本番で実力以上出せる人、不安でダメな人決定差

ちょっとした心理テクニックでうまくいく(写真:Claudia/PIXTA)
心臓がドキドキする。筋肉がこわばったり、汗をかいたりする。めまいがする……。人前で発表したり試験を受けたりするときに、こんな症状になるのは、不安だから。不安と聞くと、嫌なものだと思いがちだが、身体が上記の反応をすることで「問題の存在に気づく」という役に立つ一面がある。
 
もっとも、不安を解消するには時間がかかる。また「不安ではない」と自分に言い聞かせるのも逆効果。アメリカ教育界の第一人者である『勉強脳』の著者、ダニエル・T・ウィリンガム氏は、同書で不安を管理する画期的な方法を披露している。
 

試験中に不安になるのは正常な反応

試験中に不安を感じて集中力が保てなくなると、正解がなかなか思い出せなくなって、また不安が高まってしまう……。こうした負のサイクルを打ち破るか、そもそもそのサイクルに入らないようにする方法を考えていきましょう。

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多少の不安は正常であり、むしろ役に立ちます。たとえば、何が脅威なのかを理解する前に、心臓のドキドキのような身体の反応に気づくことがあると思います。不安によって問題の存在に気づくからこそ、その問題についてもっと知ろうとすることができます。

不安が「役に立つ」ものではなく「有害」になるのは、その環境に脅威がないかチェックすることに時間と精神的エネルギーを習慣的に費やすようになった場合です。

クモ恐怖症の人は、部屋を隈なく見回して危険がないことを確認し、部屋に入ってからも目を走らせ続けます。注意力が削がれて、会話をしたり考えたりするのが難しくなってきます。

不安を取り除くのに時間がかかるので、たいていの心理学者はそれを目標にすべきではないと言うでしょう。試験を受けるときに不安を感じるのであれば、重要なのは、試験に受かるようにすることです。

目標にすべきは、不安を管理することです。間違っても「不安を感じなくなるまでそのタスクに取り組まない」とは思わないでください。不安を感じながらも、必要なことに対処することを目指しましょう。

少しでもやりたいことができれば、OK

不安を管理する作業にはフィードバックが重要です。どの対策がどれくらい効果的かは人それぞれなので、ある対策を試したとき、それが自分に合っているかどうかを把握できないといけません。

不安を打ち消すのではなく、管理するという目標に沿って、たとえ不安になっても、自分のやりたいことをやるのが成功だと考えるようにしましょう。ここで次のように思った人もいるかもしれません。

「なんだ。『恐れずに、とにかくやれ』ってことか」

まあ、そういうことです。不安を感じるのはイヤですが、害はありません。心臓がドキドキして、手のひらに汗がにじんでいるとき――「ここには問題があるぞ!」と身体がはっきりと訴えているときに、そういうふうに考えるのは難しいかもしれません。しかし、冷静に考えてみれば実際はなんの問題もなく、自分が傷つくことはないとわかります。

私の教えていた学生の話です。彼女は普段のやりとりでは問題がないのですが、授業で発言するときにはきまって首から胸まで赤くなり、しゃべり方がたどたどしかったので、人前で話すのがとても不安でした。

彼女は不安とうまくつき合っていくために、次のような計画を立てて、段階的に実行していきました。

・授業では週に1回、短くコメントする
・授業では毎回、短くコメントする
・週1回、もっと複雑な考え(たとえば、1分以上かかるような)を説明する
・授業ではまとまった発表をする