ワクチン「打つ・打たない」決める重要なポイント

気になる副反応について、少し詳しく見てみましょう。

体の中に異物が入ってくれば、それに対して何らかの体の反応が起こります。免疫ができることはまさにワクチンの目的です。しかし、望まない反応として「痛み」「腫れ」「発熱」「全身疲労感」「体調不良」「アナフィラキシー」などがあります。このうち最大のリスクはアナフィラキシーです。

起きるとして接種後まもなくで、下手をすれば命に関わる可能性もあります。アナフィラキシーはワクチンに限らず、さまざまなアレルギー物質で起きる症状でそれに対抗できる薬としてエピネフリン(アドレナリン)があり、すぐ使えば特効的に効くので大丈夫です。日本でも接種の場にはそれを準備しておくことになっています。

それ以前に、アナフィラキシーが起きないために、接種前の問診でリスクが高ければ知らされます。また接種後も一定時間は会場にとどまって、アナフィラキシーが起きないか観察も行われます。万が一、重大な副反応が起きて治療が必要になった場合は、国の予防接種健康被害救済制度が適用され、必要な治療のための費用が支払われます。

副反応を許容するかどうか

アナフィラキシーと対極的な軽い副反応が、接種した部分の張りや痛みです。これらは何やら悪いもののように扱われていますが、実は体が正常な免疫反応を起こしている証拠だと考えられています。

ワクチンには人工的に軽い炎症反応を起こさせて免疫反応を高める目的で、アジュバントという物質を加えることがありますが、私たちが受けているワクチンにも、意図して加えているわけではないもののそれに相当するものが存在すると考えられており、免疫を活性化させているのです。

腕に現れる局所の反応だけでなく、頻度はそれより低い発熱や全身倦怠などの重めの全身症状が出ることがあるのもわかっていますが、各症状と免疫獲得の程度がどれだけ関連があるかはまだわかっていません。ただ、それらをワクチン接種回避の理由とすべきか、それとも、抗体を得ることと引き換えに許容するか。どちらを選ぶかは、接種を受ける人の考え方次第です。

自分で決めるのは勇気がいることです。それでも、行政に強制されたりや誰かに言われたりしたからではなく、何か起きた時に「自分の意志だから」と言えるだけの覚悟を持つことが大切です。

副反応に関して、過剰にビクつかないために、1つ知っておいてほしい問題があります。

「打った=かからない」ではない

それは「紛れ込みの有害事象」です。大勢の人がワクチンを接種すると、翌日に亡くなる人が必ず出てきます。高齢者の接種が増えればなおさらです。冷静に考えれば、亡くなる人が出ても当たり前だとわかります。なぜなら、ワクチンとは関係なく日本国内では1日に3800人ほどが亡くなっているからです。

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事故や事件で亡くなる人もいれば、老衰や心筋梗塞、脳梗塞、末期癌などなど、原因は人それぞれです。慢性疾患で闘病中の人で直前まで元気でも急に亡くなることがあります。そういった状況の中でワクチン接種が始まると、ワクチンとは無関係でもたまたま接種の直後に亡くなるケースが出てきます。

そうなると、たとえこの現象があることを知っていたとしても、家族からすれば「接種の次の日におじいちゃんが死んじゃった」と、ワクチンとの関係を疑いたくなるものです。中にはもしかしたら本当に、ワクチン接種が引き金となった死亡例もあるかもし れません。本当にワクチンのせいなのか、それとも違うのか、その答えを出すのはとても難しい問題です。

ただ、もし「ワクチン接種した人が亡くなった」というニュースを耳にしたら、すぐにワクチンが原因と決めつけて怯えるのではなく、冷静に受け止めてほしいと思います。

最後にひとつ言っておくべきことがあります。それは、ワクチンも、特に気道上皮で増えるウイルスに対するワクチンの場合は、インフルエンザワクチンを考えればわかりやすいと思いますが、打ったことが必ずしも「もうかからない」ということを意味しません。

実際ワクチンの2回接種を終えた高齢者施設で流行が起きたアメリカの報告があります。ただ、重症化の阻止には役立っていたとのことですので安心してください。要は、①ワクチンを打っても油断禁物 、②高齢者や免疫力が弱っている人の場合は、効果は低めになりやすいので注意 、③よって、高齢者周辺で高齢者を世話する人たちがワクチンを受けることが大事、ということをよく知っておいてください。なお、これらは、すべてインフルエンザワクチンで経験済みのことです。