若手が上司に「助言」受け入れられない組織の末路

特にこれからは、デジタル化やSDGs等の環境変化に企業が対応し生き残ってゆくためにリーダー層の意識改革をするうえで、益々その重要性が高まってゆきます。

一方で、多くの日本企業では、リバース・メンタリングの意義は感じていても、いざ導入となると踏み切れない現実があります。実際に、大企業に勤める1万人を対象に行ったある調査(2017年)では、リバース・メンタリング制度があると答えた人は全体の16%、つまり8割以上の人にはなじみがない状況を示すデータがあります。

上下の階層や縦割りが強く保守的な風土が強い多くの日本企業において、今後これをどう広げ、変革に繋げてゆけるのかは大きな課題です。

リバース・メンタリングの導入のポイントは、「”斜め”の組み合わせ」をいかに作るかにあります。

若手にとっては、評価者である直接の上司との”縦”の関係を切り離し、評価を気にせず意見を言える ”斜めの関係”の組み合わせをどう作るか、がカギを握ります。

具体的には、若手の相手となる上位者は、指揮命令が及ぶ同一部門ではなく必ず別部門の上位者から選ぶことを必須にする方法です。或いは、「若手2名に対して経営層1名」のように、メンターの若手側の人数を複数にして数的優位を作るという方法もあります。最近では、コロナ禍で広まったオンラインツールとの相性の良さを活かし、遠方や海外メンバーを含めて組み合わせのバリエーションを機動的に変えるなどの工夫も考えられます。

リバース・メンタリングを一過性でなく継続させるには、「テーマ設定」も重要です。双方が自発的に「話したい・聞きたいテーマ」を幅広く設定する。例えば、デジタル商品の使い方など身近な話題から、若者の職業観、生活様式、消費性向まで幅広くテーマを引き出してマッチングさせるなどの工夫をしている例もあります。

このような動きは一部の企業で始まった取り組みですが、多くの「日本的な組織」にとっては、リバース・メンタリング導入をきっかけに、?世代や部門の壁を超えてお互いが学び合う?という新たな風土変革に向けた好機になります。

「先と外」の危機感から始まる自己変革

これまでは、組織的な特性を活かした”日本らしい”変革アプローチを、さまざまな視点から見てきました。

これから「日本的な組織」が変革を進めるうえで、最も大事なことは、受け身ではなく、自らの意思に基づいて変わる”自己変革”ができるかどうかにあります。

持続的成長に向けては、平時から自らが能動的に変わってゆく「自己変革力」が求められます。しかし、自ら変革の必要性に気づき、実行を継続することは言うほどに簡単ではありません。

いつの時代も、変革のきっかけは「危機感」にあります。現状のまま停滞し衰退することへの「危機感」こそが、組織の自己変革力を突き動かすのです。業績低迷や明らかな苦境に陥ったような有事には、誰しもが危機感を持ちますが、平時からつねに危機感を持ち続けることは難しいのです。

では、平時から危機感を持ち、自己変革を起こすには何が必要でしょうか。その答えは、「先と外」にあります。言い換えれば、「先のこと(将来の変化)」、「外のこと(外部の変化)」をいかに「自分事」として捉えられるかにかかっています。将来(時間軸)と外部(市場)の変化に対して、いかにアンテナを張って敏感になれるかがカギを握ります。

タコツボ体質の「断絶」をどう乗り越えるか

「日本的な組織」が、自己変革できるようになるには、平時から「先と外」に危機感を持つこと、すなわち、将来の変化を予測できる洞察力(先を読む力)、そして、外部で起こる変化を客観視できる観察力(外を見る力)が必要です。