「30歳を過ぎた転職」で直面する思いがけない壁

転職して起きる「こんなはずじゃなかった」は、コミュニケーションのズレが原因にあるようです(写真:Greyscale/PIXTA)

「わかってないな~」「そのやり方、誰に教えてもらったんだ?」「前の会社ではよくても、当社では通用しないよ」――。

31歳で転職し、まさかこんなことを言われるなんて、想像したこともなかった。 転職先で結果を残す自信はあった。前職では、生産技術のエンジニアとしてチームリーダーを務めていた。

社長から1年間口説かれ、実力を買われて転職する決心をしたのだ。にもかかわらず、転職後にこんな扱いを受けるとは……。 30歳前後で実績を出しているのに、転職先でうまくいかないといった彼のような例は珍しいことではない。

今回は、なぜ実績があるのに、新しい職場で信頼を失ってしまうのか。その3つの理由と、どうすればこの悩みは解決するのか。拙著『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』から引用しつつ、詳しく解説する。

前職で実績がある人ほど、転職先では要注意!

実のところ前職で実績があればあるほど、転職先で注意が必要なのだ。原因はいろいろあるだろうが、以下3つのクセがなくなっている(もしくは足りなくなっている)ことはとても大きい。

1、確認グセ
2、質問グセ
3、話しグセ
 

まず「1、確認グセ」について解説しよう。

前職で実績があり、慣れたメンバーと長く仕事をしていると、曖昧な話し方をしても話が通じてしまうことが多い。

「これ、もう少し精度をアップして」

「わかりました。もう少しだけ精度を上げます」

こんなやり取りでも「認識のズレ」はない。知った仲だから「少し」「ちょっと」「大幅に」「できる範囲で」といった曖昧な表現でも、それほどズレは生じない。だから、いつの間にか確認グセをなくしてしまう。

当然、新しい職場だと問題が起こる。

「これ、もう少し精度をアップして」と言われ、「わかりました。もう少しだけ精度を上げます」と言って、自分なりにやったとしても、「そうじゃないだろ。俺が少し精度をアップしろと言ったら、これぐらいの精度なんだよ」と指摘されてしまうかもしれない。

そして必ず言われるのが、「キチンと確認してよ」というフレーズである。「確認したつもりですが」と言っても後の祭りだ。言い訳として受け止められるかもしれない。

最後には、「わかってないな~」と言われてしまうのである。

反射的に「大丈夫です」と言っていませんか?

次に「2、質問グセ」についてだ。

やはり前職で実績があると、質問グセがなくなってしまう。

仕事を依頼され、「~このようにやってもらいたいんだけど、大丈夫?」と言われると、「大丈夫です。まずは自分なりにやってみます」と言ってしまう。

これは私にも身に覚えがある。50歳も過ぎて「知りません」「わかりません」「教えてください」とは、なかなか言えない。

新人じゃないし、過去に経験もあるものだから、ついつい反射的に「大丈夫です」「わかります」「できます」と言ってしまうのだ。

しかし、的を外れたやり方で仕事をしてしまうと、「わかってないな~。わからないんだったら、ちゃんと質問してよ」と注意される。決して甘く考えていたわけではない。だが実績があり、それなりに経験が豊かだと、

「この部分は誰に聞いたらいいですか?」「ここは具体的にどうしたらいいでしょう?」といった質問する習慣を忘れてしまうのだ。

最後は「3、話しグセ」についてだ。

「先ほど、メールを送っておきました。よろしくお願いします」

このように上司に伝えたとしよう。しかし、いっこうに返事がない。依頼された資料をメールに添付して送ったが、はたしてどうだっただろうか。メールを送った側としては、その後が気になる。