AIによる創作とわかると評価が下がることの意味

以上のエピソードも考慮し、生成AI登場以降の文化芸術や創作活動の特徴として、さらに以下の要素を付け加えます。

③創作能力を持っている者は、その能力と生成AIを組み合わせることで、一般の生成AIユーザーより質が高いコンテンツを、今まで以上のスピードで創作できる

④生成AIの登場により、人間が創作物を評価する視点・価値観が変わりつつあり、表面上のクオリティだけではなく、「AIによって生成されたかどうか」が、作品の評価に影響を与える可能性がある

本記事では、これらの4つを念頭に、生成AIが文化芸術・創作に与える影響について考察します。

「AIは創造性を持つか?」をめぐる長い議論

2022年以降に急速に発展した生成AIにより、「AIと創作」をテーマに、特に「AIは創造性を持つか?」という議論が活発になりました。

今やAIを使って創作を行うことは珍しくなくなり、AIが自ら創造性を持って創作を行っているようにも見えます。しかも、そうして生み出されたものが、人間の創作に匹敵するような事態となっており、これは歴史上初めてのことです。

……というのは噓です。実はこれらのテーマは、2022年以前から研究者の間では盛んに議論されてきました。

AIに限らず、コンピュータと創造性というテーマは、「Computational Creativity(計算的創造性)」という名で論文が複数出ている研究分野でもあります。機械学習・ディープラーニングをベースにしたAIに限定しても、実は2018年には画像の分野、2020年には文章の分野で、生成されるコンテンツの質は高い水準に達していました。

この時点では人間のトッププロが生み出す作品の域にまでは達していなかったかもしれませんが、機械学習の研究者や、機械学習の知見を取り入れようとした先鋭的なアーティストたちにより、さまざまな試み・考察が行われていました。

たとえば、2016年には日本で、AIが執筆した『コンピュータが小説を書く日』というタイトルの小説が、日経新聞が主催する星新一賞の1次選考を通過したことで話題になりました。このAIによる小説執筆支援や自動化の試みは、2012年から公立はこだて未来大学の松原仁教授を中心とした「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」で行われていたものです。

2018年には、フランスのアーティスト集団「Obvious」が、GANという画像生成AIを使った作品を、「AIが描いた画期的な作品」として、有名なオークションに出品し、それが5000万円近くで落札されるという出来事も起きています。

特にこれは、ディープラーニングベースのAIで生み出された文化芸術コンテンツについて、さらにはAIの創造性について、どう考えるべきかが本格的に意識され始めるきっかけとなりました。

「組み合わせ」「探索」「革新」という3つの創造性

「創造性」というものをどうとらえるかに関しては、特にAIを絡めて論じる場合、さまざまな意見があります。「AIが創造性を持つわけがない」という意見もありますし、「AIも創造性を持つ」という意見もあります。研究者でも意見が分かれるところです。

とはいえ、あっちこっち語っていてはキリがありませんので、創造性についての比較的有名な定義・分類を挙げます。

研究やビジネスの分野で頻繁に参照されるものとして、先ほど挙げた「Computational Creativity」という研究分野で、マーガレット・ボーデンという研究者が提唱したものがあります。

ボーデンは創造性を以下の3つに分類しています。

①組み合わせ的創造性(Combinational Creativity)
②探索的創造性(Exploratory Creativity)
③革新的創造性(Transformational Creativity)