「休んでもやることがない」人が実は抱える問題

日本人が年休を取らない理由の1つに「休んでもやることがない」というのがありますが、これは実は大きな問題です(写真:Graphs/PIXTA)
働き方が多様化する中で、気がつくと週末もなぜか仕事をしていて、長い間「ちゃんと休んでいない」と思うことはありませんか。そんな方におすすめなのが、年や半年単位ではなく、1週間、1カ月の中で休む時間を設けることです。本稿では、早稲田大学教授・精神科医で産業医としての経験も豊富な西多昌規氏著『休む技術2』より、1週間、1カ月の中での休み方のコツを紹介します。

1カ月をざっくりと分割する

働き方の多様化によって、以前よりも「週末」の感覚がなくなってきた、という方はいないでしょうか。そんな状態が続くと、例えば土日は休みだとわかっていても、「この書類を作っておかないと不安」「いいアイデアを思いついた」「ネットを見ていたら、忘れていた作業を思いだした」など、プライベートに自分から仕事を呼び込んでしまいかねません。

それが習慣化してしまえば、オフの日にリラックスして身体と心を休める暇もなく、なんだかいつも忙しいのに毎日仕事が終わらない、という悪夢のような日常から逃れられません。

この先の見えない世の中では、半年、1年のリズムよりも、1週間、1カ月のリズムに気をつけて積み上げていくのが現実的でしょう。それでも1カ月は、あっという間に過ぎていきます。次の月の行事や予定、忙しさをイメージする時間を、前の月の終盤には持ち、休みのタイミングもプランニングしましょう。

1カ月を上旬・中旬・下旬に分けて、上旬にはこの作業を済ませておきたい、中旬には緊張するイベントがあるので無理しない、下旬は月締めの作業があるので仕事モードで、など、ざっくりしたイメージをつくることも効果があります。

前半・後半という分け方でもいいですし、週末ごとに分けるほうが合っていれば、それがいいでしょう。月末は忙しいから、なるべく月の前半で仕事を進めておく、といった、大まかなイメージも悪くありません。

週末が休みの会社に勤めているなら、せめて土日は意識して平日と違うルーティーンをつくるなどして、1週間のなかにメリハリを取り入れることからはじめましょう。

「なかなか休めない」「休暇を申請しづらい」という悩みは、働き方が多様化しても乗り越えづらい壁かもしれません。勤務形態によって、有休を堂々と申請しづらい雰囲気があることも否めないと思いますが、こんな時代だからこそ、オンとオフのリズムを自分でコントロールするためにも、「有給休暇」が重要です。

フレックスやリモート勤務によって、時間の使い方が個人に委ねられているケースほど、真面目な人は仕事を続けてしまいがちです。「有休」を取得するのは自分次第ではありますが、いったん取ってしまえば、仕事とプライベートをきっちり分けてくれる公式な「区切り」になります。

年休をとりづらい4つの理由

少し古いデータですが、2011年にまとめられた「年次有給休暇の取得に関する調査」(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)では、年休を取りづらい理由として、大きく4つの理由が挙げられています。

「人事評価に影響する」「業務量が多い・代わりがいない」「何かの用事のためにとっておく」「休んでもすることがない」 

このようなメンタリティは、働き方が多様化するなか、どのように変化しているでしょうか。例えば、「人事評価に影響する」という理由は、近年、リモートワーカーにとってはハードルが下がって感じられるのではないでしょうか。また、フレックスやリモート、裁量労働制なども増え、出勤していること自体が評価されるケースは少なくなっているでしょう。
「業務量が多い・代わりがいない」という理由は、自分自身より、組織の問題です。従業員は体調が悪ければ、回復に努める義務があり、たとえ出勤を伴わないリモート主体の勤務形態だったとしても、会社には、従業員の健康を維持し、安全に働く場を提供する義務があるのです。