターも生まれた。

そしていうまでもなく、先ほどふれたバディものとしての魅力がある。